旅する詩

 世界の果てを見たかった

 世界に果てはないと人は言う


 道は続けど切れは無い 

 空は青くて底はない

 かたにある花が薄桃色を誇っていた

 烏の音は黒いかんざし


 振り返れば足跡は消えていた

 揺れる 揺れる 波は揺れる

 泡沫は真っ白で僕の足をすくう

 透明な風が夜を運んできていた

 

 名も知れぬ鳥が一息ひといき鳴いて

 さらさら擦れる葉は緑青

 十円玉の光 拾って空に還す

 夢見る夏は青い夏 目覚めた夏は


 


 赤煉瓦の走馬灯 瓦斯の火は明朗に

 空間把握の伊達眼鏡 お帰りはあちらから

 蒸気は灰 降る雨黒く息を断つ

 今日も世界の片隅で


 世界に果てはなかった

 未来に終わりはなかった

 今日もまた歩く

 世界の果てを目指して    


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