エピローグ

 その後、村人たちは決起し、ゾンビに立ち向かう。村長ジャックも兵器を意のままに操縦し、敵を打ち倒した。結果的に多くのけが人は出たが奇跡的に死者はいなかった。


 村は貴族と村長により統制が戻り、反乱を企てたヘック一同はつかまり、牢屋へ閉じ込められた。その混乱のうちに、ロークゥ一同は別の行動をしていた。


アーメィ『ロークゥ、大丈夫?』

アド  『大丈夫、大分“いい”マナをもらったよ』

ロークゥ『ええ、最後にあなたたちを頼ってお願いがあります、“元凶”を片付けましょう、“光明の教会”に引き渡すまでこの村に隔離をします、今度の事は明らかな独断で行われた個人の反乱、きっと“影の教会”も理解し、大した問題にはなりえないでしょう』

アド  『問題があれば引き渡すだろう、いずれにせよ僕らの出る幕ではない』

ロークゥ『ええ、まあそれも“捕まえた後の話”ですが』

 アーメィはクスクスと笑う。一同は馬をかり、それぞれがそれぞれの馬にまたがり、会話を交わしていた。

アーメィ『それって、難しいことじゃないわ』

 アーメィが、背筋をピンとはり、目の前に逃げ惑う一つの影にむけて、そのマントに照準を合わせた。瞬間、矢がそれを射抜いて、勢いよく地面につきささり、標的は行動を鈍らせた。

 『くそう、くそくそ、早く、なんで矢が、どこから……逃げないと、皇帝からもあの“化け物”たちからも』


 アドが手を伸ばした、その先で紋章が浮き上がり、手は触手に変わり、矢をはねのける手伝いをする。やがて、その縮こまりいくらも弱そうになっている人間を持ち上げた。その間ロークゥは馬をのり、件の薬のようなものを噛み、飲み込んだ。

黒魔術師 『あ、ありがとう、って……』

アド   『だれが化け物だって?』

黒魔術師 『ひ、ひい……』

 それからは一瞬だった、人目がないことを確認したロークゥが、片手を天にのばすと、その影が数倍にふくれあがり、彼をつかみ、地面にたたき落とす。

黒魔術師 『ぐ……ぐああ!!お、おのれ』

ロークゥ 『あんたの単独ということでいいのね?』

 黒魔術師は、降参したように、頭をたてにぶんぶんと降った。

黒魔術師 『ゆ、許してくれ!!』

ロークゥ 『許す許さないじゃないの、反省してるかそうじゃないかよ、反省しないのなら』

黒魔術師 『ぐ、ぐわああ!!』

 ロークゥの伸びた手の影は、彼を地面に埋め込むほどの強さで押しつぶした。

黒魔術師 『必ず、必ず約束する、いう通りにする、でなければ殺してもかまわない、だから』

ロークゥ 『いったわね??』

黒魔術師 『ヒィッ、でも、なんであんたは、あんたはそんなものを飼いならしていて“無事”なんだ!!』

 黒魔術師は思わず口をふさいだ、口をついて出た言葉をかきけすように、しかしロークゥはそんなことを気にも留めず、ふらふらとあるき、背を向けながら答えた。

ロークゥ『難しい事じゃないわ、私は私を信じ切ってなどいないもの、ただ私の代わりに、私を覚えている誰かが、きっと私を正してくれる、そう信じているだけよ』

 アドとアーメィはロークゥの後ろでがっしりと並び、その様子を眺めているのだった。


 数日後……やがて村に平和が訪れた。その日丁度朝、光明の教会に黒魔術師が引き渡された。その日までロークゥたちは村にとどまり、英雄のように扱われた。村は、しばらくアズサが村長代理の役割を担いやがてジャック村長の統治に戻るだろうという話だった。ロークゥ一行は、皆を驚かせまいと、ジャックやロジー、親しくなったアズサや老婆デミドにだけ別れをつげ、ひっそりと旅立っていった。


 彼らが旅立ったあと、ジャックとアズサが向き合い、村長宅でひそひそ話をしている。

アズサ 『ねえ、いう事ないの?』

ジャック『え?だから、いつもありがとうって』

アズサ 『そうじゃなくて、その……気づいてないとでも?』

ジャック『それって、まさか……』

 ジャックは、男を見せるときだと思った。というのも、ここ数日すでにアーメィにからかわれて、二人の関係を進めるように後押しされていたのだった。

ジャック『彼らが残したものは大きいな、本当に……』

アズサ 『それってあの兵器のこと?』

ジャック『いや、僕もしっぽが生えてしまったし……これでなかなかこの村を出る事もできないだろう』

アズサ 『クスクス』

 クスクスと笑うアズサの腰にてをのばし、頬に手を当て、ジャックはまっすぐと彼女とみつめた。

ジャック『君が、君が好きだ、ずっと一緒にいたい』

アズサ 『……』

 アズサはもったいぶるようにジャックの手をふりほどきくるくるとその場でまわった。スカートがひらひらとゆれ、うーんと悩ましい声をあげた。

アズサ 『でも、私たち兄妹なのよ、ずっと秘密だったけれど……それでもいいなら』

 ジャックは、唖然として口をぽかんとあけた。

ジャック『それって、まさか、だから父は……いくら血のつながりが大事な村とはいえ、そんなまさか』

 アズサはしばらく真剣なかおをしてジャックをみていたが、しばらくするとプッと空気が抜けた風船のように噴出した。

 『あははははは!!』

 腹を抱えて笑うアズサ。

 『ちょ、ちょっとどういう事?嘘なの?』

 アズサは、しばらくわらっていたがやがて村長室の椅子に腰かけ、誤りながらこういった。

 『ごめんごめん、私のウソ、もう操れるようになったみたい、緊張すると嘘をついてしまうクセも、もう大丈夫、そんなことじゃ大事な人を守れないってわかったから』

 そういうと二人はキスをして、今後の展望を語りあうのだった。


 ロークゥ一行は、一匹の馬をもらい、その馬に荷を載せて旅路をいく。

ロークゥ『これからどうしましょう』

アド  『あなたにまかせます、ご一緒すると決めていますから』

アーメイ『行きたいところへいきましょう、どうせどこへもいけない私たちだし』

ロークゥ『ええ、それをいうなら、“どこへでもいける私たち”ですけれど』

 そういってロークゥは、馬をひき先導しながら、二人を振り返りわらったのだった。

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寓話使いとマナニア放浪・旅物語。 グカルチ @yumieimaru

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