1 謎の騎士、拾いました①

 魔物。まもの。MAMONO。


 前世のゲームでの記憶とそう違いはなく、ゴブリンだのバカでかいイノシシみたいなのだの。

 ふつうの動物と明らかに違う見た目、人類への敵視。

 たまーに魔力をもった、大昔から敵対する存在。


 けど最近は、魔力がなくても武器さえあれば倒せるほど弱体化していて、人間はどちらかと言うと魔法使いの方を怖がる。

 まぁ、自分にないものを持っている人って、羨ましかったりするけど。

 それが行き過ぎなんだよねー、この世界の人。

 嫉妬するのはいいけど、そんな街から追いやるまで憎いんですかねぇ。

 最近そうなったってよりは、そういう時代があっての今って感じで……最新事情は分からない。

 今ってどうなんだろうね。わたしが特別ひとり好きなのもあって、本当に分からない。

 出会い頭にパンチされるのかしら。


「もしもーし、聞こえますかー?」


 マモノですかー? なんて、さすがに聞かなくても分かった。

 うん、人間だね!


 自分と結界以外の魔力を感じたから来てみれば、人間が落ちてた。

 いや、──誰。

 てか、美形の男とかどうやったら落ちるんだ。

 空を仰ぎ見ても、ただただ青い。

 いい天気だ。


「あなたも追いやられたんですかー?」


 魔力を感じたということは、彼は魔法使いだ。

 街の人に居場所を追われて、わたしや結界の魔力を感じ取ってここに着いたのかもしれない。

 大魔女の基本、居場所のない魔法使いの保護。


「はぁめんど……っとっと。じゃなかった、……運んでくれる?」


 くるりと反転してそう問えば、薔薇の姿をもったかわいい精霊がにっこりほほ笑む。

 大魔女であれば魔力だけで精霊を召喚できるんだけど、わたしはまだその力を受け継いでない。

 ので、庭に生えていた薔薇を媒介に自分の魔力を分け与えて手伝ってもらっていた。


 分け与えた魔力がなくなると、消えちゃうんだけどね。

 あれだ、前世風に言うと擬人化か?

 ともかく、媒介となった薔薇はふだんから魔力の通った土で成長してるので、わたしがイメージと共に魔力を与えると精霊となって出てきて助けてくれる。

 良い子。


『♪』


 大魔女の精霊とちがって、言葉は話せないけれど、なんか楽しんで人間を運んでいるのだけは分かる。

 しゅるしゅると伸びた枝? にはトゲがない。

 やだ、うちの子優しい。

 それらが、謎の美形男子をぐるぐる巻きにした。


「手巻き寿司、いっちょ~」


 悪ノリしたけど、他に誰も居ないから……いいよね?


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