第109話 side さくら8

 私はシャルルが戻るのをまだかまだかと、待ち遠しくて外を眺めていたの。

 今はシャルルに相談するしかないから。

 と言うよりも、色々な事があり過ぎて思考がまとまらないのよね。

 すると誰かが来たわ。あれっ?ひろし君が来たわ。何故?


 私は皆を呼び、女子部屋に集まったわ。そして男子は「お帰り」って言っていたから、ひろし君が別行動をしている事を把握していたようね。


「とますが連れられていった場所が分かったよ」


「あのね、どう言う事か教えてもらっても良いですか?」


「さくらちゃん、これは・・・」


 話す前の前提としてひろし君のスキルを伝えてきたわ。これを知らないと話が通じないからと。


 鈴樹 博(すすき ひろし)

【変化】

 最後に触れた者へと変化できる。

 持続時間は魔力量による。

 異性には変化できない。

 装備や服も変わるが、変化が解けると変化前の服や装備に変わる。もしも変化した段階で身に着けていた物を外した場合、例外なく消える。

 スキルは触れている者にも発動し、持続時間は変化した当人の魔力量による。


【不殺必中】

 スキル発動時攻撃が必ず当たる。防御系のスキルでしか防ぐ事ができない。

 魔物には致命傷を与えるか否か選択できるが、非魔物には致命傷を避ける攻撃のみになる。


 ひろしの説明はこうだ。

【変化】のスキルを使い、先程抗議をした時に触れた騎士の姿になり、とます君を連れて行った者達の中に潜入し、捕らえられている場所を特定したと。


 城の中にある牢屋に閉じ込められている。取り調べ等があり、隊長が不在なので軽い尋問以外するなと副隊長が言っていた。拷問をすると、隊長が尋問出来なくなる可能性があるからと、禁止していた。


 また、隊長はロンベルの父親を護衛して隣町にいるので、早くても明日以降の帰りだと。

 幸いな事に、隊長とロンベルの父親宛に書かれた書状を、隣町に持っていくようにと副隊長に渡されたので、父親に何が起こったのか分かるまでの時間稼ぎになると。


 ロンベルの父親は貴族派の盟主的な立場だそうだ。副隊長はロンベルの父親が帰ってきたら、とますは最短で公開処刑になるだろうと言っていたと。


 話の後、やはりシャルルに相談するしかないとし、一旦待つ事に。


 ・・・


 しかし、夕方少し前にシャルルが戻ってきたので、ひろし君達を呼びに男子の部屋に行ったのだけれども、彼らはいなかったの。勿論私と一緒にいた和美も知らないわ。


 シャルルが帰ってきてから話をすると、使用人を集めたわ。その中の1人に仲間を迎えに行くと言って3人が出掛け、それっきりだという事が分かったの。


 顔を青ざめたわ。

 急ぎシャルルの部屋にて経緯を話すと、そのまま私と和美を伴って登城するという。


 晩餐の時間の少し前で、国王陛下のティータイムだったの。


 国王陛下はシャルルの事を溺愛していて、すぐに通されたわ。非公式の場だとして、執務室に案内されたの。それ程シャルルを信頼しているのだとか。

 スキル持ちだそうで、それもあるのかな?


 国王陛下に異世界人だと話し、スマホを見せたわ。それで信じてくれたのだけれども、部下に確認するととます君を助けに来たと主張する若者3人が、トラップに引っ掛かり捕まったと。


 国王に対する暗殺未遂事件となったようね。このままだと近日中に処刑されるのだとか。


 国王陛下は部下に緊急時として、各所派の主だった貴族を集めたの。私達はその間食事に。味は覚えていないわ。


 国王陛下は王妃様に私と和美を預ける事になったの。まだシャルルの下に弟と妹がいるようなので、私達は外国から招いた住み込みの教育係兼、宮廷魔道士達の元に修行に来た事にされたわ。勿論異世界人だとして。


 夜に御前会議が行われ、その後国王陛下から言われたのは4人の事を、異世界からの客人と話し、異世界の者故の無知とし、ロンベルの父親は4人の開放について最終的にいくつかの条件を付けたと。


 他の異世界人を連れてくる事、異世界人だと証明する事、クマーシャル王国にも異世界人が現れたようだから、そこの者を連れてくるようにと。


 また、クマーシャル王国にいる剣聖ニーナを呼び寄せ、短期間で構わないから自分の息子に直接稽古をつけさせる。


 ニーナの剣はこの国でも有名で、箔が付くのだと。勿論ニーナと知己のあるシャルルを指摘し、説得の為に向かわせるようにとも言われたと。

 また、私と和美の事にも触れられ、国王陛下が匿っているのは分かっているが、10日以内に連れて来られなければ、私を含めた6人を国家反逆罪で処刑すると言われたわ。


 国王陛下が反対した場合については、貴族派が兵を起こすと脅したようよ。


 シャルルは自分が向かうが、日数的に間に合わないと言った。


 しかし、これについては特別に宮廷魔導師が国境近くに、集団魔法にてゲートを発動する事になっていると言われたわ。

 よく分からないけど、2日はクマーシャル王国の首都にいられると。


 シャルルは明日の朝また城に来る事になったわ。

 丁度今晩護衛の者が帰って来るそうで、旅の準備をしたり冒険者を雇ってから城に行くと。


 私達は城から出る事を禁じられたわ。


 そうして翌日、10名程の護衛を率いたシャルルが特使としてクマーシャル王国に向かったわ。


 次話より本編に戻ります。

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