第8話
「なぜ、王子は町を歩いていらっしゃったのですか?」
「それは・・・・・・」
王子も私と同じように自らの目で実情を把握されることを望み、視察を頻繁に行っていると話してくださいました。
「もちろん、ここにいる大臣達も信頼しているし、任せていることも多い。そうしなければ、この広大な国家を回していくことはできないからね。でも、情報に主観が入り、時に何人かの目や耳を通したことによって実際と乖離することもあると思っているだ。だから、こうして、記録や報告書と見比べて整合性を確認しているんだ」
「なるほど…」
私は報告書との見比べということはせずに、自分で記録をまとめていたので、エリック王子の方法の方が合理的で参考になると、私は思いました。そして・・・・・・
(同じことを考えている方がいらっしゃるなんて)
レオナード王子からはそんなことは大臣がやるべきであって、王族がやるべきことではない、と言われてきました。そんなことを王族がやるということは、王族が仕事をしなければならないほど、国が困窮している証拠であり、国民が不安になる、とまで言われました。レオナード王子の言うことも一理あると思いつつ、母国の財政状況はまさに困窮状態であり、私はレオナード王子を説得しました。
『勝手にしろっ』
もしかしたら、あの時からかもしれません。彼の言うところの、私が可愛げが無くなったのは。
私は、後ろめたさを感じつつ、本当に自分がやっていることが正しいのか不安になりながらも、王妃という身分で国政に参加していました。でも、ようやくエリック王子と出会い、自分がやっていることは間違いなかったのだと思えるようになりました。
「今日も徹夜かしら?」
私は宿屋に着くと、さっそく手紙を書き始めました。
家族、友人へは暮らしの目途が立った旨を書いたのですが、明るい未来が待っていそうだったので、筆が乗りました。けれど、大臣達への返事についてはなかなか筆が進みません。けれど、私は新たな国で登用された身であり、何かあれば、連絡を取っていた大臣がスパイ容疑で処刑されてしまうかもしれません。なので、相談には乗れない旨を心を込めて手紙に書いていきました。
何かを選ぶと言うことは、他の選択肢の一切を捨てるということ。
私は新しい国で、新しい方々とお仕事をして、みんなが幸せになれるような国を作っていきたい、と考えるようになりました。もしかしたら、今までの方々と利害が相反することもあるかもしれません。むしろ、その可能性が高いでしょう。特にレオナード王子とは・・・・・・。でも、それでも・・・・・・
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