第14話 ”フェリ”の現状 2
フェリシアとトレーシーの言い争いが収束し、ジェイソンが本題に話を戻す。
「”オトルス”が何かを企んでいる。これは疑うことのない事実といっても過言ではない。どこに、どのような人選で、どのような作戦なのかはわからない。しかし、最悪の可能性を考えて動かなければいけない」
真剣に話しを再開したからか、全員が黙り、真剣な面持ちで話しを聞いている。
「最悪っていうのは?」
カレブが質問をする。
「私たちが認識すらできずに倒されていたということになってしまった場合だ」
「あり得るのか?」
「相手が動かせる戦力を見るに、今のところは無理なようだ」
「その今がいつまで続くかってことだな」
「落とし所を探さなければ」
「難しいですね」
「勝ってはいけない。しかし、負けてもいけない」
「じゃあ、前言ってた不可侵条約のようなものを結ぶのか?」
「……それができれば最善だ。しかし、向こうはこちらが存在していては困ると思っているようだ」
「……どうするつもりだ」
「種を残そう」
「あ?」
「ふむ、覚悟は決めたのか?」
「恨まれますよ?」
「おい、勝手に話しを進めるな」
話しについていけなくなったカレブが抗議の声を上げた。
「団長はな、我々が”オトルス”と負けることで、まだ弱い子等を生き伸ばすことで、新しい”フェリ”の礎となってくれるようにするという選択をしよう、というわけじゃよ」
「次世代にバトンタッチってか?」
「ま、そういうことじゃな」
「……いいじゃねぇか、だったら走り切れるところまで走りきっていいんだろ?」
「これだから筋肉バカは(ボソッ)」
「なんかいったか? フェリシア」
「いいえ、あなたには関係ないから気にしなくてもいいわ」
「……そうか、そういうことにしといてやる」
だんだんと話しの内容がズレっててる気がするんだが。
––––完全にズレてるわけじゃないんですからいいんじゃないですか?
いいのか〜?
「じゃあ、どうするんだ?」
「もう新しい隠れ家はできている、あとはそこに移すだけだな」
「えぇ、散々扱き使ってくれましたからね」
「感謝はしているぞ?」
「反省は––––」
「していないに決まっているだろう」
「はぁ〜」
まるでコントを見ている気分だ。
––––ポップコーンが欲しいですね。
……おい。
––––ふふふ、冗談ですよ。
信用できん。
まぁ、そんなことより、だ。
どうやら”フェリ”は相当きつい状況のようだ。
”オトルス”に勝つことではなく後継となる人々を逃すための戦いを完全に整えてきているようだ。
まぁ、知らされてなかっというか、知らせる時間がなくてそのままだったような人もいたが。
だが、重要なのは最後まで戦ってくれるということだ。
はっきり言って逃げるだけなら桐沼がいるため簡単だが、これまでと違って向こうも戦力を集めてきている。
それが、ジェイソンのいうように十全でなくとも、”フェリ”を落とすつもりで揃えられた人たちとの戦いだ。
少し気を抜いただけで泥沼の戦闘に追い込まれる可能性がある。
––––桐沼が泥沼にはまる。なんちゃって。
……まるで南極にいる気分だ。
それも、吹雪の南極。
氷点下50℃以下の気温に加え、風速50m、視界を埋め尽くすような雪といった環境の中にいる気分ということだ。
––––思いっきり滑りましたね……。
面白いと思ったのか?
––––いいえ?
……しかし、この戦いは本腰をいれないとな(強引に思考を本題に戻す)。
「すまないね、キザキ。こんな私たちに失望したかい?」
「いいえ、私はあなた方が何をしようと興味はありません。ともに”オトルス”と戦うという共通目的をもつ限りは」
これが、俺の本心だ。
今は無理かもしれない、手を組んでも無理かもしれない。
しかし、そんなことは関係ない。
最後の最後に立っているのが自分であれば、文句はない。
そう、あの時、決めたのだから。
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