第29話 言葉で出来ている世界の恐ろしさ

 夢という言葉。それはきっと誰もが憧れる言葉に違いない。そして、誰もがそれを持つことで幸せになれると思い込んでいる事だろう。


 私は、人間の世界は間違いなく言葉で出来ていると思っている。言葉を巧みに使う事で人を動かし世界が出来上がる。だからこそ、言葉はとても大事で正しく使わないと世界は乱れる。


 言葉の最大の特徴は何と言っても人を騙す力があることだ。その代表格が神であり、今日の資本主義に於けるお金である。しかし、神もお金も作っただけでは何の力も持たない。


 そこに力を与えるのが言葉である。そして、その力をもたせるのが「嘘」と言えるだろう。神が人間を救えるという嘘を、様々な言葉を巧みに使う事で、それが現実であるかのように人を思い込ませることで信仰が生まれる。


 お金についても同じようなことが言える。今は殆どの人が知らないが、昔はお金に力は全くない。金貨や銀貨だって似たようなものだ。日本に於いては、大名の力は米で測っていたくらいである。


 それを時間を掛けて、お金という紙切れを沢山流通させることに成功したのだが、そこにも巧みな言葉がふんだんに使われた事だろう。特に、日本では、明治政府という国家が出来ることで、紙幣に権威を与えられたが、その具体的な騙しの手口は知らない。


 そして、そのお金の必要性を無限に広げるために使われたのが「夢」だと思う。前回、夢の話をして気づいた。


 学校で勉強させ人々に「夢」を授ける・・・・と言えば素晴らしいように見えるが、実際は誰かの「夢」移植されるだけの話である。それは、学ぶという行為が真似ることであるからそうなる。


 そして、大抵の人間は授けられた「夢」を自分の「夢」だと勘違いする。更に、みんなが通う学校では、みんなに同じ「夢」を授けることが出来る。


 そう言えば、昔は、夢のマイカー、夢のマイホームという言葉が躍っていたのを思い出した。マスコミが挙って煽っていた。今冷静に見ると北朝鮮みたいで気持ち悪い気がする。


 そうやって、国民は国家から「夢」を移植されることで、その「夢」に踊らされてきたのである。躍る阿呆に見る阿呆・・・・という言葉があるが、国民全員が躍っていたのは間違いない。


 そして、バブル崩壊で「夢」が破れてしまったのだろう。それは、移植された他人のというより国家の「夢」だったからに他ならない。それでも夢見る猿は「夢」を求めて生きるのである。


 では、本当の夢とは何なのか?それは「幸せ」である。本当に人間が求めているのは「夢」ではなく「幸せ」なのだ。これは全人類共通ではないだろうか?


 しかし、多くの人間には「幸せ」が何なのかが分からない。だから、例えば「夢」といった言葉で騙されるのである。私が度々「幸せ」について書いたのもそれを止める為だった気がする。


 そして、前回の記事でそのことを改めて書いた。書いた後に、やはり、言葉は恐ろしいとも思ったのである。もちろん、言葉に罪はない。言葉が存在するだけでは何も起こらないから。


 しかし、それに意味を与えることで人が動き出す。そして、その意味を操ることで人が操られることになる。だからこそ、私たちは言葉に対して慎重であれねばならないと思う。


 特に「夢」と言った「幸せ」に通じるような言葉は要警戒となる。だから、そういう言葉を耳した時、その言葉の真偽を確かめる必要がある。決して、自分の思い込みで、その言葉を鵜呑みにしてはいけない。


 例えば、「幸せ」に通じる「夢」であるならば、自分が苦しくなったり辛くなっったりすることは考えにくいのではないだろうか?という風に・・・・そういう言葉の真偽を確かめているのが「心」の役割であり、感情によって私たちはそれを知ることが出来るのではないでしょうか。


 言葉は「嘘」がつけるけど、「心」は嘘が付けないから。


 私は、人間に心が出来たから言葉が生まれたと思っているのですが、逆に、言葉が出来たことで、その言葉の真偽を図るために心が出来たという事もあるのかもしれません。


 言葉の嘘を見抜くのは難しいです。特に、自分に嘘がない人は、嘘を付かない人は。仮に嘘つきであっても、嘘にはレベルがあるために騙されることになる。


 いや、嘘を付く時点で、その人は騙されているのかもしれません。だから、大事なのは、その嘘を見抜けるかどうか。個人的には嘘のない世界が大事だと思うのですが・・・・


 まあ、資本主義が消えれば、大半の嘘は消えると思っています。


 最後に、「幸せ」になれるかどうかは、自分に嘘があるかないかで決まる。ということを覚えておいてください。




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