最近よく見てるvtuberが俺の義姉だった
わたあめちゃん
#1 花村カトレア
「こんカト~!ヴァーチャル妖精の花村カトレアだよ!」
全体的にパステルカラーが使われているワンピース。
ふわふわとしていて、毛先が紫色の白髪。
そしてくりっとした幼げな桃色の瞳。
まるで妖精のような見た目をしている少女、花村カトレアはvtuberである。
昨今企業に所属しているvtuberに注目されているが、彼女は個人勢である。
個人でvtuberをするのにはリスクがあり、ほとんどの運営を自分でしなければならない、投資費用が自己負担、など失敗すれば大損失が出る可能性もある。
そして個人勢は何よりも数が多い。
どれだけ視聴者の心を掴めるか。どれだけ面白い話ができるか。どれだけ上手いゲームプレイが見せられるのだろうか。
そんな無理ゲーな個人vtuberでも彼女は一味違う。
一度聞けば耳から離れられない透明感のある声。
経験や豊富な知識を織り交ぜた面白いトーク。
FPSからホラゲーまでなんでもこなす天性のゲームスキル。
そして何より、
普段の声とギャップのあるパワフルかつ美しい歌声。
これこそが彼女の魅力だ。
そんな特徴ありまくりのvtuberなんて人気が出ないほうがおかしい。
現在活動二年目にしてHertubeには75万人ほどのチャンネル登録者がいる、Uwitterのフォロワーも70万人を超えているなど個人勢にしても驚異的な数字である。
歌を出せばあっという間にミリオン再生、ゲームをすれば同時接続は1万人、雑談をすれば切り抜き多数、新衣装お披露目をすれば100万円ものスーパーチャットが飛び交う。
企業勢にも劣らないファンを持つ彼女を
俺はずっと応援していた。
きっかけは何気なく動画を見ていた時に、おすすめに出てきた。
vtuberをあまり知らなかったため気になってクリックしてみたところ、まあ度肝を抜かれた。
こんなに歌が上手い人間がいていいものか。
それから花村カトレアにハマった。
ここで、俺についての情報を記しておこう。
秋山翔(あきやまかける)、19歳。大学一年生だ。
家と大学が近いため、実家から通っている。
容姿は中の中で中肉中背。
外見を一言で表すならインドアヲタクだ。(実際コンビニくらいしか出かけないし眼鏡、髪も普通、スウェットとジャージしか着ないというから当てはまっている。)
元はアニメ、漫画を程よく嗜む程度だったが、vtuberにハマってからは推しが話題に出す作品などもチェックするようになり、再度アニメや漫画に熱が入るようにもなった。
そしてもう一つ。俺は絵描きだ。
母に大学進学祝いで買ってもらったiPadProで絵を描いている。
二年前、花村カトレアにハマったときから絵の勉強を少しし出し、今ではそこそこ上達したのではと思っている。まだ未熟なところはあるが。
基本は二次創作。推しVのファンアートばっかり描いている。
花村カトレアにはファンアートタグというものがあり、
#カトレアトリエ のタグをつけてUwitterに投稿すると、カトレアリスナー、通称カトリスの皆がいいねをつけてくれる。俺は花村カトレアの絵しか描いていないためカトリスから人気を博することができ、今日までに三万人ほどのフォロワーがいる。
もちろんそんなにフォロワーがいたら本人の耳にも届くのだろう。
なんと先週、御本人様から歌ってみたの動画のイラストの有償依頼が俺のDMに届いたのだ。
届いた時俺は柄にもなく興奮してしまったが、推し様のご依頼だ、断れる訳がなかろう。
無償でいいですよとDMを送ったのだがどうしても有償でないとだめということで
5万円ほどで一枚絵+表情差分を描くことになった。
その絵も昨日で仕上がった。
そしてDMで出来上がった絵のファイルを添付すると、なんと本人からお礼として一対一で通話がしたいと申し出られたのだ。
あまりの嬉しさに俺は、叫んでしまった。
俺は急いでBiscordのアカウントを教え、明日午後一時に通話をするという約束がとりつけられた。
そして現在午後12時45分。
「ああああああ緊張してきた~!!どうしよう、、」
と戸惑っているとなんと向こうから掛かってきた。
焦って通話ボタンを押すと、いつもの配信で聞きなれた声が聞こえてきた。
「はじめまして~!花村カトレアです!いつも応援してくださってありがとうございます!本日はまったりお話ししたいと思ってます~」
「今日は昼食何食べたんですか~?」
と日常会話をしてくる。俺は素直に「ラーメン食べました」
と言った。すると「え、私もです~!奇遇ですね~」
なんと。昼飯一緒だったのか、、
とどうでもいいこともどうでもよくなくなってきた所で、
「そういやなんか動物とか飼っていますか」
と聞かれた。
これも正直に「猫飼ってます」
と答えると「え?まじですか~?!うちも家族で猫飼ってるんですよ~」と言われた。
共通点多すぎだろ、、猫飼ってるんだ、、と思って何の種類か気になり、
「何猫飼ってるんですか?」と聞いた。俺はマンチカンを飼っている。
するとなんと、「まじか、、?私もマンチカン飼ってるんです~」
奇跡過ぎると思い、「俺ちょっとつれてきてもいいですか?」
ときくと、「是非是非~!私も連れてきます!」
と言いお互い離席した。幸いにもマンチカンはリビングにいたのですぐ連れてくる事ができた。するとカトレアは「すみません、リビングにいなくて、多分弟なんで連れてきます~」と言いまた部屋を去った。
言い忘れていたが、俺には義姉がいる。父親が俺が三歳のとき他界、母親が最近再婚してその連れ子が義姉だ。なんでも義父が心配性なんだそう。
仕事はテレワークと聞いているが詳しくは知らない。
もちろん部屋にも入ったことがない。初めましての挨拶以来喋っていない。
が、そんな義姉が今俺の部屋に入ってきた。
「え?!な、何か用ですか」
と俺が聞くと
「あ、ああ猫、ちょっとだけ借りてもいいですか、、?電話で見せるんです」
そう言われたが俺も見せないとならないので
「いや、俺も電話で見せるんですけど、、」と口に出した。
すると義姉は驚愕、焦燥の表情を見せ、恐る恐る聞いてきた。
このあとの俺の人生史に残る、衝撃発言を。
「あなたもしかして、花村カトレアが有償依頼した絵師の、Kakeさん?」
そう。なんとこの義姉、俺の推し、花村カトレアの中の人だったのだ。
最近よく見てるvtuberが俺の義姉だった わたあめちゃん @okasikudasai
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