第152話 魔法の講義と模擬戦

 午後からは魔法の勉強というか実技指導なのだが、講師は2人だ。

 1人は魔力無し者の為に来ていたのだが、今回は全員が魔力持ちだった。


 結局既に魔法を放てられる者とただの魔力持ちに別れての実技訓練だ。


 俺やアイリーンは後者だ。

 1時間程の訓練になるので、細かい制御は各自の宿題としたが、魔力放出と得意属性の基本魔法のみ教えてもらった。


 俺はあまり必要としないが、魔力放出さえ使えれば、魔法陣が浮かび上がりそれを足場に出来る。

 込める魔力により魔法陣の直径が変わるが、その魔法陣は小さくても己の体重を支えられる。

 ただしその場にいるだけなので、連続で出して駆けていくのに使える。


 ただ、慣れないと連続では出せないので訓練が必要だから、取り敢えず出したり消したりをする基本だけだ。

 そういえばみっちゃんは1段だけだが使えていたな。

 これを使えば高所から落下していても斜めに当てる事によりベクトルを変えられるから、基本的に意識のある魔法使いを高所から落下ダメージで殺せれられない。


 俺が高所に持ち上げてポイ捨てをしても足場を出して逃れられるのだ。

 そんな話を聞くだけでも講習に来た甲斐がある。


 魔力弾は詠唱がいらないから咄嗟に使えるが、魔法使いにはほとんど意味をなさない。

 これも訓練次第だが、魔力に対する障壁を張る事が出来て、己の総魔力の倍の魔力弾までブロック出来る。

 無意識に発動するとか、便利過ぎる。


 これは魔法を使える者が触れながら1度発動すれば身に付くので、大抵は弟子入りした魔法使い見習いに早々に教えるのだとか。


 これにより戦いの幅が増える。

 ニーナも不自然な動きがあったり、妙に高いジャンプをしていると思ったが、なるほど・ザ・ワ○ルドだ。

 だから魔力持ちの戦士は強いのだとか。

 魔法を使えなくとも足場があればトリッキーな動きで相手を翻弄できるのだ。

 また、逃げるのにも役に立つ。


 俺は戦う相手がそうだとわかるだけでも大分違うが、基本的な事として俺は乱戦には向かない。

 1人又は抱えている者とで多対1の殲滅戦になる。


 それとやはり俺は魔法の覚えが悪かった。


 何でも賢い者は覚えが悪いのだとか。その知識に邪魔され、別の思考形態の魔法については中々覚えられないそうだ。


 頭でっかちは理屈で考えるので、閃きの大事な魔法については厳しいのだとか。


 その点アイリーンは水を得た魚のように一度の説明で覚えていて凄いなと思う。


 俺は穴を開けるホールというのしか覚えられなかった。

 どうやら俺は土を得意とはしなく、ユニークらしいが、ファイヤーボールやウォーターボール、等は手を焦がし、足下や股間を濡らすにとどまり今の段階では穴を掘るしかなかった。


 だが使いようはある。

 俺の場合相性が良いはずだ。

 浅い穴を掘り、そこに足止めした者を押しつぶすのに役に立つと思う。


 しかも掘った土を無限収納に入れられるから、放出も変幻自在だ。


 皆新たに新しい初級魔法そのものを発動自体は出来るようになったが、実戦で使えるのは時間が掛かり、当面は己にとって相性の良い魔法のみに絞り、実戦で使えるようにするのが良いと言われた。


 そして最後が模擬戦で、魔導具や実剣の使用は禁じられての模擬戦となった。


 模擬戦をする講師は元上級冒険者だったが、辛うじて谷本君の木剣が1度手というか甲を打ち付けた以外誰も何もできなかった。


 そしてトリは俺だった。


 俺は飛翔で飛び、講師の頭上に布団を出して終わった。

 あっさりと下敷きになったから、それが岩だとぺったんこされているからだ。


 だが、飛翔と無限収納から何かを出すのを禁じてもう1戦する事になった。


 負け惜しみではなく、建物の中や高さのないダンジョン、仲間が多くいる中での戦いだと今のは使えないからと、そういった時の事を考える必要を言われたのだ。


 俺は足場を複数出すのはできそうだった。


 そこで足場を複数出してトリッキーな動きをする事にした。

 だが、首に剣を触れさせるとダメ出しをされた。

 そう、上に出たからだ。


「さっきも言ったが、建物内を想定すると今の動きはできない。高さは剣を上に掲げてジャンプすると天井に刺さる高さを想定するんだ」


 俺はうっかりしていた。

 言われるようにするも、何とか剣を躱わしたり受け流すのが精一杯で、そのままだと負けそうだった。


 レベルがそれなりにあり、レベルの恩恵で動きについてこられていたに過ぎない。


 仕方がないよなと呟きながら、俺にトドメとばかりに袈裟斬りにしてきた1撃を躱すと、懐に入り込みあの時と同じで1本背負いを決め、見事に決着した。


 皆の俺を見る目がヤバかった。

 ここは素直に剣の実力で負けておくのが上策だったのだ。

 ついつい負けず嫌いな所があり必殺技を繰り出したのだった。

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