2 謎の騎士、拾いました②
(うーん、なんというか……オリエンタルな雰囲気?)
謎に転がっていた美形の男を自宅のベッドまで運んで寝かせる。
まじまじと彼の様子を拝見すれば、東洋の美! って感じだ。
なんだろう、髪色とかで判断した訳じゃないからイメージ的なあれだけど。
うーん、神秘的? な雰囲気。
藍、というのか。
青と紫が混ざったような髪は、よく手入れされているようで綺麗。うらやまけしからん。
サイドは肩にかからないくらいだけど、後ろ髪だけすっごい長い。
じゃまなんだろうか、後ろだけ結んでる。
顔はこれまたうらやまけしからん。
眠っていても整っているのがわかる美形で、理由はないけど……腹立つ。すまん。
まだ開かれてない瞳はどんな色なのかな、なんて気になるくらいには綺麗。
左目元の泣きぼくろが妙に色気あるな……、やっぱ腹立つ。
いかんいかん、これじゃ嫉妬だ。
格好はといえば、どこかの良いところの騎士って感じだ。
帯剣してるし、一般兵にしては色使いも綺麗で生地が上質な気がする。
サーコートを羽織ってるんだけど……あれ。
甲冑……プレートアーマー的なのは着てないな。
有事じゃないから?
それとも、長い旅路で重くて着てらんないのか。
……あ、魔法使いなら魔法で守るのか。そら薄着にもなるか。
とりあえず着てるものには触れずにベッドにポイしたけど、まぁ剣士なら剣触られたくないし良いよね?
シーツはいつでも洗えるし。
服にシワがーとか、起きても文句、言わないでよ?
「あ、そうだ」
外傷はなさそうだし、なんでぶっ倒れてたのかは知らないけど。
お腹が空いてないなんてことは無いだろうし、養生も兼ねてなんか料理用意しておこう。
ていうか、大魔女の責務に魔法使いの保護があるとはいえ、一人暮らしの女の敷地に知らない男を楽々通す結界なんてどうなの。
まぁ、魔物にしか反応しないらしいけども。
空腹で倒れるにしても、場所選んでよね!
ハニティと前世の記憶の合わせ技で、家庭菜園? 家庭植物園? しているハーブや薬草といった効能はおおよそ分かる。
この世界は割と日本があった世界と共通することも多くて、同じ神様が作ったんじゃないか説がわたしの中で浮上している。
それか、日本人が作ったゲームや漫画の世界に転生した、とでも言われた方が納得がいく。
薬草の名称は同じものもあれば、ちょいちょいこっちにしかないモノもあったりで面白い。
両方の記憶があるって、実はわるいことではないのでは?
「うーん、空腹。衰弱……滋養をつける系?」
正直、医療の心得はそんなにないし、料理が得意かと問われれば……ザ・ふつう。
前世では余暇は趣味の時間に充てていたし、ハニティに至っては別に料理するために薬草を育てていた訳ではない。
野菜も育てているし、もちろん食べるけど料理目的で育てている訳ではない。
でも、まぁ……嬉しいやら悲しいやら。
どっちにしても今も昔も、一人暮らしだったから、……多少できる。
趣味の時間で、ハーブ検定試験や薬膳コーディネーターの本も読んだことはあるし。
資格をもっているとは言っていない。
んで、地の魔女として自分で効能を確かめるのが、……実験するのが実は楽しみだったりする。
…………いや?
決して人様の体で実験しようなんて思ってないけど?
ただ、自分があんまり怪我や病気にならないもんだから、効果が立証される機会が少ないのよね。
せいぜい、「やだ、冷え症改善したかもっ」ってくらい。
「……お、あったあった」
採りたてもいいんだけど、今はとにかく消化の良さも考えたものが良い。
消化の良さと言ったら、わたしは真っ先におかゆが思い浮かぶ。
いや、浮かぶようになった?
諸事情もあり、今回は玄米でおかゆにしよう。
それに合わせるものを保存食の置いてある場所で物色していた。
「くーこーのーみー」
効果音がつきそうな言い方をしてみたけど、怒られそうなのでやめておく。
クコ。
別名ゴジベリー。ウルフベリー……あとなんだっけ。
庭ってよりかは、周辺の森の中にたまたま自生してて、それをちょっと拝借して近くに植え替えた。
低木から採れる赤い実を乾燥させて、保存。
湯に戻せば色んな料理に使えるんだけど、なんせ我、元はレパートリーが少ない。
前世の記憶がもどって、今はやっと色々思いつける。
ナッツとはちみつ漬けにしたおやつと、砂糖と一緒にお酒に漬けたりはしてるけど。
前世の記憶で、クコの実を乗せたおかゆ食べたことある気がするのよね。
「──っと、こっちには便利なあれがないんだよな~」
鶏の出汁を手軽につくれる、あれ。
「しゃーなしか、お肉一緒に入れよう」
魔法使いの集落で買った、ニワトリ……ではなさそうだけど、なんかの鳥系の肉。
ちゃんと食用だし、良いでしょう。
「いつ目覚ますか分かんないし、生米から作っちゃうとデロデロになっちゃうから……クコの実もどして、鍋で米だけ先に炊いておくか」
彼が目を覚ます前に、キッチンで諸々の下準備を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます