第172話 落とし前をつけちゃる!

 朋の話は概ね予測の範囲内だった。

 彼女達が降り立ったのは城ではなく、トライデル国の中でもシャルワルー国との戦争を終わらせたい停戦派の王子の所だった。

 そこではかなり良くして貰ったという。

 短い期間だが、冒険者として必要な事を教えて貰ったり、冒険者登録をしたりしたそうだ。


 しかし、問題は程なくして国王が跡取りを決めずして突然死した事に始まる。


 そこで跡取り問題勃発だ。

 元々長男は王子が全滅して最後の1人にでもならない限り王にはならないと告げ、亡くなった国王も了承していた。


 しかしだ、跡取りを、つまり次の王を決めずして52歳という歳で突然死したのだ。

 妾達とやっている最中、果てた時に突然胸を押さえて苦しみだしたと噂されている。


 実際は初めて抱く若い妾で、果てた時に脳の血管が切れて果てながら死んだのだ。

 所謂腹上死というやつだ。

 フィニッシュの時に血圧が上がり、血管が切れたという腹上死の典型的なパターンだ。しかも、初めての相手だったから興奮度は高かったのだ。

 体力に自身があり、まだ後10年は退くつもりもなく、健康そのものだったのもあり、次男と3男のどちらかにまでは絞っていた。


 だが、まだまだ先の話であり、健康的に怪しくなり引退を決めた時点での素質で判断するとし、腹心達もそれで納得していた。


 遺言もなく、程なくして血で血を洗う内戦に突入するも、短期間で次男たる停戦派が負けてしまい、朋や尚達は為す術もなくあっさり捕まった。


 3男は勇者に対しなんの感情も持ち合わせておらず、それどころか異国の女達に欲情したのだ。

 そこで男女1人ずつを選び、隣国の国王を暗殺してその首を持ってくるように高校生達に告げた。

 そうしたら無罪放免とすると家臣の前で言ってのけた。

 失敗したら女子は全員性奴隷として己に尽くせと、男は男娼として娼館で客を取れと言われたのだ。


 彼女達に選択肢は殆ど無かった。

 朋と今回捕まった男の子以外、誰も戦闘向きのスキルを取らなかったのだ。


 特に尚はおっとりしており、いつも姉の後ろをついて回り、人見知りも激しく何より優し過ぎた。なので姉のためとはいえ、人を殺す事は無理だった。


 皆で話し合った。

 朋はこの女子の中で唯一、今回の任務に役に立つであろうスキルの持ち主だった。


【くのいち】

 名前のごとく女忍者。斥候、隠密行動、それに伴う気配を殺したりし、それなりの近接戦闘もこなす強力なスキル。


【トラッパー】

 手近な物を利用し、目的にあったトラップの作成等が出来る。

 対人、対魔物、野営時に野営地やその周辺の守りなど、身を守るのや攻撃もどちらも行ける。


 男の子は

【怪力】

 スキル発動時はノーリスクで潜在能力の倍の怪力を出せる。但し魔力を消費する。


【軽業師】

 スキル発動時、潜在能力の倍の軽快さ、体重が半分の扱いとなる。

 高いジャンプ力や素早い動きが可能だ。

 その為簡単に屋根に飛び乗ったりと、暗殺に役に立つ。


 男子は指名されていた。

 それは恋人がいるとバレていたからだ。

 やる気を引き立てる為に、最後の晩は恋人と同室とし、勿論そういう事になった。卒業おめでとう?


 そして流石にサポートとお目付け役を付けられはした。

 しかし、朋の失敗と共に去っていき、朋達が捕まった事等の結果を新国王へ報告する為、お目付け役はサポートの者と共に自国へと戻っていったはずだ。


 そうそう、先程朋の胸を堪能もとい、落下拷問を決めていた時に3個目のスキルが開放されたんだ。


 俺は朋の話を聞いてブチ切れた。


「よし、今すぐにそのトライデルへ行ってこらしめてやる!・・・何が性奴隷だ!ともちゃんの妹をそんな目にあわせてたまるか!クソみたいな奴は潰してやる!これは俺達日本人に対する宣戦だ!行くぞ!皆良いな!?」


 俺が息巻いたものだから呆れたみっちゃんが窘めた。


「ちょっと落ち着きなさいよ。国王様も呆れているわよ。それに誰が一緒に行くのよ?あんたの飛翔は2人を伴うのが精一杯のハズよ」


「ああ、みっちゃん、君達を飛ばしたあのスキルが使えるようになったんだ。

 だからあれを使う。護衛はここに置いていく事にするから、アイリーン、みっちゃん、ニーナ、シャルル、アウィン、セレネ、エンピアルには来て貰いたい」


「少しは落ち着きなさいよ。このまま行っても駄目でしょ!あんたって頭が良い割に、考えなしで直情的に動こうとするわよね。これも妻の勤めとして手綱を握らなきゃなのかしら?あのね、あと1日か2日待っても余裕でしょ?これから行く所の情報や、どのように落とし前をつけるか決めてからの方が良いに決まっているんだから。それにこのままだと旅の疲れもあってろくな事にならないんだからね!分かった?」  


「栃郎さん、みっちゃんの言う通りだと思うよ。王様とも話し合った方が良いと思うの」


「レオン様、怒りはごもっともでございますが、差し支えなければかの国と我が国との関係をお話し致します。また、出来ましたらせめて今晩は私達からもてなされたり、同郷の勇者様達と語らっていただけますまいか?」


 俺は皆からの呆れた視線にはっとなり、流石に今すぐ行動へ移すという事を止めた。

 そして皆からの提案を了承する事を伝え、今日は国王に招かれる事にした。

 それに伴い、出発は明日とする旨を決めたのであった。


 みっちゃんがさらっと言った事を誰も不思議に思わなかったりする・・・

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