第6話
「大変ご迷惑をお掛け致しました」
深々と頭を下げる私に、鈴代は目を据わらせて
「全く、相手が俺だったから良かったですが!暫くは禁酒して下さいね」
そう言われて、グッと息を呑む。
だが、昨夜の醜態を思えば、ごもっともな意見だ。
バスローブを着て、汚した衣類の汚れをあらかた洗い流した鈴代が
「コインランドリーがあるみたいなので、行って来ます」
と、部屋を出ようとしたのを引き留めた。
「女の子1人残して何処行くの!」
「女の子って歳ですか?」
「うるさい!1人にしたら、泣いてやる」
「からみ上戸の次は、泣き上戸ですか?タチ悪う!」
と言いながら、優しく私の頭を撫でて
「洗濯したら、すぐ戻ります。沙耶さんは、寝てて下さい」
そう言って、部屋を後にした。
私がベッドに横になり、ウトウトと微睡んでいると
「沙耶さん、お水貰ってきました」
と声がした。
眠い目を擦りながらお水を受け取り、グラスに入った冷たいお水を一気に飲み干す。
「ありがとう」
素直にお礼を言うと、鈴代がふわりと優しく微笑んで
「明日も稽古ですし、もう寝ましょう」
そう言われて頷く。
寝るモードになる鈴代に
「ご迷惑をお掛けしたお詫びに……」
と、何故か私は鈴代に馬乗りになって着ていたバスローブを脱ぎ捨てた。
「ち……ちょっと沙耶さん!寝るんですよね?」
「鈴代君に迷惑を掛けたお詫びに、折角ラブホに来たのでやりましょう!」
「やるって……何をですか?」
「分かってるでしょう?ほら、あんたも脱いで」
バスローブの紐を解き、胸元に手を差し込む。
馬乗りになった私のお尻には、硬い感触が当たる。
すると身体を抱き寄せられ、反転して私をベッドに押し倒した。
「俺、マジで寝るだけつもりだったんですけど、沙耶さんのせいですからね」
バスローブを脱ぎ捨てて言われて
「迷惑料って事で……。あ、でも初めてだから、優しくしてね……」
そう言うと
「初めてって……え?沙耶さん処女ですか!」
驚いた顔をされ
「女子校だっから……」
とかなんとか言いながら、記憶はそこで終了した。
鈴代の説教もそこそこに
「あの……質問して良いですか?」
と、手を上げる。
「なんですか?」
かなりご立腹の鈴代に
「ちなみに私達、なんにも……」
そう呟くと
「ある訳無いでしょう!」
って怒鳴られた。
「ですよね~」
ホッとして呟いた私に
「好きな人の初めてを、酒の勢いで奪いたく無いですから……」
ポツリと呟かれ、思わず
「え?」
と聞き返した。
すると
「なんでもないです!ほら、メシ食ったら稽古場に向かいますよ!」
そう言って、頭をぐしゃぐしゃっとされた。
(好きな人……って言ってた?まさかね)
私に背中を向けて着替える鈴代の背中を見つめながら、私も洗って綺麗になった衣類を身に付けた。
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