第2話 今までの関係が崩れた日
小学生になるよりも前から好きになった女の子に今日振られた。
自分なりに物凄く頑張った初恋。
勇気を振り絞った告白。
人生で初めての告白は物凄く緊張した。
手汗が凄かった、なんてものじゃない。
全身でバケツに入った水を被ったぐらいに全身がびしょびしょになった。
好きです!
たったそれだけ伝えるだけで、顔が汗だらけになった。
緊張で声は震えるしで、何度も家で一人練習した努力は台無しになった。
それでも伝えた。
結果は……。
「はぁ……死にたい……」
大泣き。
家に帰って。
布団にくるまって本気の本気で言葉にならない奇声を発して。
何時間も泣いた。
その日は食欲が湧かなかったので何も食べられなかった。
現実が辛くてお風呂の中で泣いて、夜はまた一人泣いて気付いたら朝になっていた。
何度も人生をやり直したい。
絶対に詩織に嫌われた。
失恋した。って思った。
でも諦めなかった。
それだけ好きって気持ちが自分の中で大きくて普段ではありえない原動力になっていた。ここで諦めたら一生後悔すると思ったら同じ後悔なら行動して後悔と思って自分の想いが絶対に伝わる! とポジティブに考えて涙を振り払って立ち上がった。
戦いのGongはまだ鳴ったばかり。
「……そうだ、決めたんだった。詩織にハッキリと断られるかOKの返事どちらかが出た時点で告白は終わりって……十日前自分で……」
帰宅して何も飲まず食わずで早三時間が経過した。
両親は海外出張のため不在。
静かな部屋のベッドで仰向けになり天井をただ見つめる。
あまりの疲労感と喪失感に部屋の電気をつけることすら面倒くさいと感じてしまう。
窓から差し込む月明かりが部屋の中を薄っすらと照らしてくれる。
普段なら夜空を照らす綺麗月明かりではあるが、今の新上には届かない。
心の奥深くは真っ暗闇のままだった。
自分で決めたルールを守るなら、もうチャンスはない。
「あーーー、もぉーーーー、くそぉーーーー、なんでだよ……」
言葉にできない感情が心の中で暴れる。
静かな部屋に響き渡る声は誰の耳にも届かないし、誰に共感してもらえることもない。それでも静かな部屋で大人しくじっとなんてしていられない。
静かな環境がどうしようもなく今は嫌だから。
ならば、音楽を流す?
今の新上には騒音にしかならない。
それくらいに心の中が不安定で非論理的な行動を当たり前にしないと自分が保てないぐらいにどうしようもない感情に心が揺さぶられている。
「あ”あ”あ”!!! 明日から学校……どうすればいいんだよ……席が隣とか絶対に逃げれないじゃんか! 絶対明日は友達に結果を聞かれる。そうなったら俺はどうすればいいんだよ!?」
恋の毒に犯された脳はパニック状態になった。
告白が終わったら恋が終わり。
もしそうなら世の中どんだけ楽だっただろうか。
世間体を気にするなら、恋の終わりはそんなに簡単ではない。
気持ちが完全に冷めるまでは少なくとも終わりとは言えない。
”楽”を求めて”苦”から逃げる。
そんな簡単な世の中だったら新上はきっと多少は救われていたと思う。
頭を掻きむしって布団の上で暴れた所で問題は解決しない。
「……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
情緒不安定になっていた。
「諦めるとか言って俺未練たらたらじゃん! あー、もう、彼女欲しいのに!!!」
彼女と言っても誰でも良いわけではない。
ただ一人限定。
だからこんなにも心と頭が疲弊し冷静さを失ったのかもしれない。
可能性なんてもうない。
そんな事はわかっている。
でも――。
「彼女欲しい! 詩織を諦めるなんて簡単にはできねぇ! 明日の学校どうすればいいんだよ~!」
同時に押し寄せてきた感情に脳が正常に処理できない。
先日まで中学生だった少年にはあまりにも無慈悲な事の顛末だったのだ。
だけど悪い事ばかりではない。
新上はこれで一つの経験を手に入れて、一気に疲れが溜まった身体は沢山のことを考える事を中々止めてくれない脳を無視して強制的に深い眠りを求め瞼を重たくする。
――しおり
急に襲ってきた眠気に新上が最後に口にした言葉はきっと……。
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