第7話

 レオナード王子と離縁したとはっきり言えた私。言うことに平気でいられましたし、レオナード王子のことはもうなんとも思っていないし、彼への恋心も愛も微塵もござません。

 だから、もう吹っ切れていたと思っておりました。でも、私の心の傷はまだ癒えていなかったようです。



「・・・・・・わかりました、エリック王子。ですが、今の私は貴方様の想いを受け取ることができません」


「ヴィクトリア・・・。理由を聞かせてもらえるかい?」


 寂しげな瞳でありながらも、エリック王子の声は優しかった。


「今の私は、私自身を好きではございません・・・・・・。レオナード王子のことはもうなんとも想ってはございません。ですが、レオナード王子も初めは愛を囁いてくださいました」


 エリック王子は自分は違うと言いたそうでしたが、ぐっと堪えてくださいました。


(そう、貴方様はレオナード王子とは違って誠実な方です。わかっているんです・・・)


 私はそのことに感謝しつつも、感謝も言わずに話を続けました。


「今の私は女性としても、一貴族としても自信がございません。ですから、どんな殿方の想いも受け入れることはできません」


 いつ、恋ができるようになるかも分かりません。ですが、もし・・・・・・・・・待っていただけるのであれば、その時は・・・・・・。


(貴方様の寵愛を抱きしめられて、この身で全て受け止めとうございます)


 そんな厚手がましいたらればの話は決して口にはできません。

 けれど、そんな想いでエリック王子を見つめていましたら、エリック王子は、


「分かりました。急なご無礼をお許しください」


 と頭を下げ、


「話は変わるのですが、なぜこの国に? 貴女がいらっしゃるとなれば、私の耳に入ると思うのですが」


「それは・・・・・・」


 私はレオナード王子に国外追放された旨を話し、行商人に乗せてもらって入国したことを話した。


「申し訳ございません」

 

 私は貴族としてではなく、行商人の連れということで入国したことお詫びした。


「そんなことは気にしないでください・・・・・・」


 エリック王子は優しい声でしたが、拳を震わせて、


「これは失礼」


 涙を流し、涙を拭かれました。


「それではこの国の貴族となるのはどうでしょうか」


 それは大変ありがたい話だ。でも、


「それはお受けできません」


「いいや、勘違いしないでいただきたい。これは、私の想いとは別の話。一国を治める王子として、ヴィクトリア。キミの手腕は高く評価しているんだ。そこに公私混同はない。どうだろうか?」


 本当に素晴らしい御方。

 そして、そんな方に見初められて、評価してもらえるのは光栄でした。


「わかりました。謹んでお受けいたします」


 

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