第23話 ワーグ戦②
俺と佐助でフレアを守る配置を取り、周囲から迫るワーグを注視する。
相手の数は……十三匹。
これぐらいなら余裕だよな。
多分。
「な、なんでワーグがこんなに……」
「モンスターってこれぐらいいるのが普通なんじゃないのか? スライムだって、バイコーンだって無限にいるようだったぞ」
「ふ、普通のモンスターは大地から無限に沸いてくるって言われてるけど……でも、ワーグはユニークモンスターなの!」
「ユニークモンスター?」
そのまま名前通りに受け止めたとすると……独特な化け物ってことか?
ワーグの方を見て、しかし、独特部分など一切無く、俺は首を傾げる。
「どこが独特なんだよ。顔から手が生えているわけじゃないし、ケツから剣が生えてるわけでもないし」
「そんなモンスターいたら連れて来てほしいぐらいだよ! 違うの! ユニークモンスターっていうのは、特殊な状況下で出現するモンスターのことを言うの!」
「ああ、なるほど。で、ワーグは普段はこんなところにはいないってことか」
フレアは涙目で「そういうこと!」と叫ぶ。
普段存在しないモンスターだから、Bランクの依頼だったというわけか。
そんなの全然知らなかった。
しかし、ノーマルレアのモンスターだろうが激レアモンスターだろうが、ようは勝てばいいんだろ、勝てば。
チェーンソーが唸る。
その駆動音にワーグたちが身構えた。
「佐助、行け!」
『ニャン!』
佐助が数匹ワーグが固まっている場所へと瞬時に移動すると、佐助の体から稲光が発生する。
あれは【雷体術】だ。
普通の魔術は、その魔力を手放すことが可能だが、どうやら佐助の能力は自身から手放すことができないようだ。
だが、自分の体の周りに雷を放出することは可能。
要するに、短い範囲になら魔術を行使することができる。
それが【雷体術】だ。
「グォオオオンンンン!」
佐助の体から発生した稲光は、雷へと変化する。
それは敵を屠る、容赦なき魔力。
佐助の雷を受けたワーグたちは、黒焦げになっていく。
「え……?」
佐助が倒したワーグの数は三。
その様子を見ていたフレアの震えがピタリと止まり、そして唖然とした表情を浮かべていた。
なんだよその顔は。
俺はフレアの情けない顔を横目で見ながら、鼻で笑う。
「【ウィンドチェーンソー】!」
ソーチェーンの周囲に風が生まれる。
そして俺はチェーンソーを振るう。
何も無い空間に振るう。
しかし、振るったチェーンソーから鋭利な風の刃が生じる。
風の刃は少し遠くにいるワーグへと飛翔して行き――奴の体を切り裂いた。
「ええっ……?」
またもや驚きを見せるフレア。
風が飛んだことに驚いているのか、はたまたワーグが死んだことに驚いているのか。
どちらかは分からないが、そんな顔ばかりされたら、笑いを堪えるのが辛いんですけど。
だが戦いはまだ終わらない。
ワーグはまだ倒し切っちゃいない。
残り九匹。
フレアの反応に爆笑してしまう前に倒し切ってしまうぞ。
「佐助。遠慮するな。やりたいようにやれ!」
『ニャン!』
佐助の目のマークは、まるでお宝を見つけた発掘者のよう。
キラキラ楽しそうな表情をしている。
そんなに狩りが楽しいのかよ。
それなら暴れたいだけ暴れればいい。
佐助は両前足に稲妻を発生させ、素早い動きで右へ左へ、まさに稲妻のように動き敵を切り裂いていく。
一瞬で四匹のワーグを撃破。
俺は佐助から距離があるワーグに向かって、風の刃を飛翔させる。
「ほい、ほい!」
こちらの攻撃も一振りずつでワーグを真っ二つにしていく。
なんてラクチンなスキル。
これからこれだけで戦おうかな、と思えるほど風のスキルは有能であった。
そして五分と時間はかからず、俺と佐助はワーグを殲滅したのである。
「これで終わりだな」
『ニャン……』
物足りなさそうに肩を落とす佐助。
後で好きなだけ狩りをしてくりゃいいだろ。
「そういえば、戦いの最中にレベル上がってたな」
体が光ったことを思い出した俺は、ステータス画面を開く。
―――――
雲雀 幸村
ジョブ:家電魔術師
LV 18 HP 1799 MP 855
攻撃力 900 防御力 832 魔力 899
器用さ 850 素早さ 840 運 820
スキル 家電魔術 家電量販店
―――――
チェーンソー
攻撃力 3600 防御力 830
能力 属性攻撃 換装
―――――
佐助
HP 900 MP 400
攻撃力 430 防御力 410 魔力 450
器用さ 410 素早さ 470
能力 経験値共有 雷体術
―――――
「あれ? 随分レベルが上がってるな……」
佐助も夜通し狩りをしていたみたいだし、それに現在進行形でスライムが掃除されているんだったな……
そう考えれば、いきなりレベルが上がっていてもおかしくはないか。
レベルが上がっていたことにほっこりする俺。
良い気分でステータス画面を閉じ、フレアの方に視線を向ける。
「…………」
「おーい。戦い終わったぞ」
依然として固まってしまったままのフレア。
ポカンと口を開いた顔が妙に可愛くて、俺はとうとう噴き出してしまうのであった。
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