第111話 出立

 シャルルはイデアさんやニーナと話し合い、程なくして3人で王城へと向かった。正確には4人なのだが、アウィンは護衛の為、勘定に入れてはいない。

 城には国王に会いに行くと。


 城に行くのにアポ無しで大丈夫か?と思ったが、イデアさんは昔、国王と冒険者をしていた仲であり、ニーナが国王に会うのは異例中の異例らしく、間違いなくすぐに会ってくれると。


 ニーナは当代の剣聖の為にずっと登城を打診されていたが、のらりくらりと躱していた。

 政治的に利用されるのを嫌ってだった。


 ニーナには師匠が2人いる。

 1人は言わずと知れたイデアさん。もう1人は現在行方不明の元剣聖だ。歳には勝てぬとし、ニーナに全ての技を叩き込んだ後、模擬戦が負け越すようになったある日、限界を覚ったのか書き置きを残して消えたのだと。一節には不治の病が悪化し、看取られるのを避けたとも。


 ニーナのひととなりは、とてもではないが強者である!といった感じはしないのだが、盗賊を倒した時のニーナのあの強さは紛れもなく本物だ。


 息を切らす事もなく敵をサクッと倒していた剣技は凄かった。中身おっさんだが。おっさん臭がしなければ、惚れるレベルだ。


 これから朝食の時間だと思うので、まだ謁見の時間ではないらしい。なので非公式の場というか、朝食の時間に突撃訪問なのだが、一緒に食べる事になりそうなのだと。

 イデアとニーナの訪問はそれを失礼な事とされず受け入れられるそうだ。それ程イデアさんの予知は貴重なのだと。勿論国王陛下へ伝える予知もあるからと、心配不要だと告げられた。


 また、良く分からないが、シャルルは口伝での言伝を父親、つまり自国の国王から託されているのだとか。勿論聞かないし、聞いても話す事は無いだろう。


 また、俺達はこれからサルベル国に向かう事になるので、イデアさんへ3人、つまりラーナ、フレア、アデルについて育成をお願いした。即答で魔法学園に通わせる手続きをしてくれたり、それまでの間は修行をつけてくれる事になった。


 アイリーンとみっちゃんには、イデアさんの屋敷にいる6人を呼ぶように言ってある。


 勿論、俺には俺にしか出来ない事をする。


 本来俺の立場だとフリオールを執務室に呼ぶのだが、6人を執務室に呼び寄せる為にこちらから出向いた。


 何故かエンピアルが腕を組んで来る。不安なのだろうか?でもそれが自然なような気がする。


 部屋をノックすると

「どうぞ」

 と返事があった。

 俺がドアを開けると驚いていて、家族を食堂に行かせた。


「こんな朝早くに悪いな。執務室は来客の対応中だ」


「それは大丈夫ですが、確かに早いですな。どうされたのですか?」


「これから、おそらく昼にはサルベル国に向かい出す。俺のパーティーと、サルベル国からの使者と護衛の2人組を伴って行かなきゃなんです。それとラーナ、フレア、アデルの事はイデアさんに託してあります。なので、乗用馬車2台、御者が出来る方、護衛は数名から10名前後位でお願いしたいけど、急な話なので護衛は無理しなくても良いから」


 等と出発の準備や俺が不在となる間の事をお願いした。また、セバスチャンには食事というか、弁当をお願いした。


 そうこうしていると、みっちゃんが荷物を持って屋敷に戻ってきた。

 勿論ちゃんと着替えている。


 先行して、6人が間もなく来ると伝えに来たのだ。

 瑞希と合流出来た翌日にもう別れとなるが、6人と朝食を食べたりして、再会と再びの別れ、そしてまた必ず戻る事を涙しながら出発までの時間を過ごした。


 俺はというと結局、6人目のパーティーメンバーが決まらずにいた。

 面談する時間がなかった。

 代わりに臨時でアウィンをパーティーメンバーとして登録したが、その方が何かと都合が良いのだ。


 結局、2パーティーが冒険者登録しており、フリオールがラフト商会経由で、それら2つのパーティーと俺のパーティーに対し、指名依頼としてシャルルの護衛をギルドに依頼してくれた。勿論お金は俺が払うが、それはこの屋敷にいる戦闘奴隷達に対する配慮に過ぎない。


 そうこうしていると、城へ行った面々も戻り、昼過ぎに馬車2台プラス1台の馬車を護衛する騎馬の一行は皆に見送られながら出発した。


 馬車が1台多いのは、護衛の半分と交代の御者が乗る分だ。護衛は警護と休憩を交代でする。

 勿論有事には俺を含め皆戦うのだ。


 馬車の人員はこうだ。

 1号車 

 俺、アイリーン、みっちゃん本体、エンピアル


 2号車 

 ニーナ、シャルル、アウィン、みっちゃん2号さん(ドッペルゲンガー)


 そうそう、ドッペルゲンガーは半径30m以内なら本体と念話が出来るとかで、連絡要員として2号を出した。


 俺が常に魔力を補充すれば大丈夫なので、休憩の時は一旦消し、出発の時に再び顕現させている感じになったのであった。

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