第156話 対ワイバーン戦(誤)
アイリーンが放った矢はワイバーン目掛けて飛んで行き、見事にその左眼に刺さった。
いきなりの事に、怒りからか獲物を捕まえていたにも関わらず咆哮と共にこちらに向かって来た。
しかし、哀れな羊は邪魔だと言わんばかりにワイバーンの足からポイ捨てされた感じで開放されたが、上空の事だった為に無情にも地面に向かってまっしぐらだ。
俺はアイリーンに見るなと言うのが精一杯だった。
その瞬間アイリーンは顔を背けた。
当然の事ながら羊の鳴き声はドンっという音と共に聞こえなくなった・・・
緑色のワイバーンは迷う事なくこちらに向かいつつ、口を開ける。
すると口の中が赤くなったかと思うと、口から炎、つまりブレスを吐いてきた。幸いこちらはマウントを取っていて、旋回して楽々と躱す。
「うおっ!アイリーン、凄いな!ワイバーンってブレスを吐くんだな。こっちも反撃と行きますか!しっかり捕まるんだよ!」
「いえ、それはワイバーンじゃ・・・キャッ!」
俺が奴に向かい方向を変えたのでアイリーンは悲鳴を上げた。
片手でアイリーンを抱きしめながら飛び、ショートソードであるグラムを握り突進だ。
そのまま進めば激突必死だったが、向こうは体当たりで潰すつもりとしか思えず、俺は矢が刺さった側へ少し逸れ、すれ違いざまにグラムを突き刺す。
腕の付け根に刺さるも、その速度から剣が手から抜けてしまった。
ワイバーンはグオーンと咆哮を上げ、旋回してこちらに向かってきた。
俺はまだ下降していて、奴が背後に迫ってくる。
中々の旋回能力で、俺は追われる側だ。
一度ブレスを吐いてきたが、アイリーンがブレスと唸ったので、即時に進路を変えて躱す。
次に宙返りを行い、奴の背後に周り今度はグランザムで斬り裂く。
皮膚を少し斬り裂くも致命傷には程遠い。
アイリーンは俺の背後を見てくれており、すれ違いざまに背後を取られたら教えてくれる。
すれ違うとお互いにUターンし、正面からぶつかり合う。
と言っても俺は少し躱してグランザムを叩き込む。
奴は腕を振るい、こちらを捕まえるか弾き飛ばそうとする。
俺の剣も奴の鉤爪で防がれる。
10回位そうやってぶつかり合うが、お互いに攻撃が当たらない。
最初の矢とグラムが刺さった以外はお互いにダメージが入らない。
「準備ができましたよ!」
待っていた瞬間だ。
闇雲に突っ込んでいた訳では無い。
唐突に戦闘になったのは相手を逃さない為だが、戦い始めてから直ぐにアイリーンに目当ての物を物色してもらい、それが終わったのだ。
今まではあくまでも時間稼ぎに過ぎない。
確かに高速での上空バトルに心が踊りはしたが、風圧からアイリーンは苦しそうだった。
だが、殺らないとこちらがやられるので、切り札はアイリーンだ。
このまま岩を落としても当たらないから、当たるようにしないとまぐれ勝ちや別の手段を考えなければだった。
その別の手段だ。
ファンタジー小説や映画に出てくるようなやり方は俺達には使えない。
やはりタイトル通りにぺったんこさん狙いが王道だ。
コホン、もちろんギャラリーを驚かせる事をしたいし、そういうのは予測し難いだろう。
何故か牧場周辺でのみ戦っている。
奴は俺が離れようとしても、牧場上空に引き戻そうとする感じだ。
理由が分からないが、今は少し押され気味だったが、ここからは倒しに行く!
「じゃあ小手調べと行きますか!第1段行くよ!3、2、1、今!」
するとアイリーンがポチり、用意した第1段となる物をワイバーンとのすれ違いざまに解き放った。
それは太いロープで編まれた網だった。
一瞬で包まれ、落下を始めたが、ブレスとその膂力で破壊して更に怒りに任せてこちらに向かって来る。
「よし、第2段も宜しく!」
「はい!ポチります!」
アイリーンは漁師の使う編みを投げたが、コチラは躱された。
正確には読まれた。
「次行こう!」
次は小細工を掛ける。
出してもらった別の網に、飛びながら仕掛けを付ける。
アイリーンは意外と器用で指示をすればサクサクこなす。
「できましたよ!」
俺はその仕掛けを手にワイバーンに向かって突撃するのであった。
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