第16話 諸葛亮孔明と宣戦布告

1565年 2月1日

十六夜月と上杉謙信御一行は旅を開始しようとしていた、目的地もあてもなくただ……ぶらりくらりの気まま旅。

そうして日本を見るのが目的だった。


「薬の印籠よし、水袋よし」

「保存食よし、寝袋よし」

「武器に酒の瓢箪っと」

「財布はきっちり預かります!」

「……行く?」

「いくかー!」


こうして手持ち200貫での旅が始まったのである。

資金は街についたら一定期間いる事で忍者が届ける仕組みになっていた。


富山の町


「ふっじっさーん!」

「綺麗でしたねぇ」

「宿屋が高い……」

「エリス君?」

「なんで宿屋が高いんですかー!」

「嬢ちゃん仕方ないだろ、ここらは足下を見てんだろ」

「だーとーしーてーもー!」

「……見知らぬ異邦の地で路銀もない、ここまでなんでしょうか?」


その姿、まさしく諸葛亮孔明であった。

何故ここに?名将がいたのは間違いなかった。


「……なんで君いるの?」

「おや?貴方は誰ですか?」

「(しまった!名前考えてない!偽名どうすっか!?)」

「おいあんた孔明だろ!?」

「おや?まさか甘寧さんですか?」

「なんでお前がこんなところいんだよ!?」

「ちょっとバイトしてくる」

「太史慈さん?」

「私まで行って混乱させるのはまずいから」


とにかく諸葛亮孔明をつれて、茶屋に行くのだった。


「ふう、団子とやらがおいしいですね。あったかい麦茶も実に染み渡る」

「醤油団子で良かったんすか?」

「大丈夫ですよ、出来ればおかわりを頂きたいですが」

「あん団子あまーい!」

「米から作ってんのか、うめぇな……」

「何故諸葛亮孔明がここに?」

「事の経緯は私が病没した所からですね、あの後私は目覚めたらこの世界でいう浪人とやらになってました。なので元よりあった知識を活かして子供達の先生をやってましたが……学校が本願寺に破壊されましてね、仕事を失ったんですよ。そこからあてもなくぶらぶら……今に至ります。本願寺は滅び、幕府は今は堺になった事でどうなるかは私にも分かりませんがね」

「ならうちくる?旅の資金はあるし」

「良いのですか?」

「まあ、中華も日本も今のところ平和だし」

「私も良いですよ?旅はたくさんいた方が」

「まっ、俺もいいぜ」

「皆さまありがとうございます」

「甘いあん団子ー!」

「エリス、この砂糖も量産されるからじきにたくさん安く食えるぞ」

「わーい!」

「まぁ1年後だがな!」


十六夜月はヨーロッパの砂糖生成機の設計図を買っており、それを大量に作り国内砂糖を作る計画を立てていた。

サトウキビは南日本と西日本で既に試作的だが作られており、これを上手く精製すればかなりの砂糖が賄える寸法だった。

同時に木更津(今で言う千葉県)の町では醤油工房が十六夜月の手ではなく独自に作られており、江戸前醤油と砂糖が組み合わさったら武士達にも喜ぶと思われた。


「さぁて、団子食ったし金沢城でも見る?」

「あ!気になります!」

「城ですか、気にはなりますね」

「俺も気にはなるが、酒が尽きちまった」

「飲みすぎです!」

「バイトしてきた、はい10貫」

「なーにした、太史慈」

「酒場の喧嘩仲裁」

「なーる」


こいつさては自由人だな?と思ったそこのあなた、はい、自由人ではないです。

多分、おそらく、きっと。


「団子代はバイト代から支払う」

「釣り銭8貫以上あるんだが?」

「君ら1貫食べるって何頼んだよ?」

「酒……」

「甘寧君、あとで説教」

「すまねぇ……瓢箪に酒入れなきゃ収まらねぇんだわ……」

「この酒飲みが!」


そんなこんながありまして、旅籠はたご(飯つきの泊まり場)を探す事1時間。

見つけた旅籠はなんやら主人が悩みに悩んでた。


「どったの主人」

「いやぁうちは昔ながらの食事を売りにしてるんだがね、最近の旅人達はなんやら新しい味に興味を持ってうちの売り上げがあかったりなんだよ」

「泊まるぞ、皆の衆」

「(あっ十六夜月さんこれは悪い顔してる)」

「大将、酒はあるな?」

「もちろんです、旅籠ですから」


こうして、十六夜月御一行はこの旅籠へと泊まったのだった。


「質素倹約、いい食事ではないか」

「玄米に味噌汁、漬物は沢庵ですか」

「ぜんっぜん豪華、俺らの時代に比べると米が食えるだけ」

「私には少し多いかもしれませんね」

「うーん、多いかも」

「ご飯と味噌汁はおかわりがありますからね?」

「「「……」」」

「よし食うぜ!」

「満腹にはなるな」

「料金が怖い……」


と、食事をしながらエリスは話題を振った。


「今は金沢じゃないですか?次はどこに?」

「まずは堺を目指す、場合によっては旅は中止」

「どうした?大将?」

「嫌な予感がする……!」

「この状態に入った十六夜月さんは何か起こります、今はここで待機するのもありかと」

「すまん、1週間だけ待機させてくれ。その間は自由にしてくれて構わん」


そう言って十六夜月は玄米2杯と味噌汁2杯を食べて外に出るのだった。


金沢県金沢城前


「何奴だ?」

「十六夜月だ、通せ」

「何故!?旅に出た筈では!?」

「出てたんだが嫌な予感がした、だからここに来た」

「なら急いで天守閣に来てください!」


そう足軽に言われ十六夜月は急いで天守閣に向かった


「何があった!」

「十六夜月さん!ヤバイです!韓国ごと高句麗が宣戦布告をしてきました!」

「内容は!」

「完全に平和的解決は無理です!旅は中止ですよ!今すぐ春日山城に戻ってください!」

「リーネ、水軍は勝てるな?」

「ええ、今の水軍は世界一といっても過言ではありません」

「亀甲船は?」

「何すかそれ?」


十六夜月はこの反応を見て悪寒を感じた。

史実日本ではこの亀甲船を破れなかったために負けたのだ。

更に明の支援も考えられるためかこの亀甲船を破らなければ間違いなく負けは必須、史実をなぞるのだった。


「リーネ、火薬をつめたイカダを大量に作れ」

「焼却いかだなんて作ってどうするんですか、人名犠牲にしなきゃ勝てないんすか?」

「亀甲船だけはカノン砲でも貫けないかも知れねぇんだよ!」

「……わかりました、最終手段として作らせます」

「クソッタレ!」


そういって十六夜月は旅籠に戻ろうとしたら、上杉謙信達がいた。

おそらく話は全部聞かれてただろう。


「宣戦布告ですか、いつ戦います?」

「せっかくの旅がー!」

「やるならさっさとおっ始めて早く旅の護衛に戻らせてもらうぞ」

「私は孫策様達に援軍を送らないように出来るか頼み込んで見る」

「私の策、団子の恩として授けましょう」

「すまん……」


こうして一行は急いで春日山城に戻り、戦争に備えるのだった。


春日山城 1565年 6月


「リーネ!出来たか!」

「非人道兵器だから本当の最終手段に使ってくださいよ!」


大型焼却いかだ

火薬で爆発し特攻する船である、早い話が特攻兵器だ。いかだと名がついてるのはこんなのは船以下の代物だという事で十六夜月がそう名付けた。

こんなものに誰も乗りたがる人はおらず、大体乗るのは罪人とか借金のかたで乗らされる者だった。

十六夜月もこんなもんは作りたくはなかったが作らねば亀甲船は突破はできないと判断したのだ。

史実をなぞらないために、少しの犠牲なら厭わない覚悟と歴史書に暴君としてのる危険を冒してまで。


「……今動かせる兵は」

「20万……ですかね」

「月光会水軍、15万が最大限です。キャロラインさん達が帰ったのはかなり響いてます」

「35万で勝てるか?孔明」

「無理です、あそこは数だけは多いです。明の支援が入ったら200万の数で圧倒されます」

「どうすりゃいいんだよ……」

「兵器をみましたが技術では勝ってます、しかしそれでも人海には敵いません」

「不知火、入るぞ」

「あ!孔明さま!」

「黄月英!?何故!?」


そうだった黄月英うち保護してるんだった。

すっかり忘れてたよ本当!

感動の再会だな!戦争じゃなきゃ!


「……黄月英の保護のお礼に本気を出してこの亀甲船と高句麗の戦を勝たせましょう」

「どうすっぺ」

「亀甲船?なんじゃそりゃ?」

「木の船の上に全部鉄板貼って物理的耐久が高い船、カノン砲でも焼却いかだでも壊せるかはマジ不安」

「すまん、それはうちらの天敵や」

「だろ?」


実際、リボルバーライフルでは貫けずカノン砲でも貫けないとなると手詰まりな所はあった。

これをなんとかしないとまず勝ち目はなかった。


「てか、鉄の船なんて進行速度は遅いやろ?」

「風の力あれば通常の半分だがここまでこれるとしたら?人力混ざって?」

「……やべぇな、うちらの頭ではどうしようもないぞ?五十六提督の設計図漁る」

「カブキさんもいない、時間はないと思え」


そう言って十六夜月はとある所へと向かった。


月光会 秘密工房


そこには秘密裏に作られて開発していた物があった。

4年をかけて作られた十六夜月の手だけで作られた最終決戦兵器が。


「出来たか!」

「はい!」


それは、とあるゲームを再現したゲーム内だけの武器と思われた。

しかし、今までの山本五十六提督の設計図と十六夜月の武器開発経験に加え更には黄月英の兵器開発能力を持ってしてやっとのこと2500本完成したのだ。

使うことはないとは思われていた……しかし、この2500本の新兵器が最後の頼みだった。


「出来たか!インペリアルオルデン!」


インペリアルオルデン

わかる人にはわかる名前であろう、そう。十六夜月は銃槍ことガンランスを作っていたのだ!

厚さ鉄板7.5cmまでなら貫通する竜杭砲に砲撃機能搭載更には竜撃砲まで搭載した完全再現品だった。


「こんな重くて機動性がない兵使えるんですか?」

「今すぐ訓練させろ、高句麗海上戦の要だ。俺の分のインペリアルオルデンはあるな?」

「勿論ですよ、負けないでくださいよ?」


こうして訓練すること2ヶ月

ついにガンランス部隊ごと銃槍部隊が出来上がった!


「敵襲!なんか鉄に覆われてる船!100隻!」

「銃槍部隊出撃!私も出る!」


こうして、インペリアルオルデンを担いだガンランス部隊は初陣を飾ることとなった。


1565年 8月5日 日本海


「近づいたら砲撃しろ!」

「船の操縦は任せてくださいや!」

「君ら次第だからな?」

「敵船!近接戦来ます!」


近づいてきたと同時に十六夜月はガンランスを展開、船がぶつかったと同時に竜杭砲を亀甲船の装甲を貫通して穴を開けた!

同時に亀甲船から急いで離脱をして一撃離脱をした!

すると15秒後に亀甲船が爆発をして沈んでいくではないか!

これこそが最終兵器とも言える竜杭砲だった!

原理はパイルバンカーと同じで時限式で爆発する杭を放ち一定時間後に大爆発をするという仕組みだ。

更に火薬の量的に小型船舶なら一撃で粉砕できる火力だった。

難点はやはり重い事による機動力不足と弾薬があまり持てない事であった。

特に竜撃砲にもなると多大なる費用とメンテナンス時間がかかるため、基本的には使えなかった。


「おー、各地で亀甲船が沈んでいく」

「勝ちましたな」

「第二作戦移行!首輪つきと不知火とステラが引き継ぐ!」


高句麗港(韓国名仁川)


「首輪つき、武田の騎馬隊突っ込むぞ!」

「首輪つき!遅れるなよ!」

「(戦果稼ぎたくねぇ!)」

「ステラ隊、『ポムケッチ』艦隊攻撃!」

「不知火海軍隊、蹂躙しろ」


高句麗港を制圧する算段はこうだ。

ステラ隊が湾岸射撃で制圧、その後武田と首輪つきの騎馬隊が蹂躙して最後に港町を不知火の海軍隊が占領という形だった。

うまくいかなきゃ、歴史の汚点だった。

そのためにオーバーテクノロジーにロストテクノロジーまで頼ったのだ。


この制圧戦は2週間かかり、月光会0.5の損失(約5000の損失)に対して仁川は完全制圧され占領された。

そして第三段階に移行した。


「高句麗人民を皆殺しにしろ!」

「あっちから喧嘩売ったんだ!それぐらいの覚悟できてんだろ!」

「邪魔な物は焼き払ってください、彼らを完全に絶滅させます!」


韓国人の絶滅

これが真の目的だった。

完全なまでの絶滅をさせ、後世の悩みのタネを消すため。

十六夜月は完全にブチ切れていた。

未来であった事を全て消すために。


「えっ十六夜君殺戮指示したの!?」


視点は現代に


「……うっわぁ、勝った人が歴史を作るとは言うがマジで韓国滅ぼしたか」

「韓国とやらは私達にらわかりませんが、今は大東亜帝国の領土ですよ?」

「……なんでそんな事したの?」

「いや、十六夜月さんの言いたいことはわかる。だが殺戮までいくかー……」

「なんでこれで後世の歴史家達は名君って言うの?」

「十六夜月さんは名君ではなく賢君だったそうです、今の歴史家の評価じゃ」

「え?何で?」


そう言うと十六夜蒼月はあるものを取り出した。

これは、ブルーレイディスクだ。


「まずはこれを見ましょう」

「「「?」」」

「大東亜帝国!昔の人たちはどんな生活をしてたかを見てみよう!」


そう言うとブルーレイディスクは教育番組みたいな感じに始まった。


「何で高句麗は滅んだの?」

「十六夜月がいる中で奇襲をしたからだよー?」

「その後の生活はー?」

「見違えるように変わったわよ?下水道は作られて植林は行われて緑が増え、更には日本人だけが住むようになってからは中国騒乱の時に大活躍したのよ?」

「へー!絶滅は悪いけどちゃんと跡地は利用したんだね!」

「何これ」

「こんな感じだったそうですよ?高句麗」

「いや、あもこら現場見てないからわからんけど」


現代は現代で謎があるのだった。

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