叙情調

春夢しゅんむ

桜舞うは出会いと別れ

落ちた花弁に己を重ね

未だ見ぬ白麗はくれいの君想ふ

移ろう季節春緩やかに 

たれか我に夢を見せむか

 

暁天ぎょうてん

春への期待は君の夢を見せる

まだ出会ったことのない美しい君を 

花びらが舞い落ちる桜の木の下で

僕は人生で二度目の恋をする

僕が笑えば君も笑って

そこでいつも目が覚める

また今日も待っている

冬が過ぎて春が来るのを

 

夜半やわ

夜半の寝覚め益々惡く

未だ来ぬ春窓に偲べば

の幻想に馳せる夢現ゆめうつつ

宵の桜盗まんとするを

縛身難ばくしんかたく独り伏す病床


早天そうてん

浅く短い眠りが私を襲う

月が照らす桜は綺麗だけれど

硝子は冷たく世界を遮断する

描く未来は儚いもので

誰が私を救ってくれる

欠けた心の破片は見つからず

一人乾いた染みを眺める

夢の中の彼は何時出会えるのか


別れ

街灯鈍く夜明けを照らせば

水面の歪みに君沈む

遠い啼泣ていきゅう煙に巻かれ

濁る心象醜穢しゅうわいなれば

滾々こんこんと降る雨桜の如し

 

まだ出ぬ陽日ようひに恋い焦がれ

捌けた水滴の行方知らず

往く時帰らざるに

踏む土脆く歩み崩れ去る

況や前など向けようか


凍てる風は我に付き纏い

街灯鈍く舗装を照らす

前は道無く後ろは暗静あんせい

忘れ難き日々を慕い 

只異なる日を待つのみ 

  

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