第5話 桶狭間の戦い

1560年 4月12日夜 出石の町にて


「うめぇ!里芋うめぇ!」

「ごはんおいしい!」

「うーんおいしい!」


あ、今回から視点は十六夜月に戻るよ。

狂言回しは基本一人でいい!

と言うわけで座とか道場とか町民一同が全員月光会に協力したところからスタートだよ。


「忍者だからお酒もあんま食べれないのも辛いですね……」

「君、イズ、誰?」

「申し遅れました軒猿の里の中忍、井ノ頭隼いのがしらはやぶさと言います。」

「十六夜さんならわかるよね?日向リノア」

「ゼルです、十六夜さんとはあんま絡みないけど」

「じゃあこっちも紹介だな、来なさい……隼人」


そういって私は隼人を連れてきたよ。


「初めまして、現代人ではありませんが月光会に入らせてもらいました。名前と苗字を貰い苗字を十六夜で名を隼人と名乗らせて貰ってます」

「こいつは素質があるし、弁舌と算術ができるから雇った」

「技術とかをみてわかりました、この人達なら間違いなくいい風にしてくれると」

「酒うっめ……」

「カブキさん、飲んでいいぞ!好きなだけ!」

「やっばこれは来るわ」


と、まあこんな感じに無傷防衛成功の宴をしてたよ。

長尾景虎ちゃんもいるよ!

ついでにいうなら多分だが宇佐美定満も。


「これが月光会の実力……」

「殿、やはり完全に支配下に置いた方が……」

「ん?同盟なら組むよ?まあまずは銃刀が出来てからだが」

「あの可愛い子が上杉の!?十六夜はんうせやろ!?」

「マジだよ、長尾景虎女説はあったが実物みたらマジ驚いたわ」

「うちはどうするん?十六夜さん?」

「オリニキはこれからは上杉家で軍師見習いだ、宇佐美定満さんそれでいいですか?」

「なぜ我の名前を!?」

「月光会の調査能力を見くびっては困る」

「……いいだろう、使えなきゃ戻せばいいだけだ」

「おねがいしまーす」


「オリニキはこれで確定と、スギネコ君も行くかい?」

「いく、可愛い女の子なら仕えたい」

「なら私の姉さんの綾姫の護衛を」

「えっ姉さんいたん!?」

「ええ居ますが?」


綾姫 上杉謙信の腹違いの姉で史実だとお家騒動とか色々巻き込まれる人ではある。

しかし学会にも情報が少なく、あまり詳しい事はわからないのが本音ではある。

やばい奴じゃなきゃいいのだが……。


「ほんなら行くわ、越後はどこけん?」

「新潟」

「米所やね」

「しかし、人数が足りない……」

「ああ……軍資金が溶ける……」


リーネ君の目が絶望目、仕方あるまい安定収入は入ったんだから必要経費だ。


「十六夜月さん、安定収入どれぐらいですか……?」

「わからん、規模を投資したら増えるが今は小さいからな」

「大した額じゃないと……」

「たーだ、とんでもない額投資したらなんか良いもん出たような記憶があんだよなー……この辺りって」

「具体的には?」

「220000貫ぐらい?」

「そんな天文的額どう稼げと?」

「鉄とか出るからさ、なーんか投資したら」

「やるなら自力で稼いでくださいね?」

「ひっで」


まぁ、至極真っ当な意見である。

ついでに雑魚兵士相手には30貫は出さないよ?指揮官候補生だけだ。

後は適正見せて雑兵の食事はたまには管理する。それと忍者適正とか海賊適正とか。


「あーなんか体が動かんぞ?」

「カブキさん前の体より健康になったからといって飲みすぎはいかんぞ」

「いや、飲みすぎてはないねん」

「顔デロンデロンにしてよーいうたわ」


カブキマスク、完全に出来上がり。

上杉謙信も負けじとちびちび静かに飲んでる。

こんな所にいられるかと、十六夜月外に出た。


「……」


十六夜月は考えていた、これでよかったのかと。

未来の現世なら間違いなく大量殺人者だ。

しかし、そうでもしなきゃ守れないものがあった。

この選択で本当に良かったのかと。

……太陽が見えて明るくなってきた、若くなったとはいえ相当の無茶をしてるのは確かだ。

そんな中海を見ていると、私十六夜月はやばい光景を見た。

竜巻が発生しているのである!

私は急いで店に戻っていった!


「やべーぞ!竜巻が発生した!現代人が来てるかもしれん!」

「キャロル操縦できるよ!」

「あもこも手伝う!」

「リーネ海上自衛隊候補生です!いけます!」

「小船かりるぞ!急げ!」


そうして15分、竜巻のあった場所に急いだ!

流石に竜巻に飛ばされてからじゃ長くは持たない!


「ついたか!とにかく急げ!」

「キャロル幅寄せする!」

「あもこ網引っ張る!」


この時、ここ以外にも竜巻は発生しており今回の竜巻で十六夜月達が助けられた現代人は20%にも満たなかったという。

助けられなかった現代人は、海の中で溺れ死ぬかもしくは体力の低下などでそのまま死んでいったと言う。十六夜月達が関わらずに竜巻に飲み込まれたものは大体は悲惨な目にあった。

不幸中の幸いだったのは十六夜月達がその情報を後世死ぬまで分からなかったことだろう。


「……何人助かった?」

「6人ですね……」

「助かった方か……」

「これ以外にも竜巻がなかったらいいね……」

「ないと信じたいよ?」

「あもこ達で出来ることはやったもんね……」

「帰りましょう、私達には生きてやり遂げねばいけません」


1560年 4月13日明朝 出石の町酒場


「生きてる、よかったが……」

「……十六夜さん!?」

「知り合いがいて助かったと言うべきか……?」

「死ぬかと思った」

「助かったんだな……」

「助かった……」

「感謝しかないわ……」

「甘造君とスラァとステラ君はわかる、だが後3人がわからん……」

「あ、日光です。ニコ生主でいうなら」

「なら私がわかるはず、十六夜月なり」

「十六夜さんかー、ねるPなんだな」

「ねるPまで……日光さんも来たのに」

「お、如月氏かゾ?」

「ハールさん!?」

「ハールだゾ」

「如月氏モグモグ」

「もこの字!」

「如月さんも来たか……」

「リノアさんか……?」


再開を喜べる空気ではなかった。

流石に血生臭い現場はなかったが……血の匂いはしてたからだ。

そして、全てここがどこだかの説明をして勧誘した。


「行く当てねーだろ?うちこい」

「行くしかないんだな、世話になります」

「おっ、戦か?」

「俺ら役立つ?」

「俺ら一般人よ?」

「役に立つ立たないじゃなく、協力しなきゃ生きていけない時代ですからね……」


私十六夜月はみんながいるのを確認してから、高らかに叫び宣言した!


「もはやこうなりゃ俺たちに選択肢はない!上杉につく!」

「「「!?」」」

「後は長尾景虎の許可のみだ!」

「……ここまで御膳立てしてもらって断れると思います?皆さんを特殊武士として認めます、間違いなく上杉家にとって有益ですからね」


現代の年号で言う1560年4月13日

ここに月光会と上杉家の正式な同盟支援が結ばれた。

これにより後世の歴史に大きなターニングポイントとなる事になった。

後世の歴史家達はこの者達の正体を探ったが、現代人なため身元も不明なため歴史家達はさらに頭を悩ませる結果となった。

しかし、この者達の恐ろしい所はまだ、完全には見せていなかったのである。


そして、現代で言う1560年6月12日

ついに、歴史が動き始めたのである。


「大変です!織田軍が!」

「……作業してる奴らの手を止めさせろ」

「はい!」


と、言うわけで十六夜さんみんな集合させたよ。多分アレだね!


「織田軍が……桶狭間にて今川軍を撃破しました!」

「動き始めたか!織田信長!」

「月ちゃん、そんなに織田信長ってやばいの?」

「上杉家でも勝てるか怪しい、私達の介入なしなら」

「……勝てるの?キャロル達?」

「工房長不知火!銃刀は!」

「バッチリ1000本仕上げたぞ!」

「よし!納品できるな!開発に戻っていいぞ!」

「あいよー、多分次の開発はリボルバーになりそう」

「時代吹っ飛ぶなおい」

「提督から貰ったコルトのお陰や」


やはり、オーバーテクノロジーの遺産はでかかった。

しかし、今ある設計図もいずれは限界がくる。

私達の寿命もある……。

開発とその費用はねるじぇら(ねるPと私が言ってた人)さんとキャロルとリーネと出石の町の収入で賄えるようになってきた。

最近きた如月氏のお陰で畑と田んぼも増えてる。上杉家も安泰にはなってはいる。

甘造君とステラ君は今のところは仕事がないから開発援護だ。

スラァ(スライド氏)は首輪つき氏と一緒に護衛、日光氏は出石の町で武芸を極めてる。

オリニキとスギネコ氏は上杉家で兵の訓練、いい感じに訓練がいけてるみたいだ。

鍛冶場は甘乃あもこ氏、ハール氏、カブキマスク氏を副工房長として工房長不知火焔氏での現地民を雇っての教育と量産が整ってきた。私十六夜月は鍛冶場も出来るため1ヶ月は教える事に専念していた。

忍者衆の井ノ頭隼、ゼル氏、日向リノア氏は情報を張り巡らせた。

歴史が狂った時にすぐに分かるようにするためだ。

こんな感じに2ヶ月を過ごしていた。

ノルマは達成したし、安泰かと思った矢先での桶狭間の戦い。

まさしく、安寧などない戦国時代であった。

隼人は今は鉄砲の練習をしてもらっている。

これからの時代、鉄砲が物を言う。

だから鉄砲を扱えなきゃ生き残れないから修行してもらってるのだ。

ついでに月光会の宣伝と。


「さて、次の開発設計図を読むしかないか……」

「読めるんか?不知火さんしか読めないんじゃ?」

「私しか読めんやつしかあるかもしれんし」

「うちは銃ならわかるが近接はからっきしやぞ」

「つーわけだ」


私はとりあえず目の前にある1枚の設計図を見てみた。

船の上での野菜管理、水問題、火の使い方……これは恐らくだが新型船だろう。

大航海時代クラスの船なのはわかるが……?


「リーネ!」

「なんですかってこれ船の設計図ですね、どれどれ……バーケンティン型ですか」

「わかるのか?」

「ええ、大航海時代は好きなのでゲームと親に頼んで1本マスト船を練習して操縦をやりこむぐらいには」


あっこの人ガチ勢だ。

なら海外貿易筆頭だ。

しかし、金が足りないだろうこの船を作るなら。


「リーネ、バーケンティン一隻どれぐらいかかりそう?」

「かなりかかりますが……5隻も作れば2年で元は取れますね」

「理由は?」

「積載が化け物なんですよ、この船」

「マジかよ」

「一応砲撃戦も出来ますし」

「まぁ、作る価値はあると」


問題は今水軍衆に繋がりがないことだった。

上杉家に黙って作るわけにもいかないし、そもそも日本海を渡れる船がない。冬の日本海なんて悲惨も悲惨だ。


「しょうがないなあ、ブリガンティンにします?一隻あたり2000貫でいけますよ?」

「何年かかる?」

「設計図があります、1年あればフルペースで50隻」

「許可する」

「わぁい!私も提督だ!」


海外貿易を考えると致し方ない犠牲金だ、最悪上杉家に頼む。

金稼ぎ確定だ、とてもつらい。


「工房長たちを、金稼ぎ50%と開発50%シフトにする」

「わかりました!何を作るんですか?」

「銃刀の量産とリボルバーの開発、それとライフル開発を」

「伝えときますね、開発には誰を?」

「不知火さんと甘造君とステラ君を、後3人は銃刀とこの設計図に合わせたものを木材と鉄を使って作ってくれ」

「何ですかこれ?」

「米の収穫を増やしてくれるチートアイテム、今の時代にはないが構造が単純な分作れたら量産出来るはずだ」

「わかりました、では行ってきますね」


設計図はまだまだあるがいつまで優位に立てるか……。

後これを作ると未亡人に殺される未来が見える……後家壊し?いや後家倒しとの異名があるぐらいには収入を奪うのだ。

大を取るか小を取るか……まさにジレンマだ。


「十六夜さんよ、銃刀の副産物が出来たゾ」

「何や?」

「ソケット差し込み式銃刀」

「時代逆行してない?」

「これと、この火薬を使うとな……」

「ガンランスにでもする気か?」

「まぁ、この弾丸が超小粒で拡散するんよ。だから掃除してたら2分かかってな……」

「で、もう銃口使わんなら薙刀類にしちまえで作ったと」

「せやで、どう?」

「高値はつかんが勝手はくれるだろう」

「やったぜ」

「火薬と弾丸がセットだなこりゃ」


着実に、着実に歴史は狂い始めていた。


1560年 6月21日 月光会鍛冶場にて


「そうか、あいわかった」

「月ちゃんどしたの?」

「あもこ氏、アレはどう?」

「全然だめ!」

「後2ヶ月で間に合うか……?」

「なんかうまく脱穀でつまづくんだって!」

「実地で一発勝負するしかないか…」


例のアレ、かなり遅れてます。

開発チームはやっと弾丸が出来たでかなりやばいです。

さっきの報告は長曾我部元親が初陣したの報告であり、本格的に時間がなくなりつつあることを示していた。

上杉謙信に早く近代兵器を送らねばやばいし、資金もやばい。


「金稼いでくる、上杉謙信にも許可とって」

「いってらっしゃーい!お土産もね!」


上杉家 春日山城


「うーん、たしかに銃刀は私達の所で独占したいんですよね」

「ダメかあ」

「申し訳ないです……ただ、良いこともありますよ?」

「何?」

「水軍衆、作って良いですよ?」

「マジかよ!?海外貿易は!」

「許可します、技術は持ち帰ってきてくださいね?」

「して、月光会はどこと交易を?」

「私達にはわかりません、任せます」

「なら上杉家はまずイスパニアかオランダを一時的に交易を、ポルトガルは上杉家大筒使います?」

「大筒高くて使いにくいですし、ここら辺鍛冶屋があまりないんですよね……」

「大筒を使うのであればポルトガルはいい技術はあるでしょう」

「大筒は最悪捨てましょう、いすぱにあ?とおらんだ?とやらで」

「まぁ、兵の防御を高めたいだけでやるならポルトガルもありなんすけとね」

「(彼が何いってるのかさっぱりわからない……)」

「まあ、悪いようにはしないさ」

「任せました、後収益の5割は上杉家に納める事」

「技術と5割くれと、まあうちの技術より

作りやすいですしそんぐらいなら」

「では少し茶を飲みませんか?」

「早船でいいなり」

「南蛮からいい烏龍茶が入ったんですよ、茶菓子は持ってきてますか?」

「今回は金平糖を」

「甘いですか?」

「ええ、甘いですよ」


1560年の6月28日

月光会、水軍衆の設立を開始。

規模としてはあまりに小さい規模予定だったが、上杉家の支援もあり中型艦の大量生産に至る事となった。

その数、ブリガンティン型中型船300隻にもなる恐ろしい艦隊になるのは1年後の見込みだった。

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