立夏 


 新学期が始まる。

 入学式以来ずっと気になっていた彼女、立夏(りっか)と同じクラスになれることを祈る。

 1年の時は同じクラスで、席も隣になる事が多かったため、かなり仲良くなれている気がする。

 ので、今年も、どうか今年も同じクラスで、あわよくば夏祭り誘ったり一緒にショッピングモールでウィンドウショッピングしたりしたい・・・!

 そんな思いで登校してると、あっという間に着いてしまう。

 ひとまず自分の名前を探すと、あった。

 問題は、立夏の名前が同じクラスにあるかどうかだ。

 探していると、見つけた。と、同時に後ろから何かが飛びついてきた。

「おはよ、今年もよろしくね。」

 元気がないわけではなく、照れているように感じたその声に、若干、いや、かなりのうれしさを覚えた。

 でもなんで抱き着いてきたんだ。

「去年見てて分かったんだけど、君、結構モテるんだね。」

 正直、そんな自覚はないけれど、むしろ立夏の方がモテるのではないだろうか。

「だから、その、マーキング?」

 恥ずかしがりながらよくわかってない言葉を使うんじゃない。

 特別嫌というわけでもないので、このまま下駄箱に向かう。

 周りからの視線はなかなかのものだけれど、気にしても手遅れだ。

「ねぇ、」

 不意に声をかけてきた。

「掴んでるの疲れるから、持って。」

 ・・・若干イラっとしたので、仕返しついでにお姫様抱っこにしてあげた。

「ちょ、まって、なんで⁉」

 さすがに恥ずかしいらしく、顔を赤くしながら若干暴れている。

 暴れると落ちる。と伝えると、おとなしくなったけれど目が怒っている。怒りながら照れているけど。

「し、仕返しにしては少しやりすぎじゃない・・・?」

 とはいうけれど、階段を上って、特別教室ばかりの棟に来たので、二人以外の他人は居ない。

「はっ!まさか私と二人っきりになりたかったがために⁉」

 半分正解。とは言わないでおいて、私も恥ずかしかったからと伝える。

「そ、そりゃ、そうか。まぁ、私も恥ずかしくなかったわけじゃないし・・・。」

 もごもご言いつつ覚悟が決まったのか、はっきりとした声で伝えてくる。

「せっかく二人きりで、たぶん今後二人きりになれないだろうから、先に伝えておくとね・・・。」

「私は君と・・・」

 

 その日の下校時、二人きりで歩く姿を、誰かが見届けたのだとか。

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