第16話 カタリナの怒りは収まらず
カップラーメンを適当に数個手に取り、そこで寝具などが必要なことを思い出す。
何も無い所で寝て、また体が痛くなるのはごめんだ。
玩具屋さんを見て回る子供のように、食料品を観察しているフレアを横目に、俺はカタリナさんにベッドの件を相談する。
すると彼女はすぐさま商品の陳列を変更してくれた。
「うわっ!? また変わったよ!」
「そりゃ変わるだろうな。カタリナさんが変えてくれたんだから」
食料品が去り、そして俺たちの前に現れたのはベッドに洗濯機、それからハウスリフォームのコーナー。
ハウスリフォームって……リフォームしてくれるの?
どうやって?
疑問に思うこともあるが、今はあそこのコーナーのことは気にしないでおこう。
「ベッドですけど、どれにしますか?」
「そうですね……」
ベッドは全部で十ほどある模様。
少し小さな目のベッドからバカでかいベッドまで。
どのサイズにするか俺は商品を眺める。
「デザインはこっちの方がいいですね。でも、サイズはこのぐらいの方が……」
「なら、こちらのデザインにあちらのサイズの物にしますか?」
「え? そんなことできるんですか?」
「もちろんできますよ」
できんのかよ……
そんな自由な組み合わせができるなんて……さすがカタリナさん!
彼女は関係無いかも知れないけど、彼女に感謝だ。
「じ、じゃあそれでお願いします……値段はどうなるんですか?」
「大きい方が基準になります」
「こっちの値段ですか」
俺はベッドに腰かけ、枕元に立てかけられている値札を確認する。
フカフカでいいじゃないか。
ベッドの柔らかさに感動しつつ、値段を見て体を硬直させてしまう。
「90000ポイント……」
「あ、ちなみに送料は2750ポイントになります」
「送料なんてあるんですか!?」
送ってもらうなら送料を取られて当然か……
いや、そもそも誰が送ってくれるんだよ。
と言うか、小屋は目と鼻の先。
自力でも運べないこともない。
「…………」
誰が送ってくれるのかなんてどうでもいいが、しかし、自分で運んだとなると問題がある。
まず、傷を付けずに運べるか?
今の俺はそれなりの腕力があるから運ぶこと自体は問題ないだろうけど、でも綺麗に運ぶ自信はない。
それに必死で運ばなければいけないことを考えると、何と言うか、萎える。
ポイントはかかるが、ここは運んでもらった方がいいな。
となると、後はポイントが足るかどうか。
昨日の時点で2万以上あったが、十万近いポイントとなると……やっぱ無理だよな。
俺は肩を落としため息をつきながらカタリナさんに聞く。
「あの、現在のポイントってどれぐらいあります?」
「ポイントですか? 佐助、幸村さんに教えてあげて」
依然としてカタリナさんに抱かれたままの佐助。
目のマークはデレデレ。
相変わらず俺は思う。
その場所を変われと。
だがこちらのそんな想いなど届くはずもなく、佐助はポイントを知らせる光を畔津だけ。
「んん? 120000ポイント!? なんでこんなにあるの?」
『ニャン』
「ああ……佐助、一晩中スライムを狩っていたみたいですよ」
「そ、そうなんですか?」
機械の言葉が解るのか、カタリナさんは……
佐助とは意思疎通できているような気もするが、言葉が解れば尚良い。
俺も理解できるようになりたいものだ。
あ、翻訳機とかここに売ってないかな。
「それに、バイコーンのポイントが高いというのもありますよ。スライムが100に対して、バイコーンは1000ポイントですからね」
「そんなにポイント高かったんですね、バイコーンって。いや、それよりありがとうな、佐助。まさか一晩中狩りをしていてくれてただなんて……でも、休憩もしっかりしろよ」
『ニャン』
素直に首を縦に振る佐助。
でも狩りをするんだろうなと予感は感じている。
狩りが趣味みたいだしな、こいつ。
「では、これを購入します」
「はい。かしこまりまし――」
「わあ! このベッドすごい柔らかいね!」
俺が座っているベッドに飛び込んでくるフレア。
そしてノミのようにビヨンビヨン飛び跳ねる。
俺もやりたいけど、カタリナさんの前だから遠慮してたのに……
「ねえ、これを買うの? あの家にこれを置くの?」
「そのつもりだけど」
「へー……このサイズなら、一緒に寝てそうだね」
「一緒に……寝る?」
カタリナさんの額に青筋が浮かび上がる。
あからさまに怒っているカタリナさん。
俺はゴクリと息を呑み込み、フレアの肩に手を置く。
「お前……何言ってるんだ。一緒に寝るわけないだろ? お前はご飯を食べたらどこかに行くんだよ」
「ああ、なるほど……一緒に寝るのが照れくさいんだ」
「んなわけあるか! お前相手に興奮するわけないだろ!」
カタリナさんと一緒に寝たら興奮して三日三晩ぐらい寝れそうにないけど。
だがフレアと寝たとしたら……その日は寝れそうにないと言うのが本音ではある。
だってこいつ可愛いし。
だが俺が本音など言ってやるものか。
「あの、カタリナさん。こいつと寝るなんてことありませんから、安心してください」
「はい。信じてますね」
カタリナさんは笑顔を浮かべているが、しかし彼女の本音もまた分からない。
が、おそらく、一緒に寝たとしたら、またここに来る可能性が高いと考えて怒ってるんだろうな……
女心が分る俺。
俺も成長してきたものだなぁ。
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