第20話 オウラン
純粋なエネルギー。それは、全能の力であるこの世界外からの影響を受けて変質したエネルギーの変換、それで生み出されるはこの世界にあるあらゆる根源のエネルギーのことだ。
世界が生まれてか、ずっと存在し続けるエネルギーであり、全てのエネルギーの源だ。
そして、それだけではない。俺の全能の力が物質及び生物などを作り出す時に行われる時に一度経由して構築さえるエネルギーもあるのだ。
全能神の力は、結局のところイメージだ。どれだけ、具体的にイメージしそれを行えるか。それに尽きる。
俺の攻撃はあらゆるものを原子レベルまで分解することをイメージしている。
なのに、俺の攻撃は効かなかった。
エネルギーの奔流の中でマーヴァミネはまるで苦でもないとでも言いたげに存在している。
「なっ……!?」
「不思議な顔をしているな。もちろん、理由はあるさ。まぁ、教えることは一生来ないだろうがね」
そう言って、マーヴァミネは無表情でこちらを見つめる。
俺は、大地の溶岩を操り、マーヴァミネを包み込む。そしてそのまま、巻き込む。
これに対して、マーヴァミネは魔法を使い、溶岩を吹き飛ばした。
この間に俺は思考加速をし、相手を再び見る。やはり、力が使えない。マーヴァミネに対する干渉がことごとく何かに阻害される。
相手の無意識、意識、身体の全てを支配しようとしても、また今度は個別に精神を操作しようとしたり、肉体を操作しようとしても……。他にも試そうと思い、今度は相手の殺すために脳の機能を停止しようとしても、心臓を潰そうとしても、首に傷をつけて出血死をしようとしても、体温を下げようとしても。思いつく限りの全てを試してみても、マーヴァミネを阻害する力は止まない。
今度はと、光と同じスピードの攻撃を繰り出しても、魔法で全てが防がれる。
「効かぬ。お前の攻撃は、無意味だ」
そう言いながらも、彼の表情はどこか憎々しげだ。
「効かないって言っても、それには限界があるみたいだな」
笑ってそう言えば、よりいっそう、憎々しげな表情をする。
どうやら、向こうは思ったほど余裕があるわけではなさそうだ。
俺は、全能の力を使う、全力でだ。後先構わず、己の限界まで、今日ここで倒れてもいいと思うほどに。
全能の力を使えば使うほど、体に負担がかかるのは明白だ。むしろ、全能なんていう御大層な力なのに、よくもこれだけ体に負担が少ない設定なのか、疑問ではある。
風が刃となって降り注ぎ、空間が歪み、重力を反転させ、あたり一帯の空気を無くし、太陽にも匹敵する熱エネルギーをぶつけたあと入れ替えるように絶対零度に近い温度まで下げる。息を吐く間も無く、雷が天から降り注ぎ、一拍置いて、全方位から光線が肉体を崩壊させんと殺到する。
その光景はまさに世界の終わりとでも言いたくなる光景。
もしも、この光景を見ている人がいたら、光が乱舞し、大地が裂けては再び隆起するという異常な光景を目の当たりにしたことだろう。いや、ここまで展開が早いと、チカチカするだけで何も見えず、下手したら失明してしまうかもしれない。
なんて見栄えのない戦いだろう。俺だったら絶対観戦しないな。
そんな、悠長なことを考えている俺に対し、全ての攻撃に対応せざるを得ないマーヴァミネは表情がよりいっそう、歪んでいく。
「遊びはここまでだ」
これまで、マーヴァミネは手を抜いていたとでも言うような言葉だ。
けれどそれが本当であるならば、マーヴァミネは俺を敵と見做したと言うことだろう。
「後悔するがいい」
そう言って、マーヴァミネは手にしていた杖を自らの手で折った。そして、一言。
「ミラオーネ」
と、満面の笑みでその言葉を口にした。
そして圧倒的な光を放ち、辺りを消し飛ばして、それは現れた。
「──オウラン?」
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