エピローグ そうして神は生まれる




 夢を見ているのに微睡まどろんでいる。そんな言葉では言い表せないような、そんな気分だった。


 俺、という自我があって、けどそれしかわからない。


 自分の名前も、過去も、全ては「ある」、そのはずなのに、思い出せない。


 本当に、自分という存在がある、という事実だけしかわからない。


 揺蕩たゆたうように、俺という存在は、あらゆる世界を巡っているように思える。


 自分という「己」はありながら、それを内界と外界とを分ける境界線がなく、全てが混じり合うその瞬間の手前で、どうにかなっているような、そんな有様だ。



 そう自覚した途端、俺は、俺になった。



 形が形成されていく。


 己という形が、そうだ、俺は人だった。人であって、今は人から脱却しようとしているのだった。


 あらゆる力と、あらゆる存在とがない混ぜになり、己を形成していく。


 それはまさに、自分という存在を改めて向き合い、己を定義していく、そんな気分だ。


 俺は、小宮ばあちゃんの孫で、鬼崎一郎と鬼崎光橘みつきの子で、全能を授かって、今、神になろうとしている。


 過去の、思い出が一瞬にして、フラッシュバックしてくる。


 記憶してもいなかったような出来事も思い出される。


 それはまるで。自分の過去をもう一度、体験しているようだ。


 自分が、なにをしようとしていたのか、なにをするべきなのか。


 全てを思い出した。


            スススス

 ポコポコ


          パキパキ

   グシャグシャ


グサグサ

              ジョロジョロ

       ボキボキ


           サラサラ

  ガキンガキン


        ズーンズーン

シャーーーー

 


 変な音を鳴らしながら、自分が作られていく。


 不思議な気分だ。


 そして、俺は再び微睡んで────



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