第13話 ”フェリ”の現状 1



「現状はとても良くない、だろ?」


「はい。とても厄介で、危険というのが現状です」


 ジェイソンとトレーシーが話を始める。


「向こう側も戦力が揃っていないのか攻めあぐねているようです」


「私たちはそれに救われているのだがな」


 どうやら”オトルス”は現在、戦力が揃っていないらしい。


「まぁ、向こうもそろそろイラついてきてくる頃だろう。本当だったらもっと簡単なはずだったんだろうしね」


「どういうことだ?」


 カレブがジェイソンの話に口を挟んだ。


「あぁ、まだ話していなかったね。彼が我が国にある”オトルス”の支部を潰して回ったおかげか戦力が揃わなかったようだ」


「こいつがか?」


 懐疑的な視線をこちらに向けるカレブ。


 自分のことを知らせていないのだろかと、ジェイソンに目を向ければ、俺の視線の意味を理解したのだろう。


「あぁ、彼はずっと”オトルス”の襲撃を抑えていたから君のことは知らないんだよ」


 と、言ってきた。


「そうか」


 それより、値踏みをするようなカレブの視線はどうにかなりませんかね?


 ––––同族の匂いを嗅ぎ取ったのでは?


 ……オウランが静かにしていたことは不審に思っていたが、急に変なことを言ってきた。


 ––––変ですか? 同じ戦闘狂だと思ったのですが。


 ……どこをどう判断したらそう思えるんだ?


 ––––あなたはいうまでもなく、カレブさんは目がいっちゃってますよね。あれは絶対に戦闘に悦びを得ている人種だと見ました。


 ……本人には絶対言うなよ。


 ––––言いませんよ、戦闘を始めるきっかけなんて作りたくないですから。


 ……。


「ひとつ、わかっていることがある」


 ふと、急に誰もしゃべらなくなったため生まれた沈黙に耐えかねたのか、ジェイソンが話を切り出す。


「何がですか?」


 一応、周りが口を開かないので、合いの手を入れてみる。


「”オトルス”は近々なにか大きな行動を起こす」


「攻撃が止んだからか?」


「あぁ」


「どうやら、人や物の動きがいくつもの支部で活発になっているという情報は手に入れておる」


「困りましたね。また物資が足りなくなりますよ」


 苦言を呈したのは今まで自己障害の時以外口をひらなかった2名、フェリシアとトレーシーだ。


「どうにかするしかあるまい。それに、それを調整するのが事務の仕事じゃろ」


「……事務という肩書きを変えて雑用係としたほうがいいのではと最近思っているのですが?」


「建前と業務内容は別じゃろ」


「そうですね。あなたが言うと言葉に重みがあるように感じますよ」


「そうじゃろ、そうじゃろ」


「2人とも、そういがみ合うな」


「啀み合ってはおらん」


「えぇ、内々に処理しますので安心してください」


「ほほ〜、そう簡単にはやられんぞ?」


「やる前に死なないことを祈ってますよ」


「……一旦、口を閉じろ。お喋り好きどもめ」


 ––––コントを見ている気分ですね。


 少なくともあの人たちもお前には言われたくはないと思うぞ。


 ––––へ?


 はぁ、とため息をつき、俺は言い争うフェリシアとトレーシーを横目にしながら、ジェイソンが再び話を始めるのを待つことにした。


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