第5話理想と現実

バレンタインの告白の後、お互いの連絡先を交換して私と長塚君はそのまま分かれた。

びっくりの展開に呆然としている私に、亀ちゃん達が飛び込んで来た。

「良かったんでしょう?そんな気がしたんだよ!」

と叫んで呆然としている私に抱き着いた。

亀ちゃん達の話では、長塚君の視線が私を追っているのに気付いていたと話していた。

「今日もさ、絶対に呼び出されるの待ってたもんね」

って言いながら、亀ちゃんも理恵ちゃんも夏美ちゃんも、私の結果に泣いて喜んでくれた。

私も幸せになれると……そう信じていた。


 3月になって、春休みに二人で少し遠出の初デートをした。

駅で待ち合わせをして、長塚君が実は方向音痴だったのを知った。

緊張し過ぎて、曲がりストローを逆さに入れてしまい、氷で必死に隠していると

「飲まないの?」

って、私のジュースをガン見されてしまい、諦めてストローを掴んで

「実は曲がりストローを逆さに入れてしまって、隠してたの!」

と叫ぶと、一瞬目を点にしてから大爆笑されてしまう。

学校ではいつだって無表情な長塚君が、楽しそうに笑ってくれているのが嬉しかった。

初めてのデートは緊張と失敗の連続だったけど、学校では見られない長塚君が見られて楽しかった。

でも……学校が始まったら、現実を思い知らされる事になるなんて、この時には思いもしなかった。


学校が始まり

「おはよう」

と声を掛けたら、明らかに嫌そうな顔をされてしまった。

それは1回や2回では無く、段々と学校で声を掛けるのを控えるようになってしまった。

私の夢は学校の登下校を一緒に歩くことだったけど、彼と私の家が真逆というのもあるけど、彼が恋愛より友達を最優先にする為、いつしかお互いに夜の通話と月に一度のデートという付き合い方になって行く。

それでも、お互いに交互に電話をし合って、その日にあった事を話すのが楽しかった。

学校では無口で、鉄面皮と言われている彼の楽しそうに話す声が大好きだった。

「もっと学校でも話し掛けて来れば良いのに」

って言ってくれていても、友達の星川君がいたら彼が最優先されるのは分かっていたし、私達はこういう付き合い方なんだっていつしか諦めるようになっていた。

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