さあ、推理を始めよう!
軽太郎が引きずられて行った先は、とあるアパートの一室だった。
「やあ、探偵ぃ!」
台所の前に立つ
その足元には、死体が転がっていた。
背中に付いた
「殺人……ですか?」
軽太郎の言葉に、無言で
「
警部は
「第一発見者は、このアパートの管理人だ。二時間前に一度
警部は眉をしかめながら状況を説明した。
「なるほど……それで、私を呼んだのはなぜです?」
「……分からんかね?」
そのまま黙って遺体を眺める。
「なるほど……そういう事か!」
「えー!なにー!どゆことー!わかんなーい!」
軽太郎の首を掴み、激しく
見慣れているのか、死体には驚きもしない。
「ねー、ケイたーん!おせーてよー!ねーてばー」
「わ、わがっだから……は、はなじでっ」
振り子のように揺すぶられ、軽太郎の顔が青くなる。
「け、
「……ケッコン!?そ、そんな……突然言われても……」
急に真顔になるリン子。
「分かった……きっとこれも運命ね!では、結婚指輪は誕生石のダイヤモンドでお願い」
「いやいや、君の誕生石はトルコ石だろ。勝手に高いヤツに変えるな……違うよ、私が言ってるのは、血の
目を輝かせるリン子をたしなめる軽太郎。
「被害者の体には大きな
「さすがだな、探偵ぃ!その通り……あちこち探したが、どこにも血痕が見当たらないんだ!」
伊達牧警部が、感心したように大声を上げる。
「犯人が
「恐らくな……だが、その理由が分からんのだ。遺体は放置したままなのに、なぜか血痕だけ始末している……君を呼んだのは、このためだ」
そう言って、警部は頭を掻いた。
「謎を解いてくれぃ!探偵ぃ!」
軽太郎は
調理台には鍋と食器が少し。
電源の入った湯沸かしポットと、それから……
「あー!ケイたんのと同じカップ麺だー」
なぜか声を
軽太郎もそれに目を落とす。
今朝食べようとしていた担々麺と、同じものが置かれていた。
閉じたフタ越しに、
軽太郎は警部を
「
軽太郎は頷くと、ポケットからゴム手袋を出し装着した。
容器は冷たい。
フタを少し開いて中を見る。
ふやけて盛り上がった赤い麺が顔を出す。
「おや?……変だな……」
ポツリと
中にはカップ麺の包装紙と粉末スープ、調味ペーストの
「ああ、それと
軽太郎が頷くと、警部が名前を呼んだ。
「
長身の男性が入って来た。
革製のジャケットを
一見して、
「警部さん、もう帰ってもいいでしょうか。仕事の約束がありまして……」
男性はバッグから携帯を取り出すと、チラリと時間を確かめた。
かなり
兄が殺されたというのに、動揺している
「何度も言いますが、アニキが殺された時間、僕は車を運転中だったんです。ここには先週来たきりで、何も分かりません」
吐き捨てるように
「すみませんね。もう少しだけ、お話を聞かせてもらえますか。こちらの方が、質問があるらしいので」
「質問?何ですか」
秋人は軽太郎に視線を移すと、ふてくされたように言った。
「私からの質問は一つだけです」
全く動じる気配も無く、軽太郎は人差し指を立てた。
「紀幸さんはカップ麺はお好きでしたか?」
その質問に、一瞬ポカンと口を開ける秋人。
だが、すぐに軽太郎の顔を
「……ええ、そうだと思います。僕が訪ねて来た時は、いつも食べてましたから。でもそれが一体、何の関係があるんですか!?」
「謎は解けましたよ。伊達牧警部」
「なっ……ホントかね!?探偵ぃ!」
軽太郎はニッコリ
「犯人は……アナタですね」
軽太郎の見つめる先には、
「ば、馬鹿な事を……何を
「根拠ですか……それは、コイツですよ」
秋人の
はたして、インスタント探偵が気づいたものとは!?
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