第101話 女騎士

 俺達の自己紹介が終わり、次は女騎士だ。因みに眠り姫さんは、疲れや精神的な事から、ただ寝ているだけだ。それというのは、ニーナが治療魔法を使った時に、怪我等をしていない事を確認している。


「先程は失礼した。私は姫様付けの護衛を仰せつかっているアウィンだ。レオン殿、世話になる。それとこの国に急ぎ来た理由は、異世界からの召喚者の事なのだが、詳細は姫様しか知らぬのだ」


「分かった。もう遅いし、休むような時間だけど、その姫さんって何者だ?」


「これは失礼した。サルベル王国第12王女のシャルル・アルベル・サルベル様だ。シャルル様と呼ばれている」


「第12王女って、いったい何人の王女や王子がいるんだよ」


「ちょっと、レオン、突っ込むところはそこじゃないでしょ!それよりもアウィンさん、異世界人の事で知っている事を教えて欲しいの!」


「あっ!私も知りたいです!」


「貴女達は黒目黒髪。まさかかの者たちと同じ異世界人なのですか?」


「それよりも誰がいるの?無事なの?」


「まあ、落ち着けよ。先ずはアウィンさんの話を聞いて、それから順に質問をしよう。アウィンさん、休みたいところ悪いけど、アウィンさんの知っている事を教えて欲しい。アイリーン、みっちゃん良いね?」


 有無を言わす事もなく押し切ると、2人は頷いた。


「大変な事になっている。数日前、突如上空より異世界人達が現れ、そのうち4人が処刑されようとしているんだ。ゴホッゴホッ」


 俺達は、なっ!と呻いた。


 慌てて話すものだから咽たようなので、取り敢えず水の入ったコップを差し出した。


「すまない。今のままだと1週間で処刑されてしまうんだ。助けてやって欲しい」


「えっと何があったか教えて欲しいんだ。アウィンさん、少し落ち着こうか。ほら、呼吸を。ヒッ、ヒッ、フー。ヒッ、ヒッ、フー。ヒッ、ヒッ、フー」


 レオンは何故か陣痛に効くと言われる呼吸をさせていたのだが、アウィンは言われるがままヒッ、ヒッ、フーと呼吸をする。少し落ち着いたようだが、みっちゃんが突っ込んで来た。


「ちょっと!何でラマーズ法の呼吸なの!彼女のお腹を見なさいよ!赤ちゃんなんていないわよ!それに何でそんなのを知っているのよ!」


「あう!そ、そうだ。それじゃない。こうやって深呼吸を!ってお前も何で知っているんだよ?」


「去年、隣にある祖母の家に従姉妹が里帰り出産しに来ていて、たまたま私がいる時に産気付いて、一緒にやったのよ!」


「あのう、そろそろ話を再開しても良ろしいでしょうか?」


 見兼ねたアウィンが聞いてきたが、アイリーンとニーナは笑いを堪えていた。


「そうだった。異世界人って、俺らと同じような歳の者か?」


 そこからは落ち着いたアウィンが話し始めた。偶々シャルルの館に降り立ち、シャルルが保護していた。


 シャルルは王位継承権を持つとはいえ、かなりの下位で、一応宮廷魔道士団の一員として属している。ただ、実情はお飾りであり、式典の時に魔法展示をしたりと当たり障りのない扱いだった。


 そんな中、異世界人が自分の前に現れ、国もどう扱うか決めかねていたが、シャルルの前に現れた2日後に、彼らだけで町中に買い物に出た時に公爵家の3男と女性を巡りトラブルとなり、決闘を申し込まれた。


 そして男子の1人が受けたのだが、よりによって殺してしまったのだと。

 どうもシャルルの保護下の者と知らずに、一緒にいた女子を強引に連れて行こうとして止めに入り、決闘騒ぎになった。


 お互い、命の保証がない状態で決闘を受託した。相手は屑だが、剣の腕には自身があり、殺しを愉しむ目的だった。その男子の方はというと、見た目は強くなかった。


 決闘ではスキルを使い、1分程で殺してしまった。それも剣を弾き命乞いをしてからだった。

 すぐに捕まり、投獄された。相手は貴族派筆頭の3男の為、処刑を求められた。


 国王派は勢力的に負けており、国王が決闘者を処断するか検討するとして身柄を拘束している。


 その後仲間の高校生達が助けるべく城に侵入したのだが、脱獄は失敗に終わった。それだけではなく、更に国王暗殺未遂容疑を掛けられたと。

 取り敢えず裁判をのらりくらりとしていて時間を稼いでおり、その間にイデアさんにアドバイスと、ニーナに助力を求めに来たと。


 ニーナに何をさせたいのかや、どうやったら開放されるのかについては、シャルルが知っているはずだと。


 アウィンはその者達と会った事がなく、名前も知らないとの事だった。

 所要で不在の間の出来事だと。容姿は黒髪黒目で若い男女達だとしか知らないと。

 そうして情報交換をしていると、メイドが客間の準備が出来た旨を伝えて来たので、取り敢えずシャルルを客間のベッドへ寝かせ、この日はお開きになったのであった。

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