第20話 ”魔女”との対面
「時間」
オウランと話し始めて4つほど話題を消費した頃、中学生から声がかかった。
「立って」
手錠と足錠をされて座っている状態で立てと?
––––好い
オウラン、俺ってそこまで言われるほど酷いことしたっけ?
––––ハッハッハッ、哀れですね。自らの罪を自覚せずに死ぬことになるとは。
オウラン、ふざけてる?
––––惨めですね〜。しょうがないので教えてあげますよ。私を、散々、
オウラン、大丈夫?
–––– ……真面目に返さないでください。悲しくなってくるじゃないですか。
それを狙ってたんだけど?
––––最低です。この人は慈悲というものをどこかに落としてきてしまったのですね。
オウランは一旦無視するとしてだ。
中学生はなにやら部屋の中をあっちに行ってこっちに行ってを繰り返している。
「なにしてるんだ?」
「転移の準備ですよ。転移に必要なのは対となる魔法陣と、こちらからその対となる魔法陣に接続することです」
なるほど、今その接続するということをやっているようだ。
「なのでさっさと立ってください」
無慈悲だ。
とても、とっても不愉快だが、腕を壁につけて、両足の動きはずれないようにして伸ばして立ち上がる。
とても動きにくい。
––––だからさっさと逃げればいいんですよ。
ここまで来てそれをするのはなんか負けた気分になるから嫌。
––––はぁ、勝手にしてください。
「早く‼︎」
「はいはい」
中学生が声を張り上げて文句を言ってきたので急いで彼女が立っている魔法陣の上へ一緒に立つ。
「それでは、行きますよ」
「わかりました」
中学生は呟くように小さく何かを声に出した。
地面から魔法陣が浮き出るようにして光り出す。
その光は体を包み込む。
眩しさに目を閉じている間に俺たちを転移させたのだろう。
目を開けばいかにもそれらしい雰囲気の場所にいた。
= = = = = =
先ほどいた場所より3倍ほどの大きさがあり、埃一つなく、清潔な部屋。
そこにいたのは20名を超える魔女、もしくはそれに類するであろう人たちだった。
円形の屋内の壁に沿うようにして多くは立っている。
フードを被る者、仮面をかぶっている者、顔があるはずであるのに頭に残らない者。
しかし、これまた円形の一段高い場所では、魔法陣が描かれ、その魔法陣のちょうど真ん中に位置するところに、他とは一線を画す、顔が認識できる魔女がいた。
いずれも、こちらを舐め回すような目で見てくる。
––––物騒ですね〜。
高みの見物は楽しいか?
––––はい‼︎
今までで一番早く言葉を返された気がするのだが、気のせいだろうか?
––––気のせいですよ〜。
とてもではないが信用ならない返答が返ってきた。
「連れてきな」
その場にいる一番位の高そうな女性が声を出した。
「はい」
中学生が俺についてくるように促し、歩き出す。
まぁ、しょうがないと俺はそれについていく。
「あれが、今夜の生贄ですか」
「……綺麗な魂」
「とても上質そうな贄だこと」
「あぁ、もっと早く見つかっていれば」
「これがこの度の実験で使われなければ血の一滴でも欲しいところなのですが」
「えぇ、本当に」
「いい占でした」
「我らが神の誕生させるにはもってこいですね」
「えぇ、ここまでの者に次また会うには100年ぐらい必要でしょう」
「今日は良い日ね」
等々、近くの者と、囁くように話す。
しかし、決してその場から動くようなことはせず、首を動かすにとどめている。
中学生に連れられて俺が一段高い台の上、そこに立っている魔女と
中学生は俺から離れ台から降り、部屋を出てていくのを横目にしながら上手に手錠をされている腕を動かして頭を掻いていると魔女と思しき人物はこう言った。
「本当に良い贄ね。ここまで上質のものを見つけることができるのはそうなんどもないからね」
とても不本意なことを言われているのだが。
––––あなたが始めたことでしょうに……。甘受してください。
うっうっうっ、オウランが冷たい。
––––平常運転です。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん
と、表情には一切出さず、心の中で泣く。
「あら、顔が引きつってるわね」
……どうやら完全に表情に出さないことは無理だったようだ。
「贄にされるのが嫌なの?」
「……それは大抵の人が嫌がることだと思うのですが……」
「神の贄よ? 喜ぶのが普通ではないかしら?」
「自分の崇めている神という注釈がついていなければ頷きたくありません」
崇めてる神なんていないけど。
––––ダメじゃないですか
うちの国は”思想・良心の自由”というのがあってな、どんな宗教を信仰しても良いということになってるんだよ。
––––どっちにしても神を崇めていないということですよね?
だから、今日はこの宗教、あの日はあの宗教みたいに日替わりで信仰してるんだよ。
–––– ……大丈夫なのでしょうかこの国は。
これまでそれでどうにかなってるんだから大丈夫だろ。
「そうね。しょうがないわね。今から私たちの信仰する神の贄になることを喜びなさい」
何がしょうがないのだろうか?
––––説得を諦めただけでは?
「それじゃあ始めるとしましょうか。我らが神の創造を」
「そうね」
「早くしましょう」
「楽しみ」
斯くして、俺を神の生贄にするという儀式が(俺がよくわからに間に)始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます