第6話甘い運命

スクールバスの中で、大塚は『ゼクシィ』を読んでいた。隣に座る、和田由美は、

「大塚さ~、結婚するの?いずみちゃんと」

大塚は無視した。

「みんな、音楽聴いたり、スマホいじってんに、あんただけだよ!ゼクシィ読みながらウンウン頷いているのは」


バチッ!


グハッ。

和田は大塚にビンタされた。

「暴力反対!大塚のヘアスタイル、王様のレストランの千石さんじゃん。ダッセー」


ドゴッ!


ハベラッ!

大塚は和田の顔に一発お見舞いした。

「お前に貸したマンガ、1ヶ月経つのにいい加減、返せよ!」

「友達に貸したゃった」

「何だとー、ブス。回収出来なかったら、弁償な!」

「はい」


大塚が教室に入ると、数名が集まり、『被害者友の会』の仲間に入れてくれと言う。

大塚は、

「打倒、3組だよ!特進クラスに勝つために、初期メンバーが教壇に立つんだけど、やる気ある?」

全員が打倒3組を口にする。3組に入れば大学進学は安泰なのだが。


大塚は昼休み時間、ゼクシィを読んでいた。

そこへ、いずみがやってくる。

「大塚君、恥ずかしくないの?」

「何が?」

「みんなに噂されてるのに。私なんかできちゃった結婚するの?って言われたよ。まだ、手しか繋いでないのに」

「けっ、短絡的なやつらだぜっ!」

「大塚君の被害者友の会の授業聴きたいな」

「え~、1回だけだよ!今日は世界史、僕の出番」

「お手並み拝見」

「いずみは、地理だか分からないと思うよ」


放課後

「え~、今日の世界史は宗教ごとの神殿をおさらい。マニ教はポタラ宮、イスラム教はカーバ神殿、……」

「大塚君、ゾロアスター教の聖典は」

「聖典はアベスター」

授業は90分つづいた。

あしたは、前田君が数学を教える事を確認して終了した。


いずみは、『被害者友の会』のメンバーが特進クラス以上に真剣な眼差しで授業聴いていることに驚いた。

来年のクラス編成で、大塚が特進クラスに入ってくることを確信した。

実際、このメンバーの半分が入れ替わるのはまだ、誰も知らない。

大塚はいずみと手を繋いでバスセンターに向かった。

2人は無言だった。仲のいいカップルだが、勉強ではライバルなのだ。

無言でトリコロールへ生き、パイシューを買いベンチで食べていると、大塚はいずみに、

「結婚式は海外だからね」

「うん」

「プロバンスのぶどう畑の丘の上の教会で」

「うん」

パイシューは人の心を和ませる力があるのだ。








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