第21話 道中ゴブリンと
ワーグ。
そのモンスターは町の西側に位置する、森の中に出現するらしい。
現在俺が住んでいるあの小屋がある森とは繋がっていない、別の森。
とのこと。
町を出て、西へ向かって行く俺とフレア。
道中、ゴブリンなる緑色の小さい雑魚モンスターが出現するが、これらを佐助が一網打尽にしていく。
苦戦どころか、一撃で勝負はついていく。
「へー、サスケ、強いんだね」
「それなりに強いだろ? で、フレアはどれぐらい強いんだよ?」
「私は……どうなんだろう」
自分の実力を隠すかのように、微妙な笑みを浮かべるフレア。
こいつ……さては弱いな。
「なあ、ステータス見せてくれよ」
「ス、ステーキって美味しいよね……」
「誰が肉の話をした? ステータスだよステータス。お前の能力を見せてくれって言ってるの」
「……見たい?」
「見せたくない?」
「あはは……できたら見せたくないかな……」
これで彼女が弱いことは確定した。
なら、追い込みをかけるような真似はしなくてもいいだろう。
俺だったら傷つく。
だからそんなことはしない。
「弱いんだったら、強くならないとな。金、稼ぎたいんだろ?」
「う、うん……」
「ほら。佐助がフォローしてやるから、あの雑魚モンスターと戦ってこい」
「ユキムラはフォローしてくれないんだ!?」
「なんで俺がフォローしなくちゃいけないんだよ。佐助で十分だろ?」
フレアはしぶしぶと言った顔で、腰に帯びていた短剣を抜き取る。
そして意を決したのか、ゴブリンに向かって突撃を開始した。
「わああああ!」
ゴブリンはフレアの方を振り向き、そして相手も走り出す。
が、フレアとゴブリンが衝突する前に、佐助がゴブリンの足を爪で引っかき、転倒させる。
倒れたゴブリンを見て、相手の心臓に向かって短剣を突き刺すフレア。
「はぁ……はぁ……」
フレアはまるで初めてモンスターを倒したかのように、感動したような、だが途轍もなく緊張しているような顔をしている。
え、まさか本当に初めてモンスター倒したの?
「た、倒せた……あはは。良かった」
「……今までどんな仕事してきたんだよ?」
「えーっと……簡単な仕事。薬草の採取とか、届け物とか」
消えるゴブリンを見下ろし、ふーっとため息をつくフレア。
「じゃあ、昨日の山分けの仕事内容はどんなだったんだよ」
「あれは……モンスター討伐の仕事だよ。私は荷物持ちでいいって言ってくれたからさ」
「それで山分け?」
「そういう話だったよ」
フレアのレベルを考えて、報酬の山分けは考えにくい。
何か企んでたんじゃないのか、昨日のあいつら。
しかし、こんな程度の力しかないんじゃ、このまま放りだすのはちょっと危険を感じるな……
変な男に捕まって、変なことされたらどうしよう。
妙に不安になってしまう。
こいつ、純粋すぎるところがあるし、コロッと騙されそうだよな。
せめて、並みの男ぐらいには抵抗できるぐらいの実力までは面倒見てやった方がいいか?
まぁ、俺自身やることないし、少しぐらい手がかかってもいいのだけれど。
「ほら。次だ次。森に行くまではゴブリンを倒せよ」
「ユキムラは?」
「俺はいいの。サスケがモンスター倒せば、俺も強くなる仕組みになってるから」
それに、今はモンスターを自動的に掃除してくれる機械までもある。
成長はさらに加速するというものだ。
チート能力、ありがたき。
「ずるーい! なんでサスケがモンスター倒したらユキムラまで強くなるのさ!」
「そりゃ、俺のジョブの力さ」
「そのジョブ、私もなりたい!」
「ジョブって変更できるの?」
「できない!」
「だったら無理だろ! 諦めて、フレアはフレアの持つジョブのまま強くならないと」
フレアは羨ましそうにこちらを視線を向けながらも短剣を強く握り締める。
「だったら、今のジョブのままユキムラより強くなってやる! 私がユキムラのこと養ってあげるから、見ててよね!」
「いや、養ってもらわなくていいんですけど」
「でも、養ってもらうばかりじゃ悪いじゃない?」
まだ養ってもらう気でいるのか、こいつ。
出て行くための準備だと分かってないのかよ。
「養ってもらうつもりも養うつもりもないから。自立できるように頑張れ」
「頑張るけどさ……一緒に暮らした方が色々と便利だと思うんだけどなぁ」
どこが便利なんだよ、と俺は嘆息する。
たとえ家事ができたとしても、俺には想い人がいるのだ。
だから浮気をするような真似はできない!
浮気って、付き合ってもないんだけどね。
「話してる間に敵倒して来い。時間は有限。大事に使えよ」
「だったら、ユキムラに時間を使う!」
「……敵を倒すことに時間を使いなさい」
フレアは俺の言葉に頬を膨らませ、そしてゴブリンを倒しに向かって行った。
佐助のフォローもあり、楽にゴブリンを倒していく。
もうそのままとっとと強くなって、自分の人生に時間を使いなさい。
俺は心の中で、教師になったようなつもりで彼女にそう言っていた。
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