白露 

 彼女は月を眺めていた。

 月のように白く丸い団子をほおばりながら、頬を大福のように膨らませて。

「おいひぃ~。」

 幼馴染の彼女とは、毎年月を見上げている。

 月のきれいなの日は、いつも決まって彼女と月を見る。

「ほら、君も食べなよ。」

 そう言って、私の口に団子を無理やり詰め込む。

「ふふっ、もごもご言って可愛い。」

「梨もあるよ、団子と梨を一緒に食べたら、どんな味になるのかな?やってみてよ!」

 と言いながら、私の口に一口サイズに切った梨を詰め込む。そろそろきついっす。

「どぉ?おいしい?て、まだ口の中いっぱいでしゃべれないか~。」

 若干腹が立ったので、同じように団子と梨を白露の口に詰め込む。

「むぐー⁉むぐぐー!」

 何言ってるかわからないけれど、抵抗むなしく、口の中には団子と梨が収納された。

「乙女の口にいきなり突っ込むなんて人のすることじゃないよ!」

 その言葉のチョイスは果たしてわざとなのか、それとも天然なのか。

「でも思ったよりおいしかったね、梨団子。」

 切り替えが早い。すでに梨と団子を一つとしてまとめてるよ。

「はっ!梨団子として売ったら売れるのでは⁉」

 既にどっかで売ってそう。なんて言うと、

「そりゃそっかぁ、おいしいもんなぁ。」

 と、若干しょんぼりするけれど、なぜか足元を見てにやけている。

 どうしたのだろう。と疑問に思いながら見ていると、視線に気づいて、

「ん?今年も二人だなぁって思って。」

 毎年のことだから、今更なんだというのだろうか。

「去年は雨降ってて見えなかったけどさ、今年はきれいな月が見えたじゃん。だから、」

 少し間を置くように、白露は庭を歩く。

 月光に照らされてから、彼女はこちらを向き、口を開いた

「来年も、月がきれいだといいね。」

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