第187話 閑話アニーファと
狭い部屋に若い美人の女と押し込まれたら何が起こるか、語るまでもあるまい。
抵抗はしたんだ・・・
能面だったエンピアルに名実ともに俺の女にしてと言われ、キスをしてきた。
自らの胸に俺の手を持ってきて・・・・性奴隷として仕込まれた技を駆使して俺にご奉仕してきて・・・
駄目だ!こんなところでと言うも彼女も俺も止まらなかった。
彼女を求めた・・・その体を堪能し、いざエンピアルと合体しようとしている所から記憶がない。
実際は気が付いたらシャルワール王都の客間にいたのと、誰が添い寝しているのか確認するべきだった。
俺は一瞬意識が跳んだと思い、さっきまでの続きをしようとしたんだ。
「君の事を一生愛し、一生守る。君が好きだ!俺の妻の1人になってくれ!」
「私を受け入れて頂き嬉しく思います。不束者ですがよろしくお願いします」
声が違うような気がしたが、一瞬意識が飛んだ事か、気圧の影響だろうか!と思い、彼女の体を愛でていく。
体の触り心地も何か違うような?特に髪の触り心地が違うのだが、いかんせん今は暗い。何故暗いのかよく分からないが、暗いので顔も確認瀬ずにそのままやってしまいました・・・もう、滾りを抑えられませんでした・・・
そして勿論エンピアルな訳ではなく、まあそんな事なのですが、明るくなり俺は何故自分がベッドの上にいるのか分からなかった。
だが、そこには昨夜愛し合った1人の女性がいるという事だけは分かった。
し、しかしだ、見えている髪に見覚えがない。
そして恐る恐る布団をめくるとそこにはほとんど見覚えのない女性がいて、つい君は誰?と聞いてしまった。
「アニーファでございます。髪を解いているのと、化粧を落としているので分からないのも無理はありません」
「ですよねー・・・」
俺は動揺していたが、やっぱりそういう事だよなと思い、恐る恐るシーツにある昨夜の情事の痕跡からも記憶も間違いなく彼女を抱いたと、段々その時の記憶が蘇ってくる。
彼女の純潔を散らしたのは他ならぬ俺だ・・・
俺はその場で土下座を敢行した。
「すまない。俺はとんでもない事をしてしまった。。一番やってはいけない事、立場を利用した・・・アニーファを手籠にしてしまったようだ。取り返しの付かない事だ」
「お止めください。こうなると分かって奥様達に伽をさせて欲しいとお願いをしたのですから。今となっては行き遅れた私を貰って頂き嬉しく思います。私を大人女にして頂く時に一生愛してやる!一生守ってやると言って下さり、その言葉で私は十分です」
俺はエンピアル相手にそれを言ったつもりだったのだが、勿論そんな事は言えない。
彼女もそうだろうと分かっていていると思うが、それでも折れから口にすべきではない。
俺は有言実行を是とし、人違いとはいえアニーファにそうするとしか言えなかった。
実際問題としてアニファは21歳だった。
そう、この世界ではトウの立ったバリバリの行き遅れである。
ニーナもバリバリだ。
なぜこれ程の美貌の持ち主がそうなったのかを聞いてみると、どうも父親が高貴な所への嫁ぎ先を考えていて、まもなく嫁いでもらうというような事を言っており、2日前に形式的にあの深刻王の妻、つまり王妃になるのだと。
実際は一緒に住む必要はなく、時折行事に出れば良いのだけだと。好きな男と添い遂げれば良いと言っていたそうだ。かの者はメイドにしか反応しないから、頻繁に抱かれる事も無いと言われていた。
但し、時折子作りはしてもらうから、長子を生むまでの我慢だと言われていて、嫁ぐ準備をしていたのだと。
「君は俺の事を恨んでいないのか?君の父親を捕まえた当人だぞ」
「はい。お母様とお父様より、自分達は処刑されて当然の事をしたと、恩赦を授けて頂けるので、陛下の事を恨んではならないと。特に女性には寛容な人物で、一族の女性達を性奴隷にする事を陛下が皇帝になられた恩赦として禁止すると聞いております。それに皆様から聞いている通りの人となりで安心いたしました」
「も、勿論俺の妻の1人に迎え入れる。俺が全力で守る。ひょっとして俺がエンピアルと勘違いすると分かっていたのか?」
「はい。どうやら陛下がお使いになられたタウンドリフトというスキルの影響で、エンピアル様と仲良しさんをなさっている最中に気絶したと聞いております。なので意識を取り戻された時に、続きをされると皆様がおっしゃっておりシャルル様は私に対し、陛下に抱いて頂き陛下の女にして貰うべきだと言われました。あの方は間違いなく妻にしてくれる方ですよ!と。既に奥様達の了解を取り付けておりますと。それと、陛下に唾を吐き申し訳ございませんでした」
後から俺の対応はニーナの指示だったと聞かされて安心したと言っていた。
また、それについては俺もシャルルから聞いていた。貴族王族の女というのは、例え体を凌辱されようが、心までは与えない!そういう矜持があると。
そして無力ながら、ささやかな抵抗としてその男の顔に唾を吐き掛けるというのがあると聞いていたので、なるほどと思い特にどうこう言うつもりはなかった。
男の顔に唾を吐くのは女からの最大限の拒絶と侮蔑を表すのだと。
「私の事をエンピアル様と勘違いなさってお抱きになったのだとは分かっております。ですが、私は陛下に縋っていくしか生きる術がございません」
確かに彼女からすると俺の女になったと言う安心感が欲しかったのだろう。
自らの純潔を捧げる事になるが、それにより生きる道や一族の血を残す事が可能になるかもだ。
その目的があったと全て白状した。別段父親達との話を俺に言う必要はなかったのだが、そういう打算があるのも事実だとは言っていた。
隠し事が嫌いなのだと。
俺はこの女性の純潔を奪ってしまった!
己の体を武器に取り入り、生きるのに必死な可憐な女性だと分かり、申し訳無さと愛おしくなり、ぎゅっと抱きしめ、守ってやる!守ってやる!と連呼した。
彼女は俺の口からはっきりと受け入れる旨を聞いた事に泣いて喜んでいた。
俺はやってしまった!
女を抱いた喜びよりも、ついに奴隷にした女性とやってしまった!
そんな感じで自己嫌悪に陥るのであった。
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