あとがき
本作『桜のはなびらにくちづけを』、最後まで読んでくださってありがとうございます。まずは具体的な意見をくださったSプロデューサー、応援してくれたTさん、そしてなにより最後までお付き合いいただいた読者の皆様に、深く感謝したいと思います。
作品を作ろうと思った経緯は至極単純な動機で、絵が描けなかったからです。そんな僕の個人的な趣味である百合とSFをどうにかオタクとして表現できないものかと思い、このようにして筆を執った次第です。
SFはジャンルの特性上かなりの割合で人が死ぬんですが、本作においては絶対に誰も殺さないことを念頭において物語を構成しました。しかし、あまりにもハートフルではSFとして成り立たないこともあり、書籍からの引用や管理社会の危険性など、諸要素を盛り込んでプロットを構成したつもりです。それは楽しくもあり、また大変な作業でもありました。この作品では大きなテーマとして倫理の問題を扱っています。完璧に管理された社会における倫理とはなんなのか?それはこの作品のフレームにあたる非常に厄介な問題です。日向先生はこの問題について研究していました。この作品ではリコがいずれイチカやサクラと一緒に答えを出していかなくてはならない問題となります。
本作の初期タイトルは『漂白社会』でしたが、それでは殺伐としすぎだろうということで、SFにお詳しい読者の方はお気づきでしょうが、ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』をオマージュすることにしました。百合といえば有名タイトル『その花びらにくちづけを』がありますが、そっちじゃないけどそっちのほうが完全に近いですね(笑)
まあ結果として結末に説得力が出たことは功を奏したのかな、と個人的には思っています。
さて、キャラクターなのですが…こいつらが好き勝手動いてくれちゃってもう大変でした。特に書いていて大変だったのはイチカです。リコ以上に作者を振り回してくれた愛おしいキャラクターです。
イチカは読書量と知識量がすごいので、僕のほうがそれに合わせて本を読んでいくというなんだか不思議な関係でした。どうしてもヤンデレなイチカを描きたかったのですが、イチカは根本的に良い子なのでヤンデレになりきれませんでしたね。要素は入れたんですけど、イチカがその通りに動いてくれませんでした。作者も想定外の行動をしたのがイチカです。イチカは僕の想像をはるかに超えて進化していきました。おかげで初期プロットから大幅に内容を変更させられることになりましたが…まあ楽しかったのでOK!愛!
三人の主人公(あえてそう呼びますが)はみんな基本的に良い子です。サクラは最後すこしイチカに対してジェラシーをみせつつ、イチカのことは認めてるんだなあと作者なのにびっくりしました。良いですね、百合って感じで。
ガジェットについてですが、基本的にはなるべく説明をしたくなかったのが本音です。MIND-Glassの説明は省きたかったんですが、物語の根本にかかわってくる部分なので説明せざるを得ませんでした。その代わりというのも変ですが、都市の構造や政治的、社会的な背景は読者諸氏の想像にゆだねる形としました。例としてはリニアバスの説明を省いたり、社会実験としての都市開発の部分を省きました。脳トレ的に読んでいただけたら幸いです。
引用について。なぜ引用を使っているのかというと、読書の入門書として本作品を使っていただきたいという作者の意図がありました。各キャラクターに思想をインストールする上で欠かせなかった本、世界観を強調、あるいは論理を補強したり、作品の品性にかかわる部分で使用した本など、多岐にわたります。気づいてくださった方もそうでない方もいらっしゃると思うので、もし参考書籍が知りたいという方はTwitterのDMでもなんでもいいのでご一報ください。あとがきに奥付を追記します。
あと、出来たらチャイコフスキーやショパンもぜひ聴いてみてくださいね。
そしてどうしてもこれだけは伝えておきたいのですが、百合はやっぱりめちゃくちゃ良いですね。書いてて楽しかったです。なにより、それをSFにのせられたということが僕個人としてはとても満足しています。次回作も百合SFを書く予定ですが、しばらくは短編だろうなと思います。長編の準備はしていますが、そっちを今から百合にするのは大変…でもやってみます。OK!愛!
最後に、改めて読者の皆さん、ありがとうございました!次回作でお会いしましょう。僕は今から百合アニメと百合漫画の世界にダイブしますさようなら!
桜のはなびらにくちづけを 佐々木慧太 @keita_jet
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