第188話 harakiri!
俺は皆に合わせる顔がなかった。
特にアイリーンに。
絶対に嫌われる!それどころか軽蔑されると、夜を共にした相手といるのに他の女の事を考えてしまった。
良い思いをしたんだろ?って?
大変だったなと言っておく。まあ俺も楽しんだが。コホン。
改めてやった事に責任を取らねばならない。
この世界ではどうか分からないが、あれしかない。
ちゃんと詫びねば。
シーツのような布を出し、俺はその上に正座をすると収納から取り出した便箋に日本語で辞世の句を書いていく。
「辞世の句。先立つ不幸をお許し下さい。私は取り返しのつかない過ちを、決して許されない事をしてしまいました。奴隷の立場の女性の純潔を奪ってしまったのです。主の求めに彼女は身を差し出すしかなく、怖く悲しい思いをさせてしまいました。この世界の貞操観念は日本のそれではなく、キスすら大変な重みがあると知っていたのに彼女の尊厳を踏みにじってしまいました。私に出来るのは死して彼女を奴隷から開放する位しかありません。気掛かりなのはまだ10名程の者達の無事を確認していない事。道の半ばで人として踏み外してしまいました。アニーファ、本当に済まなかった」
俺は封筒に辞世の句を入れると、ダガーを取り出し足元に置いた。
そして服を開けてお腹を出し、一呼吸してからダガーを掴む。
アニーファは不思議そうに見ていたが、次の瞬間俺は手に持ったダガーを腹に突き刺したのだ。
俺が自らの腹にダガーを刺し、血を吹き出しながら突っ伏したものだからアニーファの悲鳴がこだまする。
そう、俺はアニーファがいるにも関わらず目の前で切腹をしたのだ。
横に薙ぎ、捻ってから上方に切り裂いていくのがやり方だったような気がするが、横に薙ぎ腸が切り裂かれる痛みに情ない事に気絶した。
そして数時間後俺の大事な女性達に見守られながら、享年49歳の幕を閉じる・・・
事が叶わなかった。
?女性達に見守られ?
あれ?
おかしいな・・・
俺の意識が戻ると、特にアイリーンが激しく泣いていた。
「あんたってバッカじゃないの!ほんと救いようのないバカよね。アニーファを奥さんの1人にして、ちゃんと向き合えば済むでしょ!」
開口一番みっちゃんに頬を殴られ、散々説教をされた。
俺は混乱しており、咄嗟に切腹してしまった。
勿論ニーナが治療してくれていた。
次にみっちゃんの書いた内容を宣言させられ、ボイスレコーダーに記録までされた。
また、責任とは死して償うのではないし、アニーファに対しては取る責任すらないと諭された。
そして読み上げた内容はこんな感じだ。
俺が娶る者についてはアイリーンとみっちゃん主催の嫁会議に委ねる。
2度と自死を選択しない。
命尽きるその時まで妻達を愛し、力の及ぶ限り守る等々だ。
なんの疑いもなく宣言させられたが、いや、皆の無言のプレッシャーに負けて何も考えないように棒読みした。
特にアイリーンが俺の性格を把握しており、常日頃有言実行!や男に二言はない!と言っているのが本当の事だと分かっていて提案していたようだ。
それと、そもそも何で気絶したかを聞かれるも分からないと答えると、スキルにはなんてあるのか?と詰められた。
知らないと答えると、鬼の形相のみっちゃんに今すぐ見なさいと言われ、ハイとしか言えなかった。
因みに今のレベルだと1日につき10人の制限があり、スキル制御のお陰で条件付きだが、制限が解除できる。
最終的には100人まで行けるが、条件と引き換えに101人以上を飛ばす事が出来る。
その条件とは使用後12時間、女ととにかくやりたくなるような性的欲求が膨らむのだ。
誰構わずなので、身柄を拘束するか、1人とやれば衝動が収まるのだ。妻の誰かが相手をすれば解決となった。
気絶は単に大魔力を放出した反動だ。それと鬱状態もそちらだ。
正直にいうと、女を抱くのは問題ない。
だが、スキルとは関係ない魔力放出に体と心がまだ出来上がっていないと分かり、今後は要観察となった。
ただ、俺にも言いなりになりたくないと変なところで意地があり、結婚するのは高校生達を全員探せた後か、魔王と対処した後とした。
また、日本でいう成人した者のみとしたが、俺的には20歳だが、18歳に引き下げられているのを失念していた。
そう、俺はまたまたたまたまたまたやらかしました・・・・
説明を予め見ていれば防げた事案だ。
しかし、この後サルベルに飛ばなきゃなので、同行者が俺を拘束して自殺やその同行者の女性を犯すのを防ぐ事にした。
という訳で一旦話は終わった。
食事の後、国の関係者が俺に面談して貰いたいというのだ。
面談してくれではなく、俺が誰かを面談するらしいが、誰を何の為か誰も話してくれない。
会議室に集まっている面談者希望者の所に行ったのだが、そこにいたのは国王とエナリス、そして国の重鎮が勢揃いしていた。
つまり・・・それは・・・俺が国王を面談する側という事を意味し
「えっ!?」
情けなく唸るのだった。
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