第11話 別れと再会
「それじゃあ、行ってくるよ」
飄々とした立ち振る舞いをしたナイオラはそう言って、にこやかな表情で旅立っていった。いや、今日中には帰ってくるって言ったけど。
「それじゃ、戻るか」
ナイオラは転移をし、姿が消えると同時に、そう切り出す。桐沼はそれに賛同したのだろう。特に何も言わずに、家の中へと戻る。それに続くように、オウランが後ろを飛んでいく。
『二人とも仲良くなったな〜』なんて思いながら、俺は後を追う。もちろん、どんな会話をしているかは知らない。それに、知ってしまったらパンドラの箱が開くレベルの絶望みたいなんが飛び出てくるだろう。いや、知らんけど。そうに違いない(迫真)。
そして数時間後──正座を強制されている俺がいた。
……どうしてこうなった?
俺はただ、桐沼に『最近太った?』と言っただけなのに。オウランからは罵倒され、桐沼は怒りのあまりものも言わず。追い打ちをかけるように、オウランから正座をして反省の意を表するようになどと言われた。
だが、それでもあえて言わせてほしい。『桐沼、太ったよ』と。真実は時に人を傷つけるが、たとえそうであったとしても、目を逸らしてはいけないのだ。
人は、現実から目を逸らした時、成長を止める。それは向上心を失い、停滞してしまうということだ。
だから桐沼も、現実を直視し、体重計に乗り、己の太り具合を目に焼き付けとかなければいけない。それが、桐沼に残された最後の選択なのだから──。
──全女性を敵に回しましたね。
この世界に太ったことを気にしない女性もいるさ。
──そうだとしても、多くの女性があなたの言葉に怒りを覚えたでしょう。
正論すぎるから?
──戦争が始まりますよ?
俺はこの理不尽に打ち勝つことにする。そう、女性の感性をというか、全人類の共通感性を弄ればいいのだ。今現在の俺には可能だ。この星で俺に勝てる存在はいないということだ。
ふっ、俺の力が止まるところを知らない……。
──やってみますか?
……やめとく。
これをやってしまうと、負けた気分になる。
「……誰か来たな」
桐沼にも伝えるため、声に出す。
「すぐですか?」
「いや、道に入ったばかりだ。数時間はかかるだろ」
正しい道を行けば30分で済むが、ここにつくまでは間違えるように魔法などがこれでもかと仕込まれている。それに加え、魔法の効果を受けなかったとしても、迷路のごとく入り組んだ道だ。
「……ん?」
正しい道を通れるわけがない、はずなのだが。なぜか、その誰かはまっすぐやって来ている。
「正しい道を通ってる?」
「え?」
間違いなく正しい道を通っていってる。誰か気になり、意識すれば「誰か」はすぐにわかった。
ただ、ここにいることが信じられなかった。
「誰がきたんですか?」
驚きのあまり、桐沼の問いに答えることができなかった。まっすぐ、こちらへと向かってくる人物。
それは、つい先日会ったばかりの父親だった。
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