第2話 月光会設立

「……」

「やいやい荷物と金を出せ!」

「……」


どうも、十六夜月です。絶賛海賊に襲われてますが元気です。

弾薬は残り18発、無駄遣いもできません。

残り期日は15日少々だからいいものの……。


「モグモグ」

「用心棒の先生やっちまってくだせぇ!」

「えー」


何やらもめてるのは確かみたいだ。

まぁ今の私にも関係あることだし話だけでも聞いてみよう。


「用心棒の先生は如何程に」

「あそこで握り飯を食べてますよ」

「モグモグ」

「貴様は……あの時の!?上等だ、決着をつけさせて貰う!」

「貴様もレイヴンか……」

「間違いねぇ、首輪つき氏だ」

「そんな貴方は十六夜月氏」


知り合い確保、しかし何ができるのか?

用心棒の先生って事は武力は高そうだが……。


「えい」


何も知らないうちに海賊の片腕が吹っ飛んで海に落ちていた。


「首輪つき氏、なぜそんな技能を使える」

「吉岡流を学べばできたよ」

「すげー!」

「ねぇ!あもこもやりたい!この作りたてのなんたら銃で!」


銃の音は火縄銃より小さく、そしてなんか見覚えのある形だった。

それどころか拳銃だった。

どこをどう見てもコルトシングルアクションアーミーだった!

なんでんなもんがあんだよ!?


「首輪つき氏、現代人がいるぞ」

「うんどこをどう見ても武装が現代人だ」

「当たったよ!あもこ銃当たった!」

「そしてコルトシングルアクションアーミーはなんとしても欲しい」

「わかる」


コルトシングルアクションアーミー

本来は19世紀に作られるはずのオーパーツ。

何故あの人が持ってるかは知らないが……利用できるものは利用しなければ野望が無理だ。


「すいませーん、十六夜ですけど……」

「あっ!知らない人から話しかけられた!」

「貴方も竜巻によって吹っ飛んだ人ですかい?」

「うん!甘乃あもこだよ!」

「首輪つき氏、かなりやべーぞ」

「どうした十六夜氏」

「海賊が増え始めてきてる」


海賊の数は船から上陸してるからかもう10人はいた。

他の客は避難できたからあとは海賊を殺すか追っ払うだけだ。


「リロードまでに20秒、首輪つき氏守れるか?」

「数が数だからきつい」

「あもここれリロードわからない!」

「「……」」


絶望的な戦力差だ!

しかし乗り切らないと命はない。

覚悟を決め刀と銃を構えたその時だった。

海賊船にまた別の海賊船が衝突したのだった!


「は?」

「なんか楽しいことなってる!」

「なんやこれ……」


船は海賊と海賊同士の混戦になってどちらが味方かわからない!


「十六夜君生きてるー?」

「キャロラインさん!?何故ここに!?」

「納屋の人から海外貿易の練習がてら水軍にいったけどまさか実地戦闘になるなんてキャロルも思ってないよね」

「うわぁ、船が血みどろ」

「あもこでもわかるよ!これ大惨事だ!」

「ところで十六夜君、その二人誰?」

「現代人二人」

「へー、じゃあキャロルと同じように仕事先探すの?」

「考えたいけどさぁ……」


実際問題はあった。これから増える現代人の数に就寝と食事先の確保、仕事も金銭も考えないといけない。

私が城主になれば解決なのだがそうはいかない。


「キャロル的には十六夜君が銃か武器作って大名なればいいんじゃないかなって」

「それしかねーか」

「喋ってるとこ申し訳ないがこっちにも5人くる」

「あもこもうつー!」

「待ってキャロル刀なんて握った事ないんだけど!?」

「ええい!」


5人なら何とかなりたかった。

実際は護衛対象が増えて人数差がさらに増した。

そんな中の戦闘なのに乱戦だから銃は使えない。

私こと十六夜月は素手で戦うのだ。


「親方!大筒がぶち込まれそうです!」

「くっ!引きあげろ」


海賊達が引き上げていく、危機は去ったみたいだ。

しかし味方の海賊もボロボロになってた。


「キャロルも戦えるようにならないとなあ」

「ここまでのインファイトになると銃が使えないのも考えものだわ」

「……うっ!」


あもこ氏は余りに悲惨な現場を見て海の中に嘔吐した。

そりゃそうだ、普通ならそうなる。

キャロライン氏に首輪つき氏、それに私がおかしいのだ。


「……金だけ拾って海に葬儀するべ、キャロラインさんはやらんくていい。女性には辛かろう」

「あもこさんもこれは暫くダメやね」


こうして海に死体を丁重に葬儀する事1時間、葬儀を終えたらすぐ動き始めた。

そして無事、色々あって博多の街に4人揃ってついたのだった。


博多の街


「待ってキャロル南蛮屋敷いきたい!」

「あもこも南蛮屋敷いきたい!」

「あのー我ら仕事に来たんやが?」

「あー今日も下働き辛かったなー帰って蕎麦食べなきゃ……」

「「……」」


十六夜月と首輪つき氏は黙ってその男性を捕まえた!


「ライター助けて!お前ら2人に負けるわけないだろ!」

「抵抗しても無駄だ!」

「大人しくしろ!」

「ねぇあの二人は何をしてるの?」

「わっかんない!」

「やめろぉ!ナイスぅ!」


そう言って男性はフライパンを持ち出し首輪つき氏と十六夜月こと私を殴った!


「イッタアアアアアイ!」

「実際貴方達何者なんですか?」

「ハール氏モグモグ」

「ハール氏、私だ。十六夜月だ」

「なんだもこの字に十六夜さんか、知り合いいて良かったわ」


誤解が解けたところで一応何故こんな戦国時代にいるかとか、今ある状況においてお互いに整理しつつ長崎のある所に向かった。

残りの日にちは12日と余裕を持って行けたのは幸いだった。



「はぇー、天下統一ねぇ」

「金の稼ぎ方はなんとかなる、私を信じろ」

「そりゃいいんだけどさ、そこの女性二人は誰ゾ?」

「緑魔キャロラインでーす!」

「甘乃あもこだよ!」

「ああ、Vの方が転生……」

「ついたが……ちとまってな」


露骨に見張りのいる家、何者なんだろうか?


「井ノ口の鍛冶屋です」

「通れ」


無事に通って何やら人らしき影が見えたが……

驚きの光景だった!


「なんで……なんで現代道具がいっぱいあんだよ!?」

「その反応からして君も転移者か……」


齢80になる老人がふらふらになりつつやってきた。

恐らくだが……もう長くは持たないだろう……。


「名を……なんて言う?」

「十六夜月です、てかおじいちゃん無茶しないで!?」

「わかっとる……だが、もうわしの体は持たん、だから最後にこの刀を持ってこの会を継ぐ者を探しておったが……天はわしを見限ったわけじゃないか……あの女子に渡した拳銃も役に立ったみたいじゃの……」

「おじいちゃん……?」

「いいかよく聞くのじゃ、この世界は『本来の史実の歴史とは違う戦国時代』じゃ。わしも若かったら国取りに参加したがもはやこの病弱したら体では無理……だから十六夜月よ、お前がこの歴史を壊し、忌々しき第二次世界大戦を避けて欲しいんじゃ……

「おいおじいちゃん貴方まさか!?」

「わしは……同志たちと最後の特攻をかける!」

「馬鹿!いやおやめ下さい!提督!」

「十六夜月、あとは若人達に任せたぞ……」


そう言って老人……いや、恐らくだがあの人は旧日本海軍の……

考えるのはよそう、とにかくみんなを呼んで……。

……そうしてる間に銃声やら何やらが聞こえた、恐らくだが最後の特攻を……。


「ねぇ!十六夜君大丈夫!?」

「十六夜氏これ……何か知ってるな?」

「うわー!なんかやべーのばかりある!」

「なんで銃の設計図とか船の設計図あるんすかここ」

「……前任者は最後の特攻をしかけた、今現代人はまだいるとは思うが現状私たちだけだ。まずやることといったらここを拠点とし、現代人を集めたいが私としては引っ越すことをしたい」

「理由は?」

「ここがバレた、恐らく幕府に消される」

「まずくなーい?」

「もてるもん全部もってけ、特に設計図と金!」


この時、あの老人こと旧日本軍海軍提督山本五十六は最後の戦力を持って特攻。十六夜月たちに幾許かの時間を稼がせた。

十六夜月たちは全設計図を何とか運ぶことに成功したが……失ったオーバーテクノロジーはかなりの痛手だった。

金も金庫で持ち運んだはいいが、それでも50000貫は捨てなくてはいけなかったのだ。


堺の町


「どうするの?これから」

「不知火さんとカブキさんを呼んでくる」

「わかった」


堺の町から井ノ口の町にいき、馬を馬屋に返しカブキさんと不知火さんを呼びにいった。


「おい十六夜!?何があった!」

「親方?」

「お前幕府に狙われてるぞ!」

「残当」


まぁ、幕府に仇なして襲ったのだ。

当然の結末といえよう。


「親方、カブキマスクと不知火を」

「……皆まで言うな、大体把握した」

「仕事は終えました、こんな形で別れてしまうのは申し訳ないっすが」

「待て十六夜、お前にこれを」

「……美濃伝の極意!?」

「お前は只者じゃない、それを使って旗揚げしてみろ!」

「……わかりました」

「十六夜さん何したよ?」

「何したのさ?十六夜さんや」

「幕府に敵とみなされた」

「やばない?」

「やばいね」

「とにかく、堺の町にいこう」


こうして、二人を連れ堺の町まで戻った。


堺の町 夜


「暗くなったな……」


二人を連れ戻ると、何故かキャロライン氏一人が待っていた。

何かあったのだろうか?


「あ、きた!」

「キャロラインさん?」

「新しい家決まったよ!」

「……え?」

「設計図に鍵と隠れ家準備されてたの!」

「ほぉ、随分と準備いいじゃない」

「行くしかないからうちはいくで」

「キャロル案内するね」


堺の町 隠れ家


「デカすぎんだろ……」


南蛮屋敷近くにあった隠れ家は軽く10人は住めるデカさだった。

しかもこれが3棟もある、30人なら確保できる!

更には鍛冶屋としても医療にしてもいろいろと最先端技術が使われていた。


「つれてきたよー」

「あもこ頼まれたのかってきた!」

「なんなんやこれ」

「いやぁここまでとは思わなかったよおいちゃん」

「資金はどこから?」

「それについてはわたしから」

「誰だ?」

「初めまして、水城リーネといいます」

「十六夜月です」

「五十六提督の元で働いてましたが……最後に特攻したと聞き……」

「すまん、私のせいだ……」

「ならば、意思を引き継ぎ天下を取ってください」

「……」

「資金についてですが、貴方達が持ってきた金庫に35000貫入ってます。これが当面の資金です」

「稼ぐことからスタートだな」

「キャロルはとにかく商業を今頑張ってるよ?」

「あもこ何もできないんだわ……」

「おいちゃん鍛冶屋しか出来ない……」


色々と絶望的だった。

35000貫じゃほぼ何も出来ないのだ。


「あーうちに案あり」

「なんだ?」

「鍛冶屋総動員して大名家に売れば?」

「歴史をさらに悪化させる気ですか?」

「だが、それしかない」

「ならどこの大名家につくか考えてください」

「考えはある!」


そういって私は日本地図を開いた。

尾張の龍がいるところに、指をさし。


「上杉謙信と組む、あいつなら寿命もあるから引き継ぐことも可能だ……!仲良くなれたら」

「そんな上手くいきます?」

「だからそれまでの3年で金稼ぎして私達は修行すんじゃよ」

「……」

「キャロルもそれしかないと思うよ?歴史を知ってるのは十六夜君だけだよ?」

「それに十六夜さんは特能持ちや」

「特能?」

「えー、一応ですが……この世界が何が元かわかりました」

「は?」

「キャロルですらそれ意味不明な発言なんだけど」

「カブキマスクもなんかわかった気がする、多分あそこだな」

「ここ……太閤立志伝の世界や……史実の歴史とだいぶ違う……」

「しかもなんか貴重品とか浪人に売られてるし」

「は?」

「証拠は?」

「ほれ、これ」


私は美濃伝の札を見せた。

もう太閤立志伝をやってるならこれでわかってしまうのが辛い。

しかし戦国時代にはかわりないのだ。


「何ですかこれ」


うん、知ってた。

これが普通の人の判断だよね。

まずこの札とか累々の使い方とかを教えてみた。

しかしリーネ、全く理解できず。

恐らくこの札にはちゃんと鍛えてないと使えない何かがあるのだろう。

しかし太閤立志伝の世界と証明させるためここの南蛮屋敷の商品もおかしいことを伝えた。

そうする事でやっと理解してくれた。


「認めたくないですが……」

「で、どうする?」

「託したのは貴方です、全て従います」

「ならば、上杉謙信とのつながりは任せろ」

「ご飯できたゾ」

「飯食いながら喋って考えますか」


こうして、隠れ家の食事がある場所へといったのだった。

食事は非常にすごかった。

黒米にオムレツ、里芋の煮物にカステラ。

味噌汁にどこから仕入れてきたかわからないベーコンもあった。


「おい、私はたくさん聞きたいことがある」

「何?」

「どうやって仕入れた」

「キャロルが商人だっていったら南蛮屋敷の人が買っていいって言ったから買った」

「次、何貫かかった?」

「5貫」

「今日は許す」

「キャロル許された!」

「まじか、久しぶりの洋食だわ」

「あもここれ作った!」

「……?」


そうやって見せてくれたは何やら丸い食べ物、いやまさかね?


「兵糧丸!」

「マジか!これは売れる!」

「あー兵糧丸はレシピ封じたら売れるね」

「皆さん、冷める前に食べましょうか」

「食うべ」


そうして各自食事を食べた。

そして色々なことを話し談話した。

今までの生活はどうだったとか、自分の特技だとか、現代にいた時の仕事はなんだったとか。

そんな中、リーネがある事を聞いてきた。


「この集まり、なんて名前にします?」

「月光会、月の満ち欠けのごとく暗躍するために」

「わかりました、皆さんに伝えておきますね」


この月光会、後に本当に歴史を暗躍する事になるとはこの時誰も思ってなかったのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る