第4話 魔女の隠れ家 2



 意識が覚醒していく。


 決して覚醒剤を飲んだわけではない。


 真横に座っているやつはそれに類する薬品を作っているが……。


「あっ、起きた?」


 そう言ったのは、手元でやばい薬品を現在進行形で作っている魔女ナイオラ。


 以前、聞いた話では、一番効力が高いもので性行為で得られる快楽を超える快感をもたらす薬らしい。


 薬物そのものには依存性はなく、肉体的、精神的な影響は一切ない。


 ここがとても嫌らしいところで(本人が胸を張って言っていた)、この薬で得られる快楽は人が楽しい、気持ち良いと感じる行為で得られるものと同じプロセスを起こすのだそうだ。


 科学的な物質を神経に分泌させ、快楽を得る。


 これを、廃人にならない限界まで多く放出させる。


 そして、これには種類がある。


 気持ちをスッキリさせる程度のもの。


 楽しいと感じさせる程度のもの。


 性行為と同じ快楽を得られるもの。


 性行為を超える快楽を得られるもの。


 廃人の一歩手前までの快楽を得られるもの。


 いずれも薬、一粒で1時間ほどの効力がある。


 これらが、魔女ナイオラが作っている薬品の中で一番の利益を出しているものだ。


 というよりも、この薬品を作ることで、本業魔女の時に必要なものを買うお金の足しにしているらしい。


 最近は、ネットなどが普及したおかげでありえないほどの利益が出ていると喜んでいるらしい。




 俺が彼女と会ったのも、彼女曰くこの薬の売買を任せて欲しいと裏社会の組織と取引をしていた帰りだったそうだ。


 オウランと桐沼を連れて都会へ向かい、廃ビルに不法侵入をし、廃棄食品を猫糞ねこばばなどをして、情報を集めていた時、俺たちはナイオラに会った。


 長い金髪に、青い瞳という日本ではあまり見かけない容姿を持つ美女が、路地裏を歩いているという出会いだった。


 彼女は俺のことをとても不思議そうに見つめて


『面白いね。君、人間?』


 と面と向かって人外認定をしてきた。


 その後、いぶかしみながら相手の話を要約すれば『気に入ったので、隠れ家に住ませてあげるから人体実験(命の保障はあるけど)していい?』と言ってきた。


 若干の脅し(”オトルス”に突き出そうか)を言ってきたため、渋々、半強制的に魔女の隠れ家へ魔法具を使った転移で連れてこられた。




 そして、現在、俺の全能の力を理解した魔女ナイオラはお使いと称して、世界の神話に出てくるような化け物の素材を取ってこいと(強制されて)各国に訪れたことで、いまや、俺はオウラン曰く、全能の半分ぐらいの効果を出せるようになったのだとか。


 あの古ぼけた紙には現在、こう記されている。



___________________


 効果


  創造

  ・認識できる非生物の全て

  ・生物

  ー植物

  ー菌

  ー微生物

  ー虫

  (以下未開放)


  干渉

  ・認識できる非生物の全て

  ・生物

  ー植物

  ー菌

  ー微生物

  ー虫

  ー『全能』能力を持つ存在

  (以下未開放)


  発動条件

  ・『全能』の力を発動すると意識した上で、効果を想像する。


  範囲

  ・『全能』能力を持つ存在のいる惑星系全て


___________________


 非生物は全て自由に創造、干渉ができるようになり、命を創造することすらできるようになっている、生物の創造は未だに怖く、実行はしていないが、それでも人外どころか神の領域に片足踏み込んでいる気がする。


 これが、俺の手に入れた力。


 神話上の化け物と戦い、ある時は余裕で相手を下し、ある時はギリギリまでの死闘を繰り広げた上に相手を倒し、あわや命を落とす寸前まで戦い、どうにか逃げ切ったりしたのだ。


 しかし、逆に言えば、これだけやっても全能の力の半分しか未開放の部分を取り払うことができなかったとも言える。


 こんなの序の口だよなどと宣っている魔女ナイオラの言葉を肯定するようで不満はあるが、俺の力はまだまだということなのだろう。


 まぁ、魔女ナイオラ本人はとても弱いのだが……。


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