2  黒澤 美愛里先生

「あの…もしかして、橘 和鶴真先生ですか?」

市立名星(めいしょう)中学校に転勤してきた初日。

誰かに呼ばれて振り返ると、

「おはよう御座います。私も今年、名星中学に転勤して来た、黒澤 美愛里と申します。よろしくお願いします。」

丁寧に頭を下げる黒澤先生に何て返そうか迷っていると、

「あっ、すみません。かたすぎましたね。これから、新一年生の教師同士仲良くしてください。」

あっそれと、っと黒澤先生は言うと、

「あと、下の名前で呼んでください。美愛里の名前、大好きなんです。」

黒澤…じゃなくて、美愛里先生は、親からもらった名前が大好きなんだな。

親…母ちゃん、母ちゃんは、俺の名前、どうやって決めたんだろう?

「和鶴真、何があっても、和鶴真は、父ちゃんと母ちゃんの宝だよ。」

母ちゃんは、俺が小1のまだ父ちゃんと仲が良かったときにそう言った。

母ちゃんは、今も俺のこと宝だと思ってるんだろうか?

「母ちゃん、母ちゃん、母ちゃゃゃゃゃん!会いたい…。会いたい…。………ッ、うっうっう…」

無性に母ちゃんに会いたくなって、気づいたら、美愛里先生の前で、泣いていた。

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