第125話 尋問

 尋問を中断し、問題を片付けるべくそのテントに行った。テントから外に運び出している時に、護衛から伝えられたとの事だ。


 ただ、百聞は一見にしかずとみっちゃんは教えてくれなかった。


 そこにはガタイの良い黒目黒髪の奴がいた。


「こいつ誰だ?ってひょっとしてこいつが例の沢谷か?」


「そうよ」


 俺は違和感があり、奴隷の順番を見ると、なんと尋問中の奴より後の奴隷となっている。


 つまりあの尋問中の奴は、この沢谷を奴隷にしていた事を意味する。


 俺は佐東達を呼んだ。


 程なくして現れたが、沢谷の姿を見て微妙な顔をした。


「来たな。沢谷ってのは、さっき捕えた奴の奴隷になっていたぞ。心当たりはあるか?」


「この前、王都の奴隷商で奴隷解放しようとして、まず沢谷から始めたんだけどよ、魔力不足とかで出来なかったと言ってたんだ。普段やっている奴は隣国に行っていて、その人の師匠がいる町に向かってたんだ。つまり成功していたって事か?」


「成功どころか、別の奴の奴隷になっていたんだ。沢谷の立場は悪化したんだよ。それまでは俺に敵対したり、犯罪者とならない限り何もする気はなかったんだ。沢谷はわざわざ本物の奴隷になったんだ。ただ、魔力不足とかの話は半分は本当の事だろう。沢谷1人しか出来なかったんだろうさ」


「俺等は騙されたって事か?」


 生意気な口は取り敢えず目を瞑る事にした。


「お前ら馬鹿だな。まあ、もう人生半ば終わったようなもんだな」

 佐東達は項垂れていた。


 俺は沢谷を起こした。


「おい沢谷。聞こえるか?」


「くう。なんでお前が?それに佐東、どうなってやがる?」


「お前は再びここにいるレオンさんの奴隷になったんだよ。何があったんだよ?」


 先程佐東に話した内容を伝えた。

 2度と女を抱けなくなるかもと項垂れていた。


 いや、違うぞ。ちゃんと愛している相手限定だけど、子供を残す事も可能だぞ。


 と心の中で突っ込んでいたが、結局佐東達にどうなっているのかを言うのを禁じるとされ、命令に従わざるを得なかったと。


 1つ言えるのは、この5人は相手を利用するつもりだったのに手玉に取られた馬鹿だって事だ。

 相手を甘く見過ぎたのだ。


 取り敢えずみっちゃん達に5人を託し、俺は尋問に戻る事にした。


 尋問しているのはバインバッハ侯爵の部下だった。

 汚れ仕事の1隊を率いていると。

 他国の同業者と繋がっており、発注者はサルベル国のとある王族らしい。嘘をつくなと命じてから、首謀者を知っていたら話すようにと言うも知らなかったのだ。

 万が一の時に口を割る事を恐れ、大概実行犯には知らされていなかった。


 外国で賊に襲われた事にするのが足がつき難いとの事だ。


 ただ、外国に暗殺者を向かわせるのは足がつくので、その国の同業者に任せる事が多いとか。


 シャルルによると、サルベル国のロンベルという公爵が怪しいと。

 この国に助力を乞いに来たのは元々高校生達が公爵の息子を決闘で殺した事だったよなと思い出した。


 取り敢えずバインバッハ侯爵には早々にご退場頂きたいなと思う。この男と佐東達はイデアさんに報告し、イデアさんから国王に報告と対処を委ねたい。


 ただ、賊の隊長は時折こういった襲撃に参加しており、傭兵というよりも盗賊だった。


 程なくして聞きたい事も聞けたので、隣町に向けて出発したのであった。


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