第12話 楽しい人生を手に入れる方法

 楽しい人生をどうすれば手に入れられるかを知っている人は少ない。それが分からないから手っ取り早くお金を手に入れて楽しそうな人生を目指すのですが、資本主義に於ける過酷な競争社会では、お金を簡単に手に入れることは出来ません。


 他人を騙して手に入れることは出来ますが、その方法ではリスクが大き過ぎて間尺に合わないでしょう。既に書いたとは思いますが、お金を手に入れるには持っている他人から奪うしか方法はありません。


 これが資本主義の恐ろしいところです。奪い取る方法としては窃盗と詐欺しかありません。共に犯罪です。しかし、原価100円のものを120円で売れば、それは詐欺ではない。


 千円で売れば暴利と言われるでしょうし、100万円で売れば霊感商法と言って逮捕されるのです。しかし、仮に霊感商法であっても、買った人が満足すれば逮捕は免れるのではないでしょうか。


 流石に、100円のモノを100万円で売ることは普通の人であれば良心が咎めるでしょう。そこで、今度は付加価値を付けていくのです。そして、原価を上げることで高い商品を買わせることが出来る。


 100円を120円で売っても20円しか儲からないけど、100万円を120万円で売れば20万円も儲かるわけです。こんなことの為に費やす人生が楽しいと思われますか。


 ビジネスや商売を面白いという特異体質の人も居ますが、自分が儲かるという事は相手が損をするという事なのです。それを言葉巧みに誤魔化すことでビジネスが成り立つ。


 最近では共に儲かる事を考えようとする向きもありますが、誰かが儲かれば誰かが損をするのは間違いないわけで、何時かは損をさせられる時が来るのです。


 従って、楽しいと思えるのは自分が儲かる時であり、損をしたらその思いは消え去る訳です。どんな理屈をこねようとこの原理が資本主義の怖いところだと思います。


 そして、前にもは書いたようにお金で何でも済ませていると自分の能力はお金が増えるのと反対に低下していく。最後は自分の力では何も出来ない人間へとなるのです。


 楽しい人生とは自分で何でも出来る人生なのです。それこそが人間本来の力であり、その力を思う存分発揮できていれば楽しいわけです。そこに成功とか失敗とかいう言葉はない。


 何故なら、成功とか失敗という言葉は資本主義の世界でのみ存在する言葉だから。


 人間世界は言葉で出来ています。そして、世界が変わると言葉も変わる。脱資本主義というお金を排除した世界では、お金にまつわる言葉が要らなくなります。


 ざっと、思いつくだけで、利益とか成功と失敗とか勝ち負けとか優劣とか、今我々人間を差別する為の言葉は意味を失うのです。だって、差別の基盤となるお金が無いのですから、そういう言葉も無くなるのです。


 もちろん、騙すとか騙される、盗む、と言った、今日の多くの犯罪も消え失せるでしょう。もし、それが無くなれば警察は要らなくなるし、国家すら存在価値がなくなるのです。


 警察や国家という言葉も、資本主義だから意味を持つ言葉であり、それが終われば言葉に意味はなくなり使われなくなるでしょう。


 人間世界は言葉で作られているのです。次回は、そこのところをもう少し掘り下げていこうと思います。


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