幕間
第⬛︎話 消散
「うっ、ここは……」
目を覚ますと、居間にいた。寝起きながら、辺りを見渡せば、そこが自分の家だということがわかった。
いつの間に、ここで眠っていたのだろう。
かけられていた毛布を脇に置いて、起き上がる。
シーン、と静まり返って誰の気配もない居間は、久しぶりな気がする。
いつもは、咲や、オウランがいたりするのに。
そこで、はたと気付いた。
私はマーヴァミネに会いに行っていたのだ、と。
記憶が蘇る。
マーヴァミネが魔法ではない、謎の力を使い、私の最高傑作と言いたくなるようなあの封印を吹き飛ばした光景が。
それからは防戦一方で、なにもできなくなったあの光景が。
いったい、あの力はなんであったのだろう、あれは、魔法であって、魔法ではなかった。
そう、事象的に見ればあれは間違いなく魔法のカテゴリに入るはずなのだ。
魔原子を使ったのは間違いないのだから。しかし、その使い方が本来の魔法の手順とはまるで違った。
魔法には、必要な手順がある。神や精霊、古い言葉、それらにやどる意味を自分なりに解釈し、その解釈した結果が魔法となるのだ。
なぜ、そうなのか、それは未だに解明されていない。しかし、そういうものの、はずだったのだ。
マーヴァミネ、彼のしたことは間違いなく、それから逸脱していた。
魔原子のそのものを操り、事象を起こした。そう言われた方が納得できる。
あまりにもその力は理不尽だった。
そう、あれはまさに魔原子の本来の力そのものではないだろうか?
そう考えると辻褄が合う。
そして、そう考えれば、私の魔法が最も容易く相手に奪われ、自らに跳ね返ってきたことも立証できるのではないか?
あの理不尽の権化を思い出しながら、思考に耽る。
そう、けれどまさに、あれは神由来の力ではない純粋な魔原子そのものなのだ
そうすると、新たな疑問が持ち上がる。なぜあんなことができるのだろうか、と。
あそこまで万能に魔原子を操ることなど、果たしてできるのであろうか? また、できたとして、それはどのような理論に基づいているのだろうか?
あぁ、時間が、時間が足りない。
そこで、ふと私は思い出した。
咲と駿翠は、今どこにいる?
私は、気がつけば、家の中を見た。
彼らなら、マーヴァミネを倒して、部屋に戻っている、そう思ったのだ。
けれど、彼と彼女の部屋には誰もいなくて、静かで、真っ暗だった。
結局、彼は帰ってこなかった。あの戦闘になった場所に行っても、そこには誰もいなかった。
戦いの跡一つ残っていない。マーヴァミネかそれとも駿翠が直したのだろうか。
願わくば、後者であってほしい。そう、私は祈ることしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます