第25話 脱資本主義で少子化が止まる

 少子化の最大の原因は出産適齢期の女性が減っている事らしい。だから、この少子化を止めることはしばらくは出来ない事になる。もちろん、それに拍車を掛けているのが女性の社会進出であることは言うまでもない。


 かつては、結婚を永久就職などと言って持て囃したものだが、今や共働きでなければ生活できない人も増えているのではないかと思う。それは、資本主義が人間を豊かにするものではないという証明になるのではないだろうか。


 だから一刻も早く、資本主義に見切りをつけるべきだと思う。


 実は、人口減少問題の最大の要因は少子化ではなく多死化にある。そして、その多死化による市場収縮が景気後退の要因でもある。


 昨年が140万人強の死亡者に対して出生数が80万人強。一年間で60万人減っているという事になる。それは鹿児島市や船橋市とほぼ同じ人口になる。


 それくらいの市が一年で消えれば大きなニュースになるが、全国で60万人の減少と報じられてもそこまで大きなニュースにはならない。ある意味、全ては印象で決まるのだろう。


 しかし、80万人の新生児は当面、殆ど消費はしない。従って、消費市場は死者数140万人分が一気に減る事になってしまう。仮に全員が車を持っていたとして買おうとしていたら、140万台の車が売れないという悲惨な状況になる。


 もしそうなれば、2020年の自動車販売数は495万台だから、自動車業界は大打撃を受ける。潰れる会社や大胆なリストラをする会社が出るだろう。他にも電化製品に食料品など様々な消費が減るだろう。しかも、それは単年の問題ではなく毎年続くし、死者数は年々増加していくのである。


 それに拍車を掛けるのが退職者数である。定年延長が進み退職年齢が先送りされてはいるが、団塊世代の大量退職は続いている。恐らく、年間100万人程度が退職しているのではないだろうか?


 仕事を辞めれば収入は減り支出も減る。これも経済にとっては大きな痛手となるだろう。こういうことが毎年続くわけで、それは、真綿で首を絞められるというレベルではないだろう。


 こうした消費減少が経済に与える影響は致命的である。この減少に企業が何時まで耐えられるのか?特に市場規模が大きい大企業は大きな影響を受けることになる。


 そういう中で、大企業が業績を伸ばすことを真に受けてはいけない。その不自然さを疑問に思い注意を払うべきである。そこには粉飾があるかもしれないし、不正や誤魔化しがあると思われる。


 その最たるものが、単価アップだと言える。自動車に洗濯機にテレビなど耐久消費財は新製品という名目で、販売台数減少をカバーできる単価アップが図られている事だろう。


 大企業が自分たちのステイタスを守るために従業員を確保し食わしていくために、消費者にその負担を背負わせているという事になる。何事も負担を強いられるのは常に弱い大衆である。


 そうやって経済は平穏を保っているが、その負担を背負わされている下々は生活に困窮していくのである。その結果、自分が働いて生きていくだけで精一杯であり、結婚も子育ても出来ないのである。


 これが少子化を加速させる原動力となる。だからと言って、大企業に勤める人が安泰かと言えば、そんなことはない。彼らとて仕事をしなければお金が得られないのは同じであり、そのプレッシャーは収入に比例して大きくなる。


 そういう状況で結婚することも子どもをたくさん育てることも出来なくなる。結局貧しかろうが豊かであろうが少子化になるのである。資本主義と言うのはどう転んでも豊かになれないし、少子化しかもたらさないのである。


 大事なのはそういう結論ではないだろうか?


 たまたま少子化であれば、何かの策を講じてそれを回避することは可能だと思う。しかし、結果として少子化になるのであれば、それは回避できないという事を意味しているのである。


 そして、恐ろしいのは、本当の問題として脅威となる多死社会が全く意識されていないという事にある。資本主義経済は市場規模が拡大しないと回らない性質があり、これから先、急激に市場規模が収縮していく中では存続できないという事態が待ち構えているということにある。


 私たちは資本主義の誕生とその発展しか知らない。資本主義が最終的にどういう風に消えていくのか知らないのである。大抵の人は、資本主義が未来永劫続くと思い込んでいる。そのノー天気な思い込みが一番恐ろしいのである。


 何れにしても、少子化を引き起こす資本主義をいち早く抜け出すことで、少なくとも少子化を止めることは出来る。そして、自然に崩壊していく資本主義から被る被害を免れることも出来るという大きなメリットがある。


 私の予測では、日本人という民族が滅びるまで後100年は掛からない。突飛な考えに思えるかもしれないが、多死社会と人口減少を数字で積み上げていけば誰もが分かる結果となると思う。


 増え続ける死者と減り続ける子。このダブルパンチは致命的なのである。お金を取るのか命を取るのか?今私たちはこの選択に迫られているのです。呑気に仕事をしている場合でもないしゲームに現を抜かしている場合でもないのです。



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