第51話 異変

 この日は春の陽気に心地良い風と、絶好のピクニック日和だった。

 その為、アイリーンが持ち直してからは足取りは軽かった。


 荷物になるから本来はそうしたくはなかったが、帯剣して歩いている。先の反省から、少なくとも護身用に剣を帯びて歩く事になった。

 俺もアイリーンもサバイバルナイフのようなナイフを身に着けている。城にあったのだが、この大陸では兵士が持つサブウエポンだ。

 片刃で反対側は鋸歯になっていて、野営の時等にも使われるのだそうだ。

 

 ニーナは剣を帯びる事に。先の戦闘では俺の収納に剣が入ったまま飛び降り、サブウェポンで無理矢理戦っていた反省からだ。俺は収納から出せば良いけど、他の人の分まで出す余裕がない事もあるからと、何かの武器は必ず身に着ける必要がある。


「重いけど良いのか?」


「アタイはきのうやっちまったからね。本来はこうやって帯剣するもんだからね」


「なら良いんだけど、流石にあれには驚いたよ」


「ははは。これでも反省しているんだよ。だからパフパフで許して!」


「そういうのいいですから。アイリーンに嫌われたくないんで」


「つれないねー。まあ、それはともかく、アタイもこれからはちゃんと武器を持つし、お前らも持っておきな。いざという時に困るからね。それとこれみよがしに帯剣してますって見せるのも良いからね」


 等とニーナの話により帯剣する事になった。


 そうして王都に向けて再び歩き出した。


 そして道中ニーナはアイリーンに怒られていた。


「ニーナさん!さっきからなんなんですか!おっぱいおっぱいと!少しは恥じらいや貞淑さを持ったらどうなんですか?栃朗さんは引いてますよ!それにあの方は奥さんに先立たれていて、未だに奥さんに操を立てているんですからね!変な事をしたらもう口を聞きませんからね!めっ!ですよ!」


「えっ!?だってアタイの胸の感触を楽しんでいるはずだぜ?ニンマリしているのを確かに見たぞ!」


「そりゃあ確かに私の事もお姫様抱っこして飛んでいる時にニンマリしていますけど、それ位は男の人ですから当たり前です。むしろ女として見てくれているんだなって。それよりも栃朗さんはいやらしい事はしてきませんよ?それに真面目な方なんですから、お願いしますよ!」


 そんな話しをしながら王都に向けて歩いていた。バレていたのか・・・


 少し起伏のある草原を歩いていたが、所々低い丘があり、街道は丘の下麓を通っている。


 30分位歩いただろうか?異変が感じられた。金属か何かがぶつかる音がしたのだ。左手に丘があり、その形に沿ったカーブになっており、その先は見えない。ただ、気の所為か煙のようなのも見える。


 ニーナが手を広げた状態で腕を上げ、歩みを止めた。


「武器を取り身構えるんだ。血の匂いがする」


「ニーナさん、飛んでやり過ごすのは駄目なの?」


「誰かが襲われていると思う。先の奴隷を乗せた馬車と、アタイ達が乗っていた馬車以外に抜かされていないぞ」


「そうだな。アイリーン、関わった人が襲われているかもだから無視は出来なさそうだね」


「はい。分かりました。私はどうすれば?」


「ニーナ、戦闘の事だけど知っての通り、俺達は経験が殆ど無い。こと戦闘に関してはニーナの指示に従うよ」


「分かった。状況が分かるまで先ずは自衛だ。アタイは最悪の場合でも自分だけなら何とでもなる。最悪の時はアイリーンと2人で王都へ逃げて、アタイの師匠のところで待っていて欲しい。アタイの事を信じて欲しい」


 ニーナから取り急ぎ戦闘についての指示を貰い、最終的に俺の判断、つまりリーダーとして異変の場所に行くと決めた。

 よく分からないが、ニーナによると例えばあの乗り合い馬車の全員を護衛諸共殺そうと思ったら、5分掛らず行けると言っていた。だから逸れても助けに来なくて良いと。戦闘は基本的に敵味方が分かり難いから、余程の事が無い限り殺さずに気絶させる事を基本にすると。なるほど。


 そうやってニーナを先頭に、街道を進むのであった。

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