星花
昔から、寒くて田舎で、良い事なんて無いと思っていた故郷に帰ってきた。
GW中はバイトもなくて、授業もないので帰省してみた。
帰ると震えるほど寒くて、本当にGWなのかすら怪しく感じてしまう。
「あ、久しぶり!」
最寄り駅まで迎えに来てくれたのか、幼馴染の星花(せいか)が声をかけてくれた。
「正確な時間言わないから、私ずっと待ってたんだよ?」
ムッとした顔で怒られてしまう。いつ頃から待っていたのかを聞くと
「一本前の電車は見送ったよ。」
都会の感覚で言えば10分ちょいだろうが、北海道のド田舎の電車一本は一時間以上だ。
特別暖かい恰好をしているわけでもないので、この寒さにも慣れているのだろう。
むしろ自分の厚着の方が変に見えてるようで
「なんでそんな分厚い恰好してるの?今日そんなに寒くないでしょ?」
いやいや、まだ10度以下ですから。寒いですよ。
改めて上京してよかったと思った。
「それより早く行こう。」
家まで歩いて30分程度だけれど。今となっては少し遠く感じてしまう。
歩いていると、桜が咲いているのを見つけた。
「ねぇ、ちょっとだけお花見していかない?」
そういう彼女のお誘いに、もちろんと答え、付いていく。
花弁はしっかり広がっていて・・・。向こうで、星のような花を見た気がした。
白くて、花弁がとがっていて、星形に見える花・・・。
「どうしたの?」
桜を見ずに考え事をしていると、気にかけてくれた。
何でもない。と返したのだが、一人でぶつぶつと何かをつぶやいている。
星花こそどうしたのだろうか?
ちらちらとこちらを見て、そのあと回りを見渡してから、何か気合を入れて
「えいっ」
と声に合わせて抱き着いてきた。
なんだ⁉と思っていると。
「その、寒いなら、これが良いかなって。」
正直、全身のぼせそうだったけれど、星花の背中に手を伸ばして、絡ませる。
ありがとう。と伝えたら
「私は別に・・・それよりさ、ずっと悩んでたんだけど・・・やっぱり君と・・・。」
GWが明け、一人暮らしだった部屋は、二人暮らしの部屋になった。
月を君に 埴輪モナカ @macaron0925
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