3 やさしさ

「そんなことがあったんですね。」

あれから、職員室で泣いてた俺に、美愛里先生は、ずっとそばにいてくれた。

そんな美愛里先生の優しさに、俺は泣きながら過去を話した。

「ごめんなさい!」

美愛里先生に突然謝られて、

「えっ、どうして美愛里先生が謝るんですか。」

「だって、私の言葉でいろいろ思い出したんですよね。」

「そんなことはありません。」

これだけは絶対否定したかった。

俺のことをこんなに気にかけてくれた人は初めてなのに、

「美愛里先生の言葉で思い出したというのは事実ですが、楽しかったあの頃の思い出もよみがえりましたし、」

俺は大きく息を吸うと

「美愛里先生がそばにいてくれたとき、一人じゃないんだってもう一度思えたんです。だから、ありがとうございました。」

美愛里先生は微笑むと、

「和鶴真先生」

初めての響き

「これから、よろしくね。」

君の笑った顔は、美しくて、ほんのちょっと、ほんのちょっとだけ、

可愛かった。

「和鶴真先生、私の十年間、話していいですか。」

「えっ」

もう一度みた美愛里の顔には、悲しみと寂しさが写っているように見えた。

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