第9話

 私が手紙を出してから数日後、皆からたくさんの返事が届きました。家族や友人たちは私の新しい門出を祝ってくださり、家族は伝手を頼ってこちらの国に来ると言う話もありましたが、エリック王子は私のことを過大評価してくださり、家などを用意してくださったのでそちらで家族と会うことができました。本当にエリック王子には感謝であり、その分私は仕事を頑張りました。こちらの国の大臣達も優しい方が多く、すぐに馴染むことができ、私は前の国で王妃を行った経験を思う存分発揮させていただきました。


 しばらくして大臣達から手紙が届きました。

 罵詈雑言が書かれているのではないかと、不安でいっぱいでしたが、私は恐る恐る手紙を開けました。


「これは・・・・・・」


 そこには私が予想しないことが書かれており、私は食い入るように大臣達の手紙を読みました。


「どうしたの? ヴィクトリア。とても思いつめた顔をしているわよ?」


 あまりに夢中になっていたので、いつの間にか近づいて背後にいたお母様に気が付きませんでした。


「ちょっと、エリック王子に会いに行ってきます」


 私はお母様に一瞥し、大臣達からの手紙を封に入れ直して、それを持って急いでエリック王子に会いに行きました。手紙の内容のせいでしょうか。カバンに詰めた手紙は量もありましたが、それにしても重く感じました。


「どうしたんだ? ヴィクトリア」


 王宮に着いた私は出会った人にエリック王子の今日の予定を聞き、エリック王子の仕事と仕事の間を狙って、エリック王子を直撃しました。エリック王子に時間を頂けるようお願いしたら、忙しいにも関わらず、私に時間を与えてくださいました。


「実は・・・・・・登用していただきたい方々がいらっしゃいます」


「あぁ、構わない。ヴィクトリアが来てから、我が国の収益も大分伸びたし、国民の満足度も上がった。そんなキミが推薦する人物であれば、それなりのポストを用意して迎えよう。して、どんな者達なのだ?」


「こちらにございます」


 私は推薦したい人物を書いたリストをエリック王子に渡しました。


「これは・・・・・・・・・」


 一人や二人ではなく、その数三十人。

 あまりの多さにエリック王子も驚いて、私を見てきました。

 

「わかっております。ですが、この者達は優秀な方達です。ポストはいりません。ただ、こちらの国への入国と、適した仕事を与えれば、きっとこの国の発展に活躍してくれる方々なのです」


 私の元へと届いた大臣達からの手紙は、こちらの国への亡命と仕事の斡旋の依頼だった。レオナード王子の暴虐はさらに悪化し、大臣達の進言も諫言も耳に入らない状態で、中には私が大変お世話になった大臣の数人は処刑されてしまい、大臣達は身分もはく奪され、藁にもすがる思いで私に手紙をよこしたのだ。その悲痛なメッセージを私は無下にできなった。


「とはいえ・・・・・・これは・・・・・・危険ですぞ」


 大臣がエリック王子に忠告しました。


「ヴィクトリア様の働きぶりは感心するばかりで、私自身も大変お世話になっております。ですが、他国の中枢を担っていた者達をこれほどの人数登用するのは危険です。ヴィクトリア様の前で言うのも憚られますが、場合によってはスパイの可能世も視野に入れねばなりません」


 大臣の言うことももっともでした。

 私だって、しばらく経った大臣達が本当に私の知っている皆かどうかわかりません。

 それでも・・・・・・

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