第93話 女子会?
アイリーンはみっちゃんと腕を組んでおり、終始笑みを浮かべながら屋敷へと向かっていた。
あんな笑顔は見た事は無かった。アイリーンは眩しかった。一見すると冷たい印象を受けるのだが、今は年相応の可憐な少女だ。
どうやらアイリーンは目が悪い。細めないとはっきり見えないのだろう。だから目の細い冷たい印象を受けるのだ。今まで気にする余裕がなかったのだが、その細い眼を更に細めて何かを見ている時があったなと思う。
俺もアイリーンを最初の者達に引き合わせたからか、少し余裕が出て来た。
ある意味ホッとした。仲間に引き合わせられたと。
そうそう、この日は屋敷に帰ってからニーナとエンピアルと少し話し込んでいた。
飛翔についての事だ。訓練やスキルに慣れる為だと説明した上での話だが、飛翔を経験するのにバルコニーでエンピアルをお姫様抱っこして少し夜空の散歩をした。バルコニーでエンピアルを降ろすと俺は、拗ねているニーナを珍しくお姫様抱っこし、少し飛んだが何故か泣いていた。目にゴミでも入ったのかな?
後で聞いたのだが、ニーナは大袈裟なのだ。俺がニーナをお姫様抱っこしないのは女性として見ていないからと思っていたらしいのだ。
アイリーンでは背中にしがみつくのが無理だから、ニーナを背負う形になっていただけと話した。エンピアルは短時間なら背中にしがみつけていた。
エンピアルは俺達の冒険者パーティーに入る事を求められた為か、挑発と思われる行動が無くなった。
ただ、エンピアルのお人形の様な顔は相変わらず表情がない。
今日のエンピアルは、はしゃいでいたと思うのだが、表情に出ないのだ。言葉には出ているが、抑揚も少ない。泣いていたりしてもただ涙が出るだけだった。エンピアルに聞いてみる事にした。
「ねえエンピアルさん、作り笑いで良いから笑ってみて」
・・・・出来なかった。ウソ泣きもだ。
話をじっくりしていた。どうも、親を殺され奴隷落ちになってから感情を押し殺したというか、能面のように笑ったりする事ができなくなったのだという。外に出て歩く事が出来たのは嬉しかったというのだが、自分でも表情に出せなくなっていると理解はしていた。
彼女には大きな声を出しての発声練習をさせようと思った。
【あえいうえおあお】
一緒に発声練習をしたりしたが、最初はくねくねして恥ずかしそうにしていた。ニーナも加わりやっていたが、やはりエンピアルは大きく口を開く事が困難だった。
そう、表情筋が衰えていたのだ。頬をマッサージしたり、発声練習をして回復していこう!となった。彼女は俺が自分の為に考えてくれたという事にまたもや泣いていた。
そんな時にアイリーンがみッちゃんと一緒に来て、泣いているエンピアルを見てアイリーンは狼狽えており、みッちゃんは怒った。
「あんた最低ね!主人の立場を利用して泣かせるなんて!」
「みっちゃん様!違うのです!これは嬉し涙なのです!」
「えっ?そうなの?」
俺はみっちゃんをジト目で見る。
「わ、私の早合点のようね。そんな事よりニーナさんとエンピアルさん、ちょっと瑞希の部屋に来なさい!」
エンピアルが俺を見る。しかしみっちゃんは謝らない。
「女の子同士の話もあるだろうさ。もう遅いから、話が終わったら部屋に戻って休むんだよ。俺も少ししたら寝るから。みんなおやすみなさい」
アイリーンが俺のところに来た。
「レオン、有難う。レオンのお陰でみっちゃんと無事に会えたわ。それじゃあおやすみなさい!」
皆部屋を出て行き、そうして俺は1人になったのだった。
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