第108話 side さくら7
決闘のルールは単純。
剣は手持ちのを使う。
ただし、魔法付与がされている武器は、その魔法を使う事が禁止されていて、使えば負けなんだって。
勝利条件は、相手が死ぬ、相手が敗北宣言する、そして気絶したりした時に闘技場の審判が戦闘続行不能と判断した時点で終わる。勿論気絶した側の敗北。
敗北宣言は
【負けを認める】
ただ一言、それだけを言うのがルール。例え命乞いをしても、【負けを認める】を言うまでは続行。
とます君は大丈夫だと言っていたわ。剣道をしているのと、それを活かす為のスキルを取ったと。
それとちょっと臭い事を言っていたわ。
「さくらの為なら命は惜しくない!だから・・・行ってくるよ」
だからの後は、何よ?ようやく告白する気にでもなったの?気になったじゃなく、言いなさいよ!ひょっとしたら早い者勝ちかもよ?
彼のスキルはこう。
【見えるクン】
2秒だけだが、相手の攻撃の軌道が可視化できる。スキル発動時は魔力を消費する。
【ヒーロー】
仲間や大切な人を守る時に絶大な力が発揮される。想いの丈により変動あり。常にヒーローであろうとするように意識が変わる。
ヒーローは良く分からないけど、彼は剣道部。見えるクン・・・内容は凄いけど、ネーミングセンスがダサいわ。
私の父と同じレベルで、オヤジギャグ臭がするわね。
相手の剣はとます君のより長いわね。
お互い身構え、審判がコインを投げて地面に落ちたら開始ね。
と言っても、10m程離れているから、フライングしても奇襲にはならないわね。
とます君は前方へ剣を突き出す形で、片足を前にしていて剣道でよくみる構えね。なんか少し格好良いかも。
私の取り巻きの男の子って、見た目は十把ひとからげで、どこにでもいる子ばかりなのよね。
コインが地面に落ちると、早速向こうが駆けてきたわ。
「うっひょ~!死ねやー」
ジャンプして上段から斬りつけて来たけど、ほんの僅かだけ横にズレ、剣で相手の剣の側面を撫でたわ。
すると地面に剣が当たり、とます君は蹴りを入れたわ。
血と歯を撒き散らしながらのけ反り、なんとか倒れずに踏みとどまったわ。って倒れなさいよ!
口を手で拭い、手に着いた血を見て表情が余裕ぶった感じから、怒りくるった顔になったわ。
「てめぇ!よくもやりやがったな!楽に死ねると思うなよ!お前の目の前であの2人を散々犯してやる!」
ここからさくら視線一旦終わり。
怒りに任せて剣を振るのかと思いきや、冷静だった。
下段から斬り上げ、返す剣で首を払いに来た。
しかしとますは軽く剣を合わせるだけで躱す。
とますはすかさず喉に突きを入れた。
「うおっ!」
ロンベルは情けない悲鳴をあげながら後退ってなんとか躱した。
「ちょこまかと!」
ロンベルは懐から投げナイフを掴むと、即時に投げた。とますの頬をかすって血が滲むも、薄皮1枚が切れただけ。
ちっ!っと舌打ちをしつつ、地面に手を付けたかと思うと、砂を顔に投げた。とますは躱しきれなかった為に砂が目に入った。
「馬鹿め!終わりだ!」
上段から袈裟斬りを仕掛けてきた。
「いやー!」
さくらが叫ぶ。
しかし、目を瞑ったまま、屈むと、下段から上方に剣を振った。すると、敵が袈裟斬りに振っている手の下から剣が振られ、剣を握った両手首の所から切断した。
丁度ランバラルが操るグフの懐に潜り込んだガンダムが、グフの両手を切断したように。
「いぎゃゎー!痛い!痛い!俺様の手が!」
とますは左手に剣を持ち、右手で殴りつけた。
蹌踉めきながらも蹴りを繰り出してきた。
とますは避けると回し蹴りを繰り出す。もろに入り、倒れ込む。ロンベルは敗北をさとった。相手を見誤ったのだ。
「い、命だけは助けてくれ!嫌だ!死にたくない!」
とますは容赦なかった。
頭に対して剣で突きを放ったが、体を回転させてなんとか躱し、這いつくばって逃げ出した。
「ギィゃー!だ、ダズげでぇ!お、俺のま・・・」
無様に這いつくばって逃げながら命乞いを始めたが、最後まで言えなかった。
とますは文字通り、剣で頭をかち割ったからだ。さくらはとますが命乞いをしていた相手を殺した事に対して少し驚いたが、それよりも、とますが無事だった事が嬉しかった。
さくらもスキルを使用していたのだが、その影響から人の生き死にについて希薄になっていた。
仲間が人を殺した事に対して、極悪人だからまあいっか!位になっていた。
他の仲間はとますのした事にショックが大きかった。
脳漿を撒き散らしているので助からない。暫くの間ロンベルの体はピクピクし、血がドピュー、ドピューと吹き出していたがやがて動かなくなった。
騒ぎを聞き付けた騎士団が駆け付け、とますはあっと言う間に身柄を拘束され、連行されてしまった。
貴族派の公爵家の息の掛かった部隊だった。ロンベルが勝った後、戦った相手を投獄する為に闘技場の外で待機していたのだ。
そう、ロンベルの従者の1人がいつもの事として、子飼いの騎士達を連れてくる為にいつの間にか消え失せていたのだ。
本来決闘は禁止されているのだが、闘技場の者も買収されており、訓練と称して場所を貸しただけとするのが常套句だ。
対戦相手が逃げないようにと、国王派の騎士が近付かないように、貴族派の騎士が兵を引き連れて闘技場の外で待機していたのだ。
近日中に裁判をするとし、さくら達が文句を言うも相手にされなかった。
さくら目線に戻る。
多勢に無勢でその場は離れたんだけど、シャルル様の館に着いた頃にはひろし君がいなかったのだけれども、ひろし君が戻ってくるまでその事に気が付かなかったわ。
また、シャルルは不在で、困った事に夕方まで帰ってこないの。
取り敢えずシャルルが戻るまで部屋で待機となり、あてがわれた部屋にて過す事になったわ。
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