第94話 3人の決断と夜空の散歩の

 皆が引き上げたので静かになったのだが、俺が1人になったのを待っていたかのようにドアがノックされ、どうぞと言うとラーナ、フレア、アデルの3人が来た。


 3人共ナイトガウンと、寝る前の格好だ。


 セクシーな格好であり、御御足や胸の谷間が強調されている。俺はため息が出た。目の保養にはなるが、また夜のお誘いかと。多分抱いてくれと、俺の妾として側に置いてくれと要望しに来たのだろう?懲りないな。


「夜分遅く失礼致します」


「俺は君等を抱かないと言ったはずだが?少なくとも恋人以上にならないと抱かんぞ。心配しなくても何処かに売ったり変なやつに差し出したりはしないからな」


「あっ、その、それも良いのですが、ち、違う要件で参りました。お気遣い有難うございます」


「そうか。それなら話を聞こうか」


 応接セットに案内し、座ってもらう。早速アデルが話を切り出した。


「念の為にお伺いするのですが、御主人様は、」


「レオンだ」


「は、はい。レオン様は、」


「レオンだ」


「あ、あう。ではレオンさんで?」


「今はそれで良いだろう。いずれレオンと呼ばれるようにしたいな」


「はい。その、レオンさんに確認しますが、私達の事を妾等になさらないのですよね?本当に良いのですか?自分で言うのもなんですが、私達の見た目は美女と呼ばれ、フリオール様からも聞いていると思いますが、国に対して貢献のあった者への報奨として、特別に与えられる高級奴隷なのですよ。もしも何事も無ければ少なくとも私達の誰かがレオン様の女としてあてがわれていたはずなのです。皆、召喚者の成長上位者へのプレゼントだったのですよ?」


「うん。聞いているよ。念の為にというからには、俺がそうだと、恋愛抜きで抱かないと答えるが、希望があるんだろ?それと、フリオールが君らの親代わりだろ?君等が誰を好きになり、誰と結婚するかは君達の自由だ。フリオールの奥さんにだけは報告だけはしてやれよ。ただ、エンピアルは冒険者として俺の元で苦難の道を歩む可能性があるが、彼女も同じだ」


「はい。では私達が誰を好きになるのも自由だと、言質を取りました」


「ああ。確かに言った。男に二言はない!」


「それでは私達4人共1人の女として、レオンさんを1人の男としてお慕い申し上げます!」


 俺はへっ?と情けないうめき声をあげた。


「ふふふ。レオンさんでも狼狽えるのですね。冗談ですわ。でも、これから本当に好きになるかも分かりませんけれども、今はレオンさんはただ単に格好良い方だな位が私達の本音です。ただ、あの子はよく分かりません。知っての通り表情が乏しいので。ただ、多分本気でレオンさんの事を好きですよ。コホン。エンピアルの事を宜しくお願い申し上げます」


「はははは。勿論エンピアルの事は俺の力の及ぶ限り大事に守るさ。エンピアルの事を頼みに来たんじゃないんだろ?」


「はい。本題に入る前の雑談ですよ。単刀直入に申し上げます。イデア様の弟子にして頂くか、魔法学園に通わせて頂けませんでしょうか?」


「どういう事だ?確か君達は戦闘訓練などしていなくて、戦えない者としたはずだが?」


「私達の意志ではないのですよ」


「あっ!そうか。フリオールの意見か。でもあの時は否定しなかったよな?」


「はい。戦う力がないと思っていました。しかし、あの時皆にレオン様はこんな事を仰ったのを覚えていますか?スキル持ちと、魔法を使える者はその制約を外す旨を含んだ事を言われました」


「具体的に言わなかったぞ?」


「基本的にレオンさん達と、奴隷となっている者への攻撃等を禁止し、性的な強要なども攻撃とする旨を話され、それ以外規制をしないと仰られました」


「確かにその旨を話したな。それで?」


「はい。あの後自分達の力を確認しました。何とは言えませんが、どうも私達3人共何かのスキルを持っているようです。それと常人より上の魔力を持っているようです。しかし、確認する術が無いのです。レオンさんから制約を外されたので、感じる事ができました。それで言われるがままのお屋敷要員になるか否かについて話し合い、ニーナ様の師匠であるイデア様の事を耳に挟みましたので、話を取り持って頂けないかと思った次第です」


「分かった。ただ、その前にアイリーンの所に行こうか。彼女のスキルは鑑定だ。今日分かったのは所有スキルを見抜く力がある事だ。スキルはアイリーンに教えてもらうと良い。後で俺にも教えて欲しい。それとイデアさんの弟子の事はニーナに聞いておくよ。冒険者を志望するなら、そうだな、俺からのささやかなプレゼントをしよう。短い時間だけど、夜空の散歩をしようか?」


 3人はパッと明るくなった。


 俺はじゃんけんで決まった順で1人に付き5分程、お姫様抱っこによる夜空の散歩を実行した。彼女達の決意に対するご褒美だ。あっ!女の体に触れたかったただのスケベだろう!と誰か言ったか?まあ、綺麗な女性をお姫様抱っこするのは気持ちよかったよ!でも、奴隷として削られた彼女達の心を少しでも癒やしたいとの純粋な男心さ。でも香水の匂いとか、少しくらくらしたのは否定しないけど。


 そして俺は夜空の散歩の後、3人を連れてアイリーンの部屋の前に行き、ドアをノックするのであった。

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